Amazon Web Services ブログ
AWS Summit Japan 2025 製造業ハイライト展示の見どころ紹介!
みなさんこんにちは!製造業のお客様(主に関西のお客様)を中心に技術支援をしているソリューションアーキテクトの河井です。まもなく AWS Summit Japan 2025 が開催されます。今年も千葉の幕張メッセで開催いたしますので是非ご参加ください!今年も製造業向けの展示を出していますのでご紹介します!
AWS Summit とは
AWS Summit は、共に未来を描くビルダーが一堂に会して、アマゾン ウェブ サービス (AWS) に関して学習し、ベストプラクティスの共有や情報交換ができる、クラウドでイノベーションを起こすことに興味がある全ての皆様のためのイベントです。日本最大の “AWS を学ぶイベント”、それが AWS Summit です。基調講演、160を超えるAWSセッション・事例セッション・パートナーセッションがあり、 270 を超える展示でオフラインならではの体験ができます。開催期間は 6 月 25 日 (水) と 26 日 (木) の 2 日間で会場は幕張メッセです。 本ブログでは数ある展示とセッションの中から製造業に関する展示とセッションをご紹介いたします。まだ登録してない方は以下のリンクから是非ご登録ください。
製造業に関する展示は Hall 7 の AWS Expo 内にある AWS Industries Pavilion にあります。AWS Industries Pavilion では、製造、金融、自動車など13 の業界別に特化したソリューションを展示します。各業界をリードするお客様の AWS 活用事例や、生成 AI をはじめとする最新テクノロジーの実用的なデモを通じて、業界固有の課題解決方法をご覧いただけます。また、業界に精通したエキスパートと具体的な活用シナリオについて、ご相談いただけます。
製造業向け展示ブース全体像
今年の製造業向け展示ではハノーバーメッセや Re:Invent でも展示していた e-Bike スマートファクトリーの一部を再現しています。「製品設計」「スマート生産」「サプライチェーン」「スマートプロダクト&サービス」の4つの柱を基に各領域で生成される「データ」の統合活用方法を体感できます。各エリアはデータで連動しており、e-Bike の設計、生産、配送、市場での活用を網羅したクラウド活用のユースケースを展示しています。
展示ブースのご紹介
① 製品設計エリア
セルフサービスでスケーラブルなワークステーション環境
CAD や CAE で使用するデスクトップワークステーション環境をクラウドで提供する Research and Engineering Studio on AWS を紹介します。このソリューションを利用することで、利用者はクラウドの専門知識がなくても、場所を選ばずにリモートから処理内容に合わせた最適なスペックのデスクトップワークステーション環境をセルフサービスで利用できます。管理者の負担も軽減しつつ、製品設計を高速化することが可能です。本ブースでは、e-Bike のフレーム設計を複数人での共同作業、認証システムとの連携、権限管理やコスト管理など、デスクトップワークステーション環境をクラウドで最適な状態で利用、運用するデモを体験いただけます。
②スマート生産エリア
稼働状態の可視化と生成 AI によるオペレーション最適化
製造現場における可視化のユースケースの一例として、実際の産業用ロボットを用いた、e-Bike の塗装工程における製造データのニアリアルタイムでの可視化と、品質・設備トラブルにおける生成 AI アシスタントによるトラブルシューティング支援のデモを展示します。設備のオペレータや保全スタッフは、生成 AI アシスタントを活用しながら、工場の稼働や品質の問題解決のスピードを向上させることができます。こちらのブログにも詳細を記載していますので是非ご参照ください。
③サプライチェーンエリア
サプライチェーンを AI で可視化・最適化する統合ソリューション
AWS Supply Chain デモでは、クラウドベースのアプリケーションとその主要モジュールの説明に加えて、データ主導のアプローチを通じてサプライチェーン内で最も関連性の高い複数のユースケースの解決方法を示します。需要予測の精度を高めるための需要計画、補充と調達プロセスを改善するための供給計画、在庫レベルを最適化して全体的な運転資本を削減するための在庫最適化などです。 このソリューションでは、AI/ML/GenAI をサプライチェーンに適用して、効率を高め、サービスレベルを最適化し、コストを削減し、意思決定プロセスを簡素化する方法も示しています。こちらのブログにも詳細を記載しておりますので是非ご参照ください。
④スマートプロダクト&サービスエリア
