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株式会社 WhiteBox 様の AWS 生成 AI 活用事例 : Amazon Bedrock で AI エージェントを活用した次世代飲み会幹事代行システム「KanpAi」を開発。 AI 駆動開発の活用で数か月の開発工数を3週間に削減。

本ブログは株式会社 WhiteBox 様と Amazon Web Services Japan 合同会社が共同で執筆いたしました。

みなさん、こんにちは。AWS アカウントマネージャーの中道です。

伴走型戦略 DX ファームの株式会社情報戦略テクノロジー様のグループ会社で、 IT 案件マッチングプラットフォームを運営する株式会社 WhiteBox 様は、飲み会の幹事の仕事を全て AI エージェントに丸投げできるサービス「KanpAi(カンパイ)」を開発されました。

本システムの開発においては、AI コーディングエージェントを利用した AI 駆動開発を活用し、通常なら数ヶ月を要する規模の開発を、わずか 3 週間で完成させ、2025年6月26日に開催された「AWS Summit Japan 2025 生成 AI ハッカソン」において最優秀賞を獲得されました。本記事では、AI駆動開発によって作られた AI エージェントシステムである「KanpAi」の詳細についてご紹介いたします。

 

お客様の状況と経緯

株式会社情報戦略テクノロジーグループの株式会社WhiteBox様では、親会社である株式会社情報戦略テクノロジー様の「 IT 業界の構造的課題を解決する」というミッションのもと、常に新しい技術を活用した生産性の高い開発体制を模索されておりました。特に、新規サービスのプロトタイピングにおいては、以下の課題が存在していました。

開発速度の限界

従来の開発手法では、アイデアの着想から実装、テスト、リリースまでの一連のサイクルに時間がかかり、市場やお客様のニーズに迅速に応えることが難しい場面がありました。特に今回のハッカソンのような極端な短納期開発では、従来の手法では実現が困難でした。

リソースの制約

少人数のチームで新しいサービスを開発する場合、インフラ構築、バックエンド、フロントエンド、そして本来注力すべきコアなロジック開発まで、一人のエンジニアが担う範囲が広くなり、専門性を活かしきれないという課題がありました。

非効率な反復作業

アプリケーション開発には、定型的なコードの記述や、APIの接続部分など、多くの反復作業が伴います。これらの作業に時間を取られ、より創造的な機能やユーザー体験の向上といった本質的な価値創出に集中しきれない状況がありました。

これらの課題を抜本的に解決し、開発者の創造性を最大限に引き出すためのアプローチとして、 AI コーディングエージェントを活用したAI 駆動開発(AI-Driven Development)に大きな可能性を感じていました。

 

 

ソリューション / 構成内容

「KanpAi」は、AI エージェントを用いた次世代の飲み会幹事の代行システムです。予算や人数や好みに合わせたAI によるお店のリサーチと予約、進行状況を把握しお店に出る前に行う二次会の先回り手配を実現します。また、参加者の好みや過去のフィードバック結果を学習させることで、「KanpAi」 を成長させることが可能です。

 

6つの専門AI エージェントによる自動化

システムの核となるのは、それぞれ専門的な役割を持つ6つのAI エージェントです。

会場リサーチ提案エージェント

予算や参加人数、条件や要望といった入力情報を元に、最適な会場を選定します。単に条件に合う店を探すだけでなく、なぜその店がおすすめなのかという理由も含めてLINEに通知します。

Web予約エージェント

会場の選定が完了したら、Web 予約エージェントが会場のWeb予約システムに自動的にアクセスし、予約を完了させます。予約確認もLINEで即座に通知されます。

二次会リサーチ提案エージェント

飲み会当日、二次会会場を探し、提案を行なうエージェントです。一次会の進行状況を把握し、適切なタイミングで二次会会場を自動的に探し提案します。LINEに通知された候補から選択すると、予約エージェントが予約を代行します。

電話予約エージェント

Web予約に対応していない店舗に対して、実際に架電を行い、予約を行なうエージェントです。AI音声による自然な会話で予約交渉を行い、電話予約の結果はLINEで通知されます。

精算計算エージェント

飲み会後の事後処理として、参加者の役職によって傾斜をかけるなど、事情に合わせた割り勘を提案します。上司は多め、新人は少なめといった、日本の飲み会文化に配慮した柔軟な計算を行うことができるエージェントです。

継続学習エージェント

最後に今回の体験のフィードバックを入力することで、「継続学習エージェント」がフィードバックを受け、「KanpAi」は成長していきます。

 

