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AI ツールで実現する継続収益ビジネス 〜開発力を資産に変える〜 – AWS Local Executive Roadshow 札幌編(#8/8)開催レポート
こんにちは。Amazon Web Services Japan のソリューションアーキテクト、田中 里絵 です。
本ブログは、2026 年 4 月〜5 月にかけて全国 5 拠点・計 8 回で開催した「AWS Local Executive Roadshow」シリーズの最終回となる第 8 回レポートです。シリーズの背景や全体像については、大阪・IT 企業編レポートをご覧ください。
前日(5 月 14 日)の AI を自社の業務に活かしたい企業の皆様向けセッションに続き、2026 年 5 月 15 日は同じ北海道にて、AI で顧客を支援する IT 企業のエグゼクティブ・技術部門の皆様をお迎えし、「AI ツールで実現する継続収益ビジネス 〜開発力を資産に変える〜」と題したイベントを開催しました。会場は前日に引き続き、北海道で地域密着の技術支援を続けるクラスメソッド株式会社の札幌オフィスをお借りしました。
イベントの流れ
当日はまず、私 Amazon Web Services Japan のソリューションアーキテクト田中から「AWS で一歩先へ!生成 AI 時代のビジネスモデル変革の打ち手」と題したオープニングセッションをお届けしました。生成 AI が「アシスタント」から「仕事を任せられる存在」へと進化してきた流れを整理しながら、AI エージェント時代に IT 企業がお客様の期待にスピーディーかつ継続的に応え続けるための打ち手として、Kiro のデモを交えながら解説しました(AWS セッションの詳細については大阪・IT 企業編のレポートをご覧ください)。
AWS セッションを通じて AI エージェント時代のビジネス変革の全体像をつかんでいただいたあと、事例セッションへと進みました。北海道に根差し、自社の開発現場で AI 活用に挑戦し続けている企業の実体験をお話しいただきました。
事例紹介:株式会社アドウイック様 〜「低い点数でもいい」──小さな成功体験が若手エンジニアを変えた AI 活用〜
ご登壇いただいたのは株式会社アドウイック 技術部 次長の菅原 幸憲 様です。アドウイックは 1977 年創業、親会社のほくやく・竹山ホールディングス(医薬品卸・医療機器・薬局・介護など北海道に根差した総合ヘルスケアグループ)の ICT 事業を一手に担うシステム会社です。グループ会社向けシステムや医療機関向けシステムに加え、業種業界を問わないシステム開発も手がけており、医療機関の待ち時間短縮を目的とした自社製品「シマエナガ・シリーズ」なども展開しています。
ベテランへの集中と人材育成のジレンマ
菅原様はまず、長年抱えてきた課題として人材不足を挙げられました。新卒・若手中途採用はある程度できているものの、育成に時間がかかる。急ぎの案件が多くてナレッジが広がらない。結果としてスピードが上がらず、新しいチャレンジもなかなかできないという状況でした。若手を即戦力に育てることと、ベテランへの集中を解消することを同時に実現するために、2025 年 1 月に AI 活用をスタートさせました。「今いるメンバーでより多くのことを行っていくために、AI を活用していこう」と決断した時点では、ベテランを交えて一緒に挑戦する余裕もない状況でした。だからこそ「若手を中心にチャレンジする」という方針を取ったといいます。
5 名チームで始めた検証、VS Code の延長線上で始められる Cursor を選択
検証はまず、菅原様ご自身が個人でいくつかのツールに課金して試すところから始まりました。「まずやってみる」を自ら体現するスタートです。その後 5 名の少人数チームで複数のコーディングエージェントを比較検証し、品質・スピード・再現性の観点から効果が見込めることを確認した上でプロジェクト全体への展開に踏み切りました。採用したツールは Cursor です。AWS のイベントで Kiro ではなくて申し訳ない、と照れ笑いを交えながら、菅原様は選定理由を語ってくださいました。「VS Code の置き換えが容易なこと」と「複数のモデルが利用できること」──既存の開発環境からの移行ハードルが低く、若手がすぐ使い始めやすい点を重視した選択でした。
3 つのアプリで積み上げた「成功体験」
取り組みを開始してからの 1 年で、チームは Cursor を使って 3 つのサービスをゼロから開発しました。
1 つ目は、FileCarrier というファイルの安全な送受信サービスです。サーバーレス構成を採用し、大事なファイルを扱うためセキュリティには特に力を入れて構築しました。「意識して作ったつもりでも、やはり不安は拭えなかった」と菅原様は振り返られました。そこでクラスメソッドさんに構成レビューを依頼し、お墨付きをもらったことで安心して社内展開を進めることができたといいます。現在は社内利用にとどまっていますが、今後は社外へのサービス展開も視野に入れており、コスト最適化の構成も Cursor と壁打ちしながら固めています。