④-1 AI エージェントが実現するスマートプロダクトの新体験
e-Bike プロダクトデモは、AWS とエッジコンピューティングを融合させた次世代のスマートプロダクト体験を提案します。7インチタッチスクリーン HMI を搭載し、AWS IoT Greengrass で取得するテレメトリーデータや外部データを組み合わせて、複数の AI エージェントがライダーをリアルタイムでサポートします。
(注目 1 ) AI エージェントによる顧客体験・開発体験を改善: 顧客体験について、複数の特化型 AI エージェントが連携し、環境、ライダー、機器の状態を分析することで、個人に最適化されたアドバイスや HMI 画面表示を生成します。このデモは、IoT、エッジコンピューティング、生成 AI を組み合わせ、顧客体験を最大化するパーソナライズされたスマートプロダクトの実現を示しています。開発体験について、このデモ自体がAIエージェントにより開発されています。この革新的な「エージェンティックコーディング」の経験を皆さまと共有できることを楽しみにしています。
(注目 2 ) 組み込みソフトウェア開発の仮想化による開発加速: 組み込みソフトウェア開発の世界にも、クラウドや生成AIが新風を吹き込んでいます。単にデモを公開するだけではなく、生成 AI 時代ならではのアーキテクチャ設計手法や、ノウハウも公開予定です。開発者の皆さまにとって、新たな可能性を切り拓くきっかけとなれば幸いです。
④-2 AI が導くスマートフリート管理とビジネス改善
e-Bike サービスダッシュボードは、サブスクリプションモデルで運営される e-Bike フリートを管理するデモです。各 e-Bike の位置とステータスを一目で把握でき、ビジネス KPI を視覚化することで、データドリブンな意思決定をサポートします。顧客の声やテレメトリデータから AI エージェントが改善施策を提案します。サービス品質の向上と収益性の最適化を同時に実現できます。
(注目 1 ) AI を活用したサービス運営・経営の改善: 生成 AI がスマート製品の利用状況や各種 KPI を元にビジネス状況を分析し改善施策をレポートします。またスマート製品フリートを一元管理することでサービスの運営状況を一目で把握できます。
( 注目 2 ) 生成 AI による製品開発ライフサイクルの改善: コーディングだけでなく、企画、設計、運用まで SDLC(Software Development Life Cycle) 全体にわたる生成 AI の可能性を展示します。なにより、このデモアプリそのものが生成 AI エージェントにより開発されています。
⑤データエリア
⑤-1 産業データファブリックで生産データを民主化
生産効率向上や品質管理強化など、製造業のデジタルトランスフォーメーションを推進する IDF の実践的活用事例を体感して頂くことができます。e-Bike の生産データ活用のデモを通して来場者の業務革新の契機を提供します。IDF(Industrial Data Fabric)は製造業のデータ活用を加速させるフレームワークです。このデモでは、e-Bike の製造プロセスのなかで生成される様々な生産データを収集してコンテキスト化することで、製造データの横断的な活用を実現します。データ収集段階では AWS パートナーの HighByte を活用し、PLC からの生データにタイムスタンプと設備識別情報を付加します。このデータに MES システムの構造化データや環境センサー情報を統合し、AWS S3 上に産業データレイクを構築します。現場向け Grafana ダッシュボードによるリアルタイム監視のデモでは、どの商品のどのロットが、どの工場のラインで、どの環境状況の、どの機械のパラメータで製造したものかを確認して頂きます。また、産業データレイクのデータ活用例を3つのユースケースとして紹介します。1) 他部門へのデータ共有:Amazon DataZone によって部門間でデータを共有することができます。例えば、製品開発部門が製品の改善のために過去の不良品の原因分析に活用できます。2) 生成 AI を使ったデータ分析:Amazon Q in QuickSightによって、自然言語で製造の実績や不良品の発生頻度などのデータをもとに生成AIによってグラフィカルにユースケースに合わせてダッシュボードを生成します。 3) 生成 AI のエージェント活用 : Amazon Timestream での時系列データ管理によって製造の状況の確認や分析に必要なデータのまとめ、またはグラフデータを活用して、原因分析を紹介します。AWS IoT SiteWise による設備接続、Amazon Timestream での時系列データ管理、Amazon QuickSight の可視化機能などに興味をお持ちのお客様は是非、来場してIDF のデモをご覧ください。
