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耐障害性ライフサイクル実践ワークショップ開催報告 & AWS WAF 実践ワークショップのご案内

AWS Japan パブリックセクター技術統括本部では、2026年4月よりセキュリティワークショップを月次で開催しています。第1回・第2回では「ランサムウェア対策ワークショップ」として Amazon GuardDuty による脅威検知と AWS Security Hub による統合セキュリティ管理を、第3回・第4回では「Claude Mythos 時代の脅威対策ワークショップ」としてフロンティア AI を悪用した攻撃への対策と脆弱性管理をテーマにしてきました。

第5回となる今回はテーマを「信頼性」に拡大し、システムの「耐障害性(レジリエンス)」を継続的に向上させるアプローチをお伝えしました。

サイバー攻撃への「防御」と並び、障害が発生しても迅速に回復できる「耐障害性」は、ミッションクリティカルなシステムを運用するうえで不可欠な要素です。近年はリリース頻度の増加や AI を活用した開発の加速により、システム環境の変化がこれまで以上に速くなっています。故障しないことを前提とする堅牢なシステムを目指すだけでは十分ではなく、継続的にレジリエンスを強化し続ける仕組みが求められています。

本記事では第5回の開催レポートと、次回(第6回)のご案内をお届けします。

ワークショップの概要

項目 内容
テーマ FlyWheel で回す継続的なレジリエンス強化
日時 2026年8月21日(金)14:30 – 17:30
形式 オンライン(WebEx)
主催 アマゾン ウェブ サービス ジャパン合同会社 パブリックセクター技術統括本部
対象 システムアーキテクト、運用担当者、耐障害性(レジリエンス)向上に関心がある方
関連サービス AWS Resilience Hub, AWS Fault Injection Service, Amazon CloudWatch など

座学では「耐障害性ライフサイクル」と「FlyWheel」の考え方を学び、AI を活用した各ステージの効率化や AWS 支援プログラムもご紹介しました。ワークショップでは、たこ焼き注文システムを題材に、耐障害性ライフサイクルの各ステージを実際に体験いただきました。講師はシニア ソリューションアーキテクトの小本昌兵が務めました。

座学: 耐障害性ライフサイクルと Resilience FlyWheel

「壊れない」から「壊れても素早く回復する」へ

Amazon CTO の Werner Vogels が語る “Everything fails, all the time.”(すべてのものは、いつでも壊れうる)という原則に基づき、稼働期間中に要件が変化していく中で、故障しないことを前提とする堅牢なシステムを目指すのではなく、障害が起きても素早く回復するシステムを目指すことが重要になっていきます。座学では、まずこのメンタルモデルの変化をお伝えしました。

「壊れない」から「壊れても素早く回復する」へのメンタルモデルの変化を示すスライド

耐障害性ライフサイクルフレームワーク — 5つのステージで具体的に取り組む

この考え方を実践に移すために、AWS が規範的ガイダンスとして公開している「耐障害性ライフサイクルフレームワーク」に沿って、5つのステージを解説しました。

  1. 目標を設定ビジネスインパクト分析(BIA)を通じて RTO(目標復旧時間)/RPO(目標復旧時点)/SLO(サービスレベル目標)を設定し、ユーザージャーニーとクリティカルパスの視点で目標を定義します。サービス視点で、「どのサービスが止まると、どれだけの影響が出るか」を定量的に把握するところから始めます。
  2. 設計と実装 — AWS Well-Architected Framework の信頼性の柱を基に、障害分離境界(データプレーン/コントロールプレーン)の区分、静的安定性(障害時にコントロールプレーンに依存せず、元の設定のままワークロードが動き続ける設計)の確保といった設計原則を適用します。座学では耐障害性モデリング(SEEMS: 5つの一般的な障害カテゴリ)についても具体的に紹介しました。
  3. 評価とテスト — 「目標を達成できるか?」を本番相当の環境で検証していきます。評価は、一度きりではなく、継続的に仮説検証を行います。AWS Fault Injection Service(AWS FIS)による障害注入の実行/管理や、AWS Resilience Hub を活用した耐障害性の評価が役に立ちます。
  4. 運用 — オブザーバビリティ(可観測性)を確保し、カスタマーエクスペリエンス指標を継続的にモニタリングします。異常を早期に検知し、影響が拡大する前に対処するための体制を整えます。
  5. 対応と学習 — インシデントが発生した場合、その体験から学ぶことが重要になります。インシデント発生後に、CoE(Correction of Errors)を使って振り返りと再発防止策を文書化し、組織として学びを蓄積します。この学びが次のサイクルの「目標設定」にフィードバックされます。

耐障害性ライフサイクルフレームワークの5つのステージを示す図

Resilience FlyWheel — 継続的に回し続け、加速する

上記5ステージを1回実施して終わりではなく、FlyWheel(フライホイール)として継続的に回し続けることが本ワークショップのコアメッセージです。Amazon のビジネスモデルフライホイールに着想を得たこのアプローチでは、初回のサイクルこそ重たいですが、サイクルを回すたびに複利でレジリエンスが向上し、回転が加速していきます。