2 つ目は、BizcaHolder という名刺管理アプリです。アドウイックとして初めて AI を活用したサービスで、もともとは OCR サービスを使っていましたが、読み取り精度がなかなか上がらないという課題がありました。そこに Amazon Bedrock 上の Claude を活用し、AI による文字認識に切り替えたところ、縦書きも横書きも問題なく読み取れるほど精度が格段に向上しました。
3 つ目は、MIMOMO という議事録作成アプリです。音声から文字起こしを実施して AI が要約し、その内容を社内テンプレートにはめ込む、というフローを実現しています。社員からはこの 3 つの中でも特に好評を得ているといいます。
成功体験の連鎖が組織の意欲を引き上げる
菅原様がこの取り組みを通じて大事にした考え方は 3 つです。1 つ目は「まずやってみること」。「いきなり 100 点を狙うのではなく、低い点数でもいいので、まずは試してみる」という姿勢です。実は菅原様、資料作成時には「60 点でいい」と書いていたそうですが、「60 点にこだわる必要もない」と考え直し、「低い点数でも」という表現に変えたのだといいます。前日に同じ会場でご登壇いただいた北海道文化放送様の「ある程度で一旦始めてみる」というメッセージと、偶然重なった瞬間でした。2 つ目は「小さく始めること」。大きなシステムを一気に作るのではなく、小さいアプリ・小さい機能から着手してブラッシュアップを繰り返す。3 つ目は「メンバーを巻き込むこと」。指示して動かすのではなく、一緒にやる。各アプリはメンバーを入れ替えながら開発し、参加者を増やして輪を広げていったといいます。
こうした小さな成功体験の積み重ねは、組織に目に見える変化をもたらしました。2016 年から AWS を利用し勉強会も重ねてきたアドウイック様ですが、AI 活用に本格的に取り組む前はクラウドプラクティショナーを取ったら満足という状況が続いていました。ところが昨年は、AWS のプロフェッショナル・スペシャリティ級を含む資格の取得数が、メンバー全体で 1 年に 20 個近くにのぼりました。資格手当・受験料支給・一発合格報奨金といった会社の支援制度との相乗効果で、若手がチャレンジに踏み出すハードルが大きく下がったことも後押しになっています。
見えてきた課題と、次のチャレンジ
一方で課題も見えてきました。経験の浅いメンバーほど AI への依存度が高くなり、AI が生成したコードをそのまま採用してバグが発生するケースが出てきました。また、利用するモデルによってはすぐ上限に達してしまう点もあり、コストを意識した活用の設計が次のテーマになっています。
今後の展望として、社内アプリ開発の継続(すでに 2 つのアプリを作成中)とともに、今回構築したサービスの社外製品化の準備も進めています。50 年近い歴史を持つ会社ならではのレガシーシステムのモダナイゼーションにも、小さな分析から着手しています。運用面では、ルールの見直しに加え MCP の活用による品質・スピードのさらなる向上を模索しているほか、社内での利用拡大に向けた情報共有や勉強会も検討中とのことです。そして菅原様が力を込めて話されたのが、外部との連携強化です。「今まで自社内でなんとかしようという意識がメンバーに強かった」と振り返りながら、今後は AWS のトレーニング・ハンズオン、クラスメソッドさんへの構成レビューやセキュリティ相談など、外部パートナーを積極的に活用していきたいと述べられました。セッション後の質疑応答では「札幌に知見のある会社が構えていてくれる安心感は大きい」という言葉もあり、地域に技術パートナーがいることの価値を改めて感じさせる一幕でした。コミュニティへの参加を通じた外部発信も、次のチャレンジとして挙げていただきました。
まとめ
全 8 回にわたり大阪・名古屋・広島・福岡・北海道の 5 拠点を巡ってきた本シリーズを通じて、各地で共通して、AI を「完璧になってから使う」のではなく、「最初のゴールは小さく設定して、すぐ試す」というスタイルが、組織の変化を生み出していることが見えました。本シリーズが、読者の皆様の「まず一歩を踏み出す」きっかけになれば幸いです。
AWS では、日本全国の様々な拠点に対して、最新情報の発信や、AI に関するお取り組みのご支援を今後も行っていきます。
もし本ブログを読んで「うちの会社の取り組みもぜひ発信したい」「AWS と一緒に AI を活用したビジネス変革に取り組みたい」と感じていただけたなら、ぜひ担当営業、あるいはお近くの AWS メンバーまでお気軽にお声がけください。
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執筆者
Amazon Web Services Japan 合同会社 ソリューションアーキテクト 田中 里絵