⑤-2 業務横断データからインサイトの探求
多くの製造業大手では、部署と拠点を単位としたシステムのサイロ化が、データ利活用上の課題とされています。このブースでは、サイロ化の現実を直視し、e-Bike の製造工程で発生するデータをグラフ DB でつながりをもたせ、生成AIを用いて統合的に分析させるデモを展示します。多様な部署と職位の従業員が、一元的な UI を通じて、業務横断的な洞察が得られることをご体感いただけます。
⑤-3 設計データをグローバルでライフサイクル管理 (PLM)
PLM システムは設計・製造・アフターサービスまで、製品に関わる全ての情報を一元管理します。M-BOM による製造部品管理や S-BOM によるアフターサービス情報まで、各部門の業務を横断的に繋ぎ、原価や品質情報も集約します。設計段階から原価を意識した開発や、現場で発生した不具合情報の迅速なフィードバックによる品質改善が可能です。AWS にグローバル基盤として PLM を構築することで、国内外の設計・生産・サービス拠点がいつでも最新情報にアクセスでき、グローバルなものづくりを強力に支援します。
⑤-4 AWS 認定デバイスウォール
AWS 認定デバイスウォールには、AWS IoTサービスとの動作検証済みの認定デバイスを展示しています。お客様はこれらのデバイスを用いることで、AWS IoT サービスとの連携を含む IoT システムを容易に構築できます。画像は Hannover Messe 2025 AWS ブースレポート でのデバイスウォール展示状況です。AWS Summit Japan 2025 では、日本のメーカー様の製品を中心とした認定デバイスを展示予定です。
AWS セッション
データによる製造業デジタル変革の実践
- スピーカー:アマゾン ウェブ サービス ジャパン合同会社 佐山 朝葉
- 日時:6月25日 12:50-13:30
- 概要:製造業におけるデータ活用の壁は、「作成」「取得」「利用」の 3 つの段階で生じています。具体的には、設計時の CAD データや手順書などの作成段階、製造ラインのセンサー情報や市場の製品からの取得段階、そして分析・予測への利用段階です。これら各段階で発生する課題が、スピードや活用の範囲、生み出される価値を損なっています。本セッションでは、設計から保守までの製品ライフサイクル全体を通じて、断片化したデータを有機的につなぎ、実践的な価値を引き出すアプローチをご紹介します。HPC を活用した設計データ開発の加速、IoT を活用したデータの取得、AI アシスタント実装による改善など、業務改革に実践可能な方法論をお伝えします。
お客様事例セッション
製造業での Agentic AI による改革推進:三菱電機のエンタープライズアジャイルと Amazon Bedrock 事例
- スピーカー:
- 三菱電機株式会社 デジタルイノベーション事業本部 AI 戦略プロジェクト 改革推進部 改革推進部長 徳 隆宏 氏
- 三菱電機株式会社 デジタルイノベーション事業本部 AI 戦略プロジェクト 基盤整備部 改革推進部 アーキテクチャチームリーダー 塚田 真規 氏
- 日時:6月25日 11:50-12:20
- 概要:三菱電機は 2025 年 1 月に AWS と対グローバルで戦略的協業に向けた覚書を締結し、全社規模での生成 AI 活用を推進中です。業務・設計製造・事業などの領域で生成 AI ユースケースを展開し、業務においては 28 領域の推進により業務効率 30 %以上の向上を目指す製造業における事例です。本セッションでは、全社生成 AI 基盤構築を含めた全社的な推進アプローチや、Amazon Bedrock をはじめとした生成 AI コンポーネントを活用した具体ユースケースと成果を紹介します。
ソニーグループにおける Agentic AI の大規模展開開始
- スピーカー:
- ソニーグループ株式会社 D&T プラットフォーム 統合戦略部門 グループフェデレートガバナンス部 ゼネラルマネージャー 大場 正博 氏
- ソニーグループ株式会社 D&T プラットフォーム 統合戦略部門 グループフェデレートガバナンス部 事業 PF 推進課 シニアアーキテクト 平野 太一 氏
- 日時:6月25日 13:30-14:00
- 概要:ソニーグループでは一昨年から生成 AI の活用を進めてきました。昨年からは既にビジネスユーザが Agent を構築できる環境を整備し、社内でのビジネス適応を推進してきました。今期より 「Agentic AI Platform」 として再構築し、人と AI が協業する新しい業務の在り方を目指しており、その展望について共有します。Amazon Bedrock, Bedrock IDE をフルに活用したグローバルな Agentic AI について、アーキテクチャや実際のユースケースを交えてご紹介します。
