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寄稿:Claude Code on AWSで創薬研究・業務を加速する – JCRファーマのAIエージェント活用事例

本稿は、JCRファーマ株式会社による、Amazon Bedrock で Claude Code を導入した約2ヶ月間の取り組みについて、 蘆田 勇平様、服部 将太様、東本 伸一様、前田 善貴様、倉本 航佑様より寄稿いただきました。

1. 会社紹介

JCRファーマ株式会社(JCR Pharmaceuticals Co., Ltd.)は、1975年創業、兵庫県芦屋市に本社を置く研究開発型製薬企業です。医療用医薬品・再生医療等製品・医薬品原料の製造・販売を事業の中核とし、連結従業員数985名(2026年3月31日現在)で事業を展開しています。

「私たちは、希少疾病にとどまらず、最も困難とされる治療の課題に挑戦し、答えを創り出していきます。」を企業理念に掲げ、希少疾病をはじめとするアンメット・メディカル・ニーズの高い疾患領域において、これまで治療法のなかった患者さんへ新しい治療の選択肢を届けることを使命としています。

本記事では、Amazon Bedrock で Claude Code を導入した約2ヶ月間の取り組みをご紹介します。

2. きっかけ・背景:パラダイムシフトとの出会い

AWS アカウントチームによる研究向け AI 活用ワークショップを社内で開催いただきました。サンプルでアプリを作るとき、エージェントがプログラムを作成、実行、エラーを自ら検知して修正し続ける様子は、「質問に答えるツール」という AI のイメージを根底から覆すものでした。

その後、Amazon Bedrock 経由で Claude Code を導入した主な理由は以下の3点です。

  1. 既存の AWS 基盤をそのまま活用できる:Anthropic 社との個別契約が不要で、すでに社内で整備された AWS アカウントからすぐに利用開始できました。ユーザ認証や監査ログなど、既存のガバナンスをそのまま適用できたことでスピーディに導入ができました。
  2. 国内でデータを完結できる:推論プロファイルを国内(東京・大阪リージョン)に限定することで、研究データが国外に出ない設計が実現できました。
  3. 入力データがモデルの学習に使用されない:Amazon Bedrock の仕様上、利用者が入力したデータはモデルの学習に使用しないという、当社のセキュリティ要件を満たしています。

これらの条件が揃っていたことで、新たな個別契約や長期間の構築期間を要することなく、ワークショップから約10日で利用環境の準備を完了し、研究部門への展開を開始しました。そこから約2ヶ月で実業務での活用に至っています。

3. 環境構築:製薬企業のセキュリティ要件に対応した設計

情報システム部が中心となって、用途に応じた2つの利用形態を整備しました。

3-1. Amazon EC2 による共有実行環境

Amazon Elastic Compute Cloud (Amazon EC2) 上に Claude Code の実行環境を構築し、Amazon Bedrock を経由して Claude モデルへアクセスする構成です。推論プロファイルは東京・大阪リージョンに限定しており、データを国内で処理できます。セキュリティ対策としてセキュリティソフト(AWS Marketplace 経由で導入した CrowdStrike 製品)や Claude Code CLI 等をセットアップした AMI を準備しており、展開するだけで済むようにしています。情報システム部がセキュアな実行環境(ソフト、クラウド環境)を一括提供することで、研究者は環境構築を意識せず利用を開始できました。

【構成図】

 

構成図

 

【利用画面】

 

利用画面

 

EC2 から Claude Code CLI を起動した画面。AWS Bedrock へのアクセスは、EC2 の IAM ロールで制御。

3-2. デスクトップ版 Claude と Bedrock の連携

デスクトップ版 Claude も Amazon Bedrock 経由で利用できます。端末に Claude のデスクトップアプリをインストールして、AWS Identity Center の SSO で認証して Bedrock と連携すれば利用できます。コーディングを伴わない文書作成・情報調査・Q & A など、日常業務での活用に主に使っています。EC2 環境とデスクトップ版の両方を整備することで、ヘビーユーザーから初めて AI に触れる社員まで、幅広い利用シーンをカバーできるようにしました。

【構成図】

 

構成図

 

【利用画面】

 

利用画面

 

Claude のデスクトップアプリ。推論プロファイルが Amazon Bedrock を利用していることが、左下に表示されます。

4. 活用事例

事例①:研究部門でのバイオインフォマティクス解析支援

研究部門では、バイオインフォマティクス領域における計算科学で利用しています。機械学習を活用した解析プログラムの開発が必要になる場面が増えていますが、担当研究者はコーディング経験が浅く、Python の基礎から機械学習の習得まで相当な時間がかかる見込みでした。一般的にこれらを習得して実装まで進むには3ヶ月以上かかると見込まれていました。

Claude Code はこの「技術習得の壁」を大きく変えました。Python プログラムの作成は Claude が補完してくれるため、研究者は研究テーマの本質——「どんな解析をしたいか」「どのモデルを選ぶか」——に集中できます。エラーが発生した場合も Claude が自律的にログを確認・修正を繰り返すため、人手を介さずデバッグが完結します。プログラムのパフォーマンスチューニングやモデルの最適化も Claude に依頼することで、Claude が提案から実行・修正まで対応してくれます。結果として、コーディング未経験の研究者が数日で機械学習プログラムの実装から分析まで完遂できるようになっています。

