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オンプレミス VMware インフラストラクチャを NetApp BlueXP Disaster Recovery、Amazon Elastic VMware Service、Amazon FSx for NetApp ONTAP で保護する
本稿は、2025 年 6 月 17 日に AWS Storage Blog で公開された “Protect on-premises VMware infrastructure with NetApp BlueXP Disaster Recovery, Amazon Elastic VMware Service, and Amazon FSx for NetApp ONTAP” を翻訳したものです。
VMware ワークロードには、ビジネス上の意思決定や運用の原動力となる重要なデータが含まれています。ランサムウェアの脅威、壊滅的なハードウェア障害、自然災害などの潜在的な災害が、多大なコストを伴うダウンタイムやデータ損失につながる可能性があるため、データの可用性と耐障害性の維持は最優先事項です。こうした課題に対処するには、あらゆる企業にとって効果的なディザスタリカバリ (DR) 戦略を策定するための戦略的計画と信頼できるソリューションが必要不可欠です。
NetApp BlueXP Disaster Recovery は、Amazon Elastic VMware Service (Amazon EVS) と Amazon FSx for NetApp ONTAP (FSx for ONTAP) を使用してクラウドと統合することで、オンプレミスの VMware ワークロードをシームレスに保護する方法を提供します。
この統合ソリューションにより、組織には次のようなメリットがあります。
- 短縮された目標復旧時間 (RTO) と目標復旧時点 (RPO) の達成
- Amazon Web Services (AWS) の従量課金制モデルを活用した費用対効果の高い DR ソリューション
- 既存の VMware ツールやプロセスとのシームレスな統合
- 本番環境の VM の中断を伴わないフェイルオーバーのテスト
本稿では、これらのテクノロジーがどのように連携して、事業継続性の重要なニーズに対応する包括的な DR ソリューションを提供するのかを探ります。 1. Amazon EVS をフェイルオーバーサイトとして設定する方法、2. Amazon EVS の vCenter を新しいサイトに追加する方法、3. レプリケーションプランの作成、4. テストフェイルオーバーの実行の 4 つのステップで構成と実装について説明します。
ソリューション概要
NetApp BlueXP Disaster Recovery
NetApp BlueXP Disaster Recovery は、VMware 環境に堅牢なデータ保護とリカバリを提供するように設計された DRaaS (Disaster Recovery as a Service) ソリューションです。 BlueXP クラウドベースの管理フレームワークの不可欠な部分として、このサービスは既存の BlueXP マネージド NetApp ONTAP ストレージインフラストラクチャと自動的に統合されます。Amazon EVS と FSx for ONTAP を活用することで、企業は重要な仮想マシン (VM) をデータ損失から保護し、ダウンタイム時に迅速に復旧できます。ソリューションアーキテクチャを 図 1 に示します。
図 1: BlueXP Disaster Recovery の概要
BlueXP Disaster Recovery の主な価値は次のとおりです。
- シームレスな統合: オンプレミスの VMware 環境と AWS のサービスを簡単に統合できます。
- VM の自動フェイルオーバー: 最小限のダウンタイムで AWS のワークロードを迅速に復旧できます。
- 管理の簡素化: オンプレミス環境と Amazon EVS 環境の両方を単一のインターフェイスから管理できます。
- コスト最適化: 使用した AWS リソースに対してのみお支払いいただきます。
- スケーラビリティ: 変化するビジネスニーズに合わせて DR 環境を迅速に拡張できます。
Amazon Elastic VMware Service (Amazon EVS)
Amazon EVS は、プラットフォームの変更や再構築を必要とせずに、使い慣れた VMware Cloud Foundation (VCF) ソフトウェアとツールに AWS のスケール、回復力、パフォーマンスを連携させることができます。
Amazon EVS の主な価値は次のとおりです。