「KanpAi」のバックエンドは、 AWSのサーバーレスアーキテクチャを全面的に採用し、迅速な開発とスケーラビリティを両立させています。各AI エージェントは独立したマイクロサービスとして機能し、AWS Lambda とAmazon Bedrock で実装されています。

Amazon Bedrockによるマルチエージェントの実現

本システムの中核であるAI エージェントの思考能力は、Amazon Bedrock を通じて実現しています。例えば、「会場リサーチ提案エージェント」では、ユーザーの要望(予算、エリア、料理の好みなど)を自然言語で理解し、最適な会場を推薦するためにClaude Sonnet 4 を利用しています。思考プロセスを担うLLMを柔軟に選択・変更できるAmazon Bedrock の利点を活かし、エージェントのタスクごとに最適なモデルを使い分ける構想を持っています。

Amazon Rekognition とAmazon Connect の活用

飲み会中の写真から盛り上がり度を判定する「カンパイメーター」機能では、画像・動画分析サービスのAmazon Rekognitionを活用し、人物の表情や人数から独自の盛り上がり度スコアを算出しています。また、「電話予約エージェント」では、テキストを自然な音声に変換し、実際にお店へ電話発信を行うためにAmazon Connectを連携させています。これにより、Web予約に対応していないお店へもアプローチが可能となり、ユーザー体験を大きく向上させています。このように、AWSが提供する多様なマネージドサービスとAI サービスを組み合わせることで、アイデアを迅速に形にし、かつ高機能なアプリケーションを短期間で構築を実現されています。

 

導入効果

AI 駆動開発による開発工数の劇的な削減

限られた期間の中、AI 駆動開発の導入を行うことで多機能なアプリケーション開発を実現されました。

開発期間を数ヶ月から3週間へ短縮

CursorなどのAIコーディング支援ツールを全面的に活用し、定型的なコードやユニットテストの自動生成、コードのリファクタリングなどをAIに任せました。これにより、従来の手法であれば最低でも数ヶ月以上を要する規模のプロジェクトを、わずか3週間で完成させることができました。

開発者の創造性を最大化

Lambda関数のボイラープレートコード、API連携部分、エラーハンドリングなど、定型的な実装の大部分をAIが担当することで、エンジニアはより創造的で付加価値の高い、AIエージェントのプロンプト設計やビジネスロジックの考案に集中することができました。

プロトタイピングの高速化

アイデアを即座にコードに落とし込み、動くプロトタイプを短時間で作成できるため、チーム内でのフィードバックサイクルが格段に高速化しました。動くものを短時間で作り、フィードバックを集めてすぐに反映させる、というサイクルを高速に回し続けることで、サービスの方向性を早期に固め、ユーザー体験のブラッシュアップに時間を費やすことができました。

加えて、株式会社 WhiteBox 様は2025年6月26日に開催された 「AWS Summit Japan 2025 生成AIハッカソン ~それ AIエージェントがやります~」 において 「WhiteBoxお酒同好会」 として参加し、本プロダクトによって最優秀賞を獲得されました。

 

今後の展望

「KanpAi」のサービス展開

ハッカソンでの反響を受け、将来的にはユーザーインターフェースの改善や対応エリアの拡大、個人の好みを学習するパーソナライズ機能の強化など、多くのアイデアを検討されています。一方で「KanpAi」 は技術的な可能性を追求する中で生まれたサービスでもあるため、これまで培った知見をお客様のDX を支援する事業のプロジェクトに活かしていくことを目指されています。

(※「KanpAi」の正式なリリース時期は現時点では未定となります。)

AI エージェントとAI 駆動開発の今後の活用

AI駆動開発の手法を「KanpAi」だけでなく、株式会社 WhiteBox 様が提供する全てのサービス、そして株式会社情報戦略テクノロジー様グループが手掛けるDX支援プロジェクト全体へと展開されることを計画されています。 自社内に「AIエージェント開発フレームワーク」を構築し、高品質なAIエージェントを迅速に開発できる体制を整えることで、お客様のビジネス課題を解決するソリューションをこれまで以上のスピードで提供することに取り組まれています。

『 「人にしかできない、創造的な仕事へ誰もが集中できる世界」の実現に向け、今後もAI技術の活用を推進し、IT業界全体の生産性向上に貢献していきたいと考えています。』

株式会社情報戦略テクノロジー AI Officer 藤本 雅俊 氏

 

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アカウントマネージャー 中道 野々香

ソリューションアーキテクト 小林 大樹