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Amazon Nova Reel で創る:AWS Summit Japan 2025 サイネージ映像制作の舞台裏

みなさんこんにちは!Solutions Architect の富永崇之です。普段は金融領域のお客さんをご支援する傍ら、大小様々な会場で映像演出をする活動をプライベートで行っており、AWS Summit Japan 2025 においては昨年に引き続き基調講演前のウェルカムパフォーマンスの映像演出を担当しています。

ウェルカムパフォーマンスでは DJ / プロデューサーの FPM 田中知之さんが流す音楽に合わせて即興で映像を構成していきますので、もし AWS Summit Japan 2025 にご来場の際は、ぜひ朝からお越しいただいて楽しんでいただければと思います。さらに基調講演後、Room A ~ E にて開催の各セッションの合間に流れる映像も昨年に引き続いて担当していますので、こちらも楽しんでいただければと思います。

AWS Summit Japan 2024のWelcomeパフォーマンスの様子

(写真は AWS Summit Japan 2024 のものになります)

さて、今年の AWS Summit Japan 2025 では、ウェルカムパフォーマンスのほかに AWS Summit Japan の受付に設置される Welcome ボードに映すサイネージ映像と、ホール内の休憩ラウンジに設置されるフォトスポットに映すサイネージ映像の制作も担当しています。

AWS Summit Japan 2025 Welcome Board

AWS Summit Japan 2025 Photo Booth

この 2 つのサイネージ映像は Amazon Nova Reel を活用して作成しています。本稿では AWS Summit Japan 2025 のサイネージ映像を Amazon Bedrock と Amazon Nova Reel を使って作成した事例についてご紹介します。

Amazon Nova Reel を使用した映像の生成

サイネージ映像は背景映像やロゴ、テキストといった要素から構成されています。この内、背景映像を Amazon Nova Reel を使用して作成しています。

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Amazon Nova Reel 1.1 では最長 120 秒で 720p 24fps の映像を、512 文字以内のプロンプトテキストから生成することができます。料金は従量課金制で、生成する映像の長さに応じて課金されます。Amazon Bedrock のプレイグラウンドに画像/映像生成を簡単に試行できる UI がありますので、こちらを使用していきます。今回サイネージ用に何種類かの映像を作成したのですが、その中の 1 つで光の粒で構成された CG の映像には以下のプロンプトを使用しました。

An abstract CG image of cyber space composed of particles. The particles move in wave. it gives a creative, fun, exciting impression. Zoom in.

Amazon Nova Reel 1.1 にはマルチショット動画という機能があります。マルチショット動画では単一のプロンプトテキストから 6 秒の映像を複数生成し、生成した映像をつなぎ合わせて最長 120 秒の映像を作成することができます。もっと細かく制御したい場合は、6 秒の動画ごとにテキストプロンプトを切り替える制御も可能になっています。例えば、最初の 60 秒はカメラワークを Zoom In させて、後半の 60 秒はカメラを俯瞰視点にするといった制御も可能です。

つなぎ合わされた出力映像は Amazon Simple Storage Service (Amazon S3) に出力されますが、つなぎ合わせる前の 6 秒ごとのシーン映像も Amazon S3 に出力されています。今回はフォトブース用にゆっくり背景映像を切り替える映像にしていきたかったため、全映像を一度ダウンロードし、映像がゆっくり切り替わるように映像の編集を行っています。さらに、アップスケール処理(ディテールを保ちながら 720p から 4K に拡大する処理)やカラーグレーディング処理(狙った色合いになるよう調整する処理)を施し、ロゴモーションやテキストメッセージを追加して構成したのが会場で流れている映像になります。

生成 AI から新たなインスピレーションを得る

Amazon Bedrock と Amazon Nova Reel の興味深い点は、映像の生成にかかる時間が非常に短いところで、120 秒の映像がわずか 3 – 5 分で生成できます。そのため、生成の試行錯誤が非常に容易です。

今回、作成した映像の 1 つは「AWS Summit Japan 2025」 をテーマにしています。しかし、 AWS Summit Japan 2025 の映像といっても想像するものは人それぞれです。カンファレンスホールの写実的な映像を想像する人もいれば、クラウドを意識した近未来的な CG の映像を想像した方もいらっしゃるかと思います。

今回は敢えて最初からイメージを固めず、A video on the theme of AWS Summit Japan. Creative and free expression. (AWS Summit Japan というテーマの映像を独創的で自由な表現で) というプロンプトから始めました。シード値を変えながらいくつかの映像を生成し、そこから発想を広げていくアプローチを取っています。すると、本当に様々な生成 AI が考える AWS Summit Japan の映像が出力されます。生成 AI の出力の中には、従来では思いつかないような独創的なイメージや、面白いイメージも出てきまして、そこから様々なインスピレーションを得ることができます。その中からフォトブースに合いそうなイメージをピックアップし、狙ったイメージに近づけるようプロンプトに条件を追加していきました。

最終的には以下のプロンプトで生成した映像を採用しています。プロンプトには 4K という文言がありますが、こちらはディティールの細かい映像を導くためのプロンプトで、出力解像度は前述の通り 720p になります。このプロンプトにより東京の都市景観とクラウドコンピューティングが融合した、リアルな映像が生成されます。その他、Amazon Nova Reel のプロンプトエンジニアリングのベストプラクティスを知りたい方はドキュメント (https://docs.aws.amazon.com/ja_jp/nova/latest/userguide/prompting-video-generation.html) を参照してください。

Video on the theme of “AWS Summit Japan”. The image is a fusion of the cityscape of Tokyo and cloud computing. 4K, photorealistic.

欲しい画像や映像の具体的なイメージを最初から言語化することは難しく、そもそもどのような映像が適しているか分からない状況も多いと思います。そんな状況であっても、まず生成 AI にいくつか生成させてみて、そこから具体的なイメージに近づけていくというアプローチがとれるのは、生成 AI ならではだと思います。

まとめ

本稿では AWS Summit Japan 2025 の Welcome ボードおよびフォトブースで使用するサイネージ映像の作成に Amazon Nova Reel を組み入れた事例をご紹介しました。

最初から思い通りのイメージを狙ったプロンプトを作成するアプローチも可能ですが、インスピレーションを得るために生成 AI に自由に発想させるというアプローチもとることができ、映像の表現の幅を広げるためのツールとしてとても有用だと思いますので、みなさんもぜひ Amazon Nova Reel を触ってみてください。プロンプト作成のコツとしては、具体的な視覚的要素 (色、動き、雰囲気) を含めることで、より意図に近い映像が生成されやすくなります。Amazon Nova Reel を試してみたい方は、Amazon Bedrock コンソールのプレイグラウンドから簡単に始められます。まずは短いプロンプトから試してみて、生成 AI が描く世界を体験してみてください。

Amazon Bedrock と Amazon Nova Reel がどんな映像を生成したかは、ぜひ会場で確かめてみてください。それでは AWS Summit Japan 2025 でお会いしましょう!

著者について

富永 崇之 (Takayuki Tominaga)

AWS Japan のソリューションアーキテクトとして、金融業界のお客様を中心に日々クラウド活用の技術支援を行なっています。

ソリューションアーキテクトとしての業務の傍ら、都内のクラブやライブハウスで VJ としても活動しています。