研究者からは次のような声が寄せられています。

「Claude Code によって、アイデアからプログラムの実装まで短時間でできた」

「Python 経験がほとんどなかったため BioPython などのライブラリ、機械学習の実装方法など、道のりは長いと感じていました。しかし、Claude Code によってその不安は無くなりました」

「トラブルでも、Claude がログを分析して対処してくれます。例えば GPU を認識していないときは、必要なドライバを調べ、プログラムのライブラリの依存関係を分析して自動的に対応してくれました。」

事例②:Active Directory の AWS 移行支援

情報システム部では、オンプレミスの Active Directory 環境を AWS EC2 上へ移行するプロジェクトを進めています。オブジェクト数5,000台超という規模の移行であり、NTLMv1 や RC4 Kerberos を使用しているレガシー機器の洗い出しから、ドメイン機能レベル昇格の影響調査まで、多岐にわたる調査・分析が必要でした。

CrowdStrike NG-SIEM に蓄積された約1年分の認証ログ(NTLMv1:10,351件、RC4 Kerberos:数十万件)の分析や、AD の設定を調査するための PowerShell スクリプト作成を Claude に任せることで高速に対応できました。通常であれば外部委託業者に依頼して数週間を要するような調査・設計を、Claude との対話を通じて情報システム部による内製で実施し、2日間で完結しました。

また、今回のプロジェクトでは機能レベルの更新を計画していました。そのため、「機能レベルを2019に上げた場合、NTLMv1 の挙動はどう変わるか」「RC4 Kerberos はいつ強制無効化されるか」といった技術的な問いを Claude と議論しながら整理を進めて設計方針を確定することができました。

さらに、移行作業を進める中でエラーが発生した際も、そのエラーメッセージをそのまま Claude に入力するだけで状況分析とネクストアクションの提示が得られます。従来は担当者の経験に基づいていたログ解析・切り分けが、AI によるサポートで大幅に効率化されることで、確実なプロジェクト推進が実現できます。

5. 導入を通じて感じた変化

「AI に『聞く』から、AI と『一緒に作る』へ」——これが最も大きな変化です。ログのコピー貼り付け・コマンドの手入力・エラー調査といった繰り返し作業が自動化され、研究者・IT 担当者が本来集中すべき「ビジネス価値を生み出すこと」「考えること」「判断すること」に時間を使えるようになりました。AI エージェントが「知識の壁」「時間の制約」から解放し、研究と業務のフロンティアを広げています。

研究部門と情報システム部という異なる部門が同じ AI 基盤を共有し、それぞれの課題に活用できているのも大きな特徴です。既存の AWS 環境があれば特別な準備なく展開できるため、「まず試してみる」ことへのハードルが低く、組織全体への AI 活用の広がりを後押しできる可能性を感じました。

6. 今後の展望:データ活用基盤の整備と AI 活用の拡大

現在は研究部門と情報システム部を中心に Claude Code を活用していますが、今後はさらに広い部門への展開を目指しています。社内のノウハウを AI が理解・活用できる形に整える「データのセマンティック化」と、それを組織全体で活かす「データ活用基盤の整備」が次の重要課題と考えています。AI エージェントをより深くシステムに組み込むことで創薬研究をさらに加速させ、希少疾患など治療法の届かなかった患者さんへ新しい治療の選択肢を届けることを、より速く実現したいと考えています。

7. まとめ

AWS ワークショップという出会いから約2ヶ月で、研究部門・情報システム部の双方が Claude Code を実業務に投入しました。既存の AWS ガバナンスを活かした設計により、製薬企業のセキュリティ要件を満たしながら迅速な導入が実現できています。本事例が「自社でも検証してみたい」と感じていただける参考となれば幸いです。

本記事に関するお問い合わせは JCRファーマ株式会社 情報システム部までお寄せください。

著者:

蘆田 勇平

研究開発本部創薬研究所トランスレーショナルリサーチ推進ユニット

遺伝子治療を中心とした創薬研究を行っています。これまで改変カプシドベクターなどの研究に取り組んできました。現在 AI 技術の活用についても取り組んでいます。

服部 将太

研究開発本部創薬研究所トランスレーショナルリサーチ推進ユニット

遺伝子治療を中心とした創薬研究を行っています。これまで改変カプシドベクターなどの研究に取り組んできました。現在 AI 技術の活用についても取り組んでいます。

東本 伸一

管理本部情報システム部

社内システムの運用保守や業務部門の支援、AWS の活用に向けた環境準備や社内展開などに取り組んでいます。

前田 善貴

管理本部情報システム部

社内システムの運用保守や業務部門の支援、Claude を利用して業務効率化に取り組んでいます。

倉本 航佑

管理本部情報システム部

社内システムの運用保守や研究・工場の IT 支援をしています。