- スピードとシンプルさ: 移行の煩わしさを解消し、運用の一貫性を維持します。 IP アドレスの変更、スタッフの再トレーニング、運用手順書の書き換えをすることなく、オンプレミスネットワークを拡張し、ワークロードを移行できます。
- 制御とカスタマイズ: クラウド内の VMware アーキテクチャを完全に制御して、アドオンやサードパーティソリューションなど、アプリケーション固有の要求を満たす仮想化スタックを設計および最適化できます。ワークロードだけでなく、仮想化環境もリフト&シフトできます。 使い慣れたツールを活用して、ストレージ、バックアップ、ディザスタリカバリのニーズに対応できます。
- 管理方法の選択: セルフマネージドで運用するか、AWS パートナーの専門知識を活用して AWS 上の VCF 環境を構築、管理、運用し、人材、時間、コストにわたるビジネス目標を達成することを選択できます。
- AWS サービスへのアクセス: ワークロードをクラウドに確実に移行し、信頼性、耐障害性、セキュリティ、スケーラビリティの向上によるメリットを享受できます。Amazon EVS は、200 を超えるサービスを通じて VMware 環境の拡張と拡大を簡素化します。
- FSx for ONTAP によるサポート: 外部データストアと VM 接続ストレージの両方で、FSx for ONTAP は柔軟性を高め、コストを削減し、データ保護、高可用性を実現するコンピューティングから切り離された伸縮自在なストレージなど、さまざまなエンタープライズグレードのメリットをもたらします。
Amazon FSx for NetApp ONTAP
Amazon FSx for ONTAP は、NetApp の ONTAP ストレージソフトウェアの機能をネイティブサービスとして AWS にもたらすフルマネージドストレージサービスです。 Amazon EVS での使用が検証されており、高度なデータ管理機能を備えた VMware 環境のストレージ基盤を提供します。これには ONTAP API、スナップショットベースのデータ保護、SnapMirror レプリケーションが含まれます。
FSx for ONTAP の主な価値は次のとおりです。
- ハイパフォーマンス: 低レイテンシで高いパフォーマンスを実現し、要求の厳しいアプリケーションやワークロードに適しています。
- コスト最適化: 重複排除や圧縮などのストレージ効率化機能を提供して、ストレージコストを削減します。
- データ保護: ONTAP スナップショットと SnapMirror レプリケーションをサポートします。
- スケーラビリティ: パフォーマンスを犠牲にすることなく、増大するデータニーズに合わせて迅速に拡張できます。
- 使い慣れた ONTAP エクスペリエンス: オンプレミスの NetApp ONTAP と同等のユーザーエクスペリエンスを提供します。
構成と実装
Amazon EVS と FSx for ONTAP を使用した BlueXP Disaster Recovery のセットアップは簡単です。以下に 4 つの概要を示します。
ステップ 1: Amazon EVS をフェイルオーバーサイトとして設定する
BlueXP Disaster Recovery を使用して Amazon EVS の vCenter でサイトをセットアップする場合は、Location ドロップダウンメニューから AWS-EVS を選択します。(図 2)
図 2: BlueXP Disaster Recovery での Amazon EVS サイトの作成
ステップ 2: Amazon EVS の vCenter を新しいサイトに追加する
サイトが作成されたら、既存の FSx for ONTAP ベースの Amazon EVS の vCenter を追加できます。vCenter の管理 IP アドレスまたは完全修飾ドメイン名 (FQDN)、正しい TCP ポート、および DRaaS で vCenter を管理するために必要な権限を含むログイン認証情報を入力します (図 3)。 この情報は、不正アクセスを防ぐために、お客様の Amazon Virtual Private Cloud (Amazon VPC) 内の BlueXP コネクタに保存されます。
図 3: Amazon EVS の vCenter クラスターをサイトに追加する
ステップ 3: レプリケーションプランを作成する
BlueXP Disaster Recovery コンソールの Replication plans セクションに移動し、レプリケーションプラン を追加します。新しく作成したサイトを “Failover site” として使用します。(図 4)
図 4: Amazon EVS を Failover site として使用するレプリケーションプラン