オフィス機器から産業機器まで多様な製品群に対応する IoT プラットフォームの構築:長期運用を目指し、アジャイルで小さく始める設計
- スピーカー:ブラザー工業株式会社 SC開発部 瀧尻 豊 氏
- 日時:6月25日 13:30-14:00
- 概要:ブラザー工業は、つながるサービスでお客様への価値を最大化するため、グローバルに展開する複数事業で活用でき数千万台規模の IoT 機器にも対応する新たな IoT プラットフォームを構築しました。フルサーバーレス構成を採用することで、コスト効率の高い運用と高いスケーラビリティを実現しています。IoT 製品のライフサイクルが 10 年以上に及ぶことを見据え、長期運用を支える仕組みを取り入れています。IaC (Infrastructure as Code) によるインフラの標準化、自動化を進めることで、保守業務を効率化しています。本セッションでは、製造業 DX 推進・価値創出のための IoT プラットフォーム構築・運用のノウハウとして、大胆に進化し続けるための設計思想、アーキテクチャ、DevOps チームの事例をご紹介します。
事業部と情シスの共創による、エンタープライズ企業が挑むクラウドネイティブ HPC
- スピーカー:
- 三菱重工業株式会社 エナジードメイン GTCC 事業部 蒸気タービン技術部 タービン翼開発グループ 主任 三宅 哲 氏
- 三菱重工業株式会社 デジタルイノベーション本部 デジタル基盤技術部 サーバ・クラウドグループ 野澤 拓馬 氏
- 日時:6月25日 14:20-14:50
- 概要:三菱重工エナジードメイン蒸気タービン技術部がクラウド知識ゼロから HPC on AWS にチャレンジし本番導入まで実現しました。カーボンニュートラル社会実現に向けた「蒸気タービン翼列」を設計開発するなかで、設計には CAE ソフトを利用していましたが、オンプレ HPC 環境のためサーバ保守作業が負担となっており、且つ旧世代マシンのスペック不足によってタービン開発の遅れが発生するケースもありました。この課題を解決すべく HPC 環境の AWS 移行検討を開始し、PoC 検証の結果、現行機の 2 倍以上のパフォーマンスを発揮できることが判明し本番環境を実装しました。
エンタープライズ AI の未来:プライベート LLM × Amazon Bedrock で実現する AI エージェント開発
- スピーカー:株式会社リコー AI サービス事業本部 AI インテグレーション統括センター 事業本部長 梅津 良昭 氏
- 日時:6月25日 16:50-17:20
- 概要:オープンソース LLM の性能向上に伴い、企業独自のドキュメントやデータを使ったプライベート LLM の開発と、AI エージェントの導入が加速しています。本講演では、Amazon SageMaker や Amazon Bedrock を活用したプライベート LLM 開発から、RAG との組み合わせによるドキュメント活用、Dify による AI エージェント市民開発等、リコーの開発事例をベースに、エンタープライズクラスでの生成 AI 導入を加速させるポイントをご紹介します。
生成 AI が実現する防災・減災 DX ~カメラ映像を用いた道路状況の無人監視~
- スピーカー:岩崎電気株式会社 イノベーション推進部 イノベーション推進課 課長 大脇 理 氏
- 日時:6月26日 12:40-13:10
- 概要:昨今異常気象や震災による自然災害が頻発しており、防災・減災への危機意識が高まっています。岩崎電気では、自社の道路用照明とカメラを組み合わせたシステムに Amazon Bedrock を適用した道路状況の自動監視ソリューションを開発しました。従来はセンサーで冠水検知をする必要がありましたが、カメラ映像を生成 AI で解析することで、大幅なコスト削減と運用負荷の低減を実現しました。本セッションでは照明器具メーカーである岩崎電気が DX の実現や新たな事業領域へ進出した背景を、開発秘話を交えご紹介します。
おわりに
今回は製造業向け展示ブースのダイジェストをお届けしました。他にもたくさんの展示があり、お伝えしたいことはたくさんありますが、このブログだけでは紹介しきれません。ぜひ AWS Summit Japan におこしいただき、ソリューションアーキテクトが作った実物の展示をみてください!AWS Summit Japan に登録されていない方はこちらのページから登録できます。会場でみなさんにお会いできることを楽しみにしています!
著者紹介
![]() |
河井信彦(Nobuhiko Kawai) アマゾン ウェブ サービス ジャパン合同会社 セキュリティベンダーを経て AWS Japan に入社し、エンタープライズ技術本部でソリュー ションアーキテクトとして活動中。関西の製造業のお客様を中心担当している。趣味はサッカーとフットサル。 |