さらに、AI を活用して耐障害性フレームワークを効率化する方法次世代の AWS Resilience Hub、ビジネスインパクト分析(BIA)、レジリエンススコアプログラム(RCP)など、AWS の支援サービスもご紹介しました。BIA は耐障害性ライフサイクルフレームワークを開始するための目標設定をサポートするプログラムです。ご関心ある方は担当の AWS アカウントチームにお問い合わせください。

Resilience FlyWheel の概念図

ワークショップ: たこ焼き注文システムで体験する耐障害性ライフサイクル

ワークショップの狙い

座学で学んだ耐障害性ライフサイクルの各ステージを、参加者自身が実際に手を動かして体験することが本ハンズオンの狙いです。抽象的なフレームワークを具体的なプロセスとして体感し、自組織のシステムに当てはめてイメージしていただくことを目指しました。ワークショップ教材はこちらからご確認いただけます。

具体的に何を体験できるか

架空の「たこ焼き注文システム」を題材に、耐障害性ライフサイクルに基づき、Active/Active アプリケーションの目標設定から運用まで、包括的に体験をしました。

  • 目標の設定: アプリケーションのダウンタイムにより発生する売上の損失から、具体的なRTOとRPOの値を決定。レジリエンスポリシーを作成して、Resilience Hub に設定
  • 設計の見直し: マルチAZ で自動復旧を実現するため、オートゾーンシフトの有効化
  • 運用監視の設定: アプリケーションの監視のための、Amazon CloudWatch Synthetics Canary の作成とアラート設計
  • 評価とテスト: Resilience Hub による評価と回復力テストの実践(AZ で電源が中断されたというシナリオで、ゾーンシフトが設計通りに動作するかを確認する)
  • インシデント対応: 障害発生時の対応フローのレビュー

たこ焼き注文システムを題材にしたハンズオンのアーキテクチャ図

参加者からのフィードバック

参加者からは、「ハンズオンについては、やや難しかったが、更に耐障害性を高めていく上で参考になった」など、ポジティブなご意見をいただけました。また、AWS Resilience Hub の利用状況を伺ったところ、大半の方がまだ利用されていない状況でした。ワークショップ後には、約70%の方が Resilience Hub を「利用してみたい」と回答いただきました。定量的な目標設定と継続的な評価はレジリエンス改善の基礎となります。今後も個別案件の支援などを通じて、耐障害性を高めるお手伝いをしていきたいと考えています。

まとめと次回のご案内

本ワークショップのキーメッセージ

本ワークショップを通じて、以下の3点をお伝えしました。

  1. メンタルモデルの変化: 「障害がおきないシステムを作る」アプローチの限界を認識し、「障害がおきても素早く回復するシステムを作る」ことに意識を向ける。障害は起こりえる前提で備える。
  2. 実践のフレームワーク: AWS 規範的ガイダンス「耐障害性ライフサイクルフレームワーク」(目標設定→設計・実装→評価・テスト→運用→対応・学習)の5つのステージが、具体的な取り組みの指針となる。
  3. 継続的な改善: ライフサイクルを一度回して終わりではなく、FlyWheel として継続的に回し続けることで、レジリエンスを加速度的に向上させる。AI や AWS の支援サービスを使って、このサイクルをさらに効率化する。

耐障害性の向上は、一度きりの対策ではなく日々の運用の中で磨き続けるものです。本記事がその第一歩を踏み出すきっかけになれば幸いです。ミッションクリティカルなシステムや高い可用性要件が求められるシステムのクラウド活用で課題をお持ちの場合は、担当の AWS アカウントチームにご連絡ください。

第6回: AWS WAF 実践ワークショップ — AI時代のWebアプリケーション防御を学ぶ

項目 内容
日時 2026年9月28日(月)14:30〜17:30
形式 オンライン(WebEx)
座学 AWS WAF を活用した Web アプリケーションの保護
ハンズオン WAF ルールの設定からログ分析・可視化
対象 システムアーキテクト、セキュリティ担当者、Web アプリケーション運用担当者
関連サービス AWS WAF, AWS Shield, Amazon CloudWatch, Amazon Athena

AI Bot の急増や DDoS 攻撃の高度化により、Web アプリケーション防御の重要性は、ますます高まっています。次回は AWS WAF のマネージドルール、Bot 対策、各種 AWS サービスと連携したログ管理の仕組みなど、実践的な AWS WAF の活用手法をご紹介します。座学のみ、ハンズオンのみのご参加も可能です。ご関心ある方は担当の AWS アカウントチームにお問い合わせください。

著者

日吉 康仁 (Koji Hiyoshi) — AWS Japan, Public Sector, Senior Solutions Architect

今井 真宏 (Masahiro Imai) — AWS Japan, Public Sector, Senior Solutions Architect