ステップ 4: テストフェイルオーバーを実行する
データレプリケーションが完了したら、VMware DR プランを簡単に有効化できます。 レプリケーションプラン を選択し、ドロップダウンメニュー から Failover をクリックします。 確認ポップアップに Failover と入力し、Failover ボタン をクリックして確定します。 (図 5)
図 5: Amazon EVS と FSx for ONTAP を使用したフェイルオーバーの実行
フェイルオーバープロセスが期待通りに動作することを確認するために、定期的にテストを行うことが重要です。BlueXP Disaster Recovery のユニークな機能の 1 つは、稼働中の本番 VM とその保護を中断することなく、テストフェイルオーバーを実行できることです。 テストフェイルオーバーを実行するには、ドロップダウンメニュー から “Fail over” の代わりに Test failover メニューオプションを選択します。 このプロセスは、実際のフェイルオーバーとは 3 つの点で異なります。
- オンプレミスで実行されている本番環境の VM は停止しません。
- レプリケーションプランで保護されているデータストアのレプリケーションは停止されません。
- FSx for ONTAP クラスタで保護されている各データストアのクローンを作成し、その情報を使用して Amazon EVS の vCenter に VM を登録して起動します。
利用を開始する
NetApp の既存のお客様は、追加費用なしで Lab On Demand にアクセスできるため、既存のインフラストラクチャにサービスをインストールすることなく、BlueXP Disaster Recovery の機能を試すことができます。FSx for ONTAP を初めて使用する場合は、 AWS Marketplace で NetApp BlueXP のリストにアクセスしてサブスクライブしてください。いくつかの手順を実行して導入すると、BlueXP コンソールから BlueXP Disaster Recovery の 30 日間の容量無制限トライアルにアクセスできるようになります。追加コストは発生しません。トライアルが終了したら、レプリケーションプランとサイトを削除するだけで、すべての変更を元に戻すことができます。
結論
データの可用性が収益に直接影響する今日のビジネス環境において、堅牢なディザスタリカバリソリューションを持つことは単なる IT イニシアチブではなく、ビジネス要件です。 BlueXP Disaster Recovery を Amazon EVS および Amazon FSx for NetApp ONTAP と組み合わせると、オンプレミスの VMware ワークロード向けの強力で柔軟なデータ保護およびディザスタリカバリソリューションが実現します。この統合ソリューションでは、シームレスな AWS 統合、スケーラブルなディザスタリカバリ、AWS での従量課金制モデルによるコスト効率の向上、使い慣れた VMware ツールとインターフェイスによる管理の効率化が実現します。このソリューションを導入することで、企業は不測の災害に直面しても、重要なアプリケーションが引き続き利用可能で保護されていることを確認できます。
このブログでは、これらのテクノロジーがどのように連携して、事業継続性の重要なニーズに対応する包括的な DR ソリューションを実現するかを説明しました。1. Amazon EVS をフェイルオーバーサイトとして設定する方法、2. Amazon EVS の vCenter を新しいサイトに追加する方法、3. レプリケーションプランの作成、4. テストフェイルオーバーの実行の 4 つのステップで構成と実装について説明しました。
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さらに詳しく
- Amazon Elastic VMware Service (Amazon EVS) のパブリックプレビュー開始のお知らせ
- Amazon Elastic VMware Service が Amazon FSx for NetApp ONTAP と統合
- Amazon FSx for NetApp ONTAP の開始方法
- AWS における VMware ワークロードの次なる展開は?
- BlueXP Disaster Recovery と Amazon EVS — ビデオ
- NetApp BlueXP Disaster Recovery の概要
- NetApp BlueXP Disaster Recovery 導入ガイド
翻訳はパートナーソリューションアーキテクト 豊田が担当し、監修はネットアップ合同会社の藤原様に協力頂きました。原文はこちらです。