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[教育業界向け] 手を動かしながら学ぶデータ分析ワークショップ [開催報告]
アマゾン ウェブ サービス ジャパン(以下、AWS)は 2025 年 5 月 30 日に、「 [教育業界向け] 手を動かしながら学ぶデータ分析ワークショップ」を AWS Startup Loft Tokyo にて開催しました。 近年、個別最適な学びと協働的な学びの実現に向けて教育業界におけるデータ分析の重要性が増しています。 本イベントでは、初等中等教育、EdTech のシステム構築に関わるベンダー、パートナー企業の方々をお招きし、教育業界におけるデータ利活用や AWS における実現方法に関して振り返りつつ、Amazon QuickSight を活用した教育データ分析ダッシュボードの構築などをハンズオンを体験していただきました。当日お集まりいただいた総勢 40 名以上の皆様には、改めて御礼申し上げます。本ブログではその開催報告をお届けします。
オープニング
AWS ジャパン 合同会社 パブリックセクター技術統括本部 教育・研究技術本部 本部長 松井佑馬
イベント冒頭では、AWS ジャパン 合同会社 パブリックセクター技術統括本部 教育・研究技術本部 本部長 松井佑馬がオープニングの挨拶を行いました。
冒頭では、国の教育 DX ロードマップ案を引用し、「学ぶ人のためにあらゆるリソースを」という理念のもと、教育のデジタル化とデータ活用の全体像を紹介しました。校務負担の軽減や多様な学習環境整備を推進するための教育データの標準化・分析の必要性を強調しました。
また、AWS のツールやサービスを活用し、教育の質を向上させるためには、Amazon 社内で活用されている「Working Backwards」というアプローチを参考に、理想的な教育環境を実現するために必要なステップを逆算し、そこから必要なデータや分析方法を見出していくことの重要性についても言及しました。
座学パート1「教育業界におけるデータ利活用」
AWS ジャパン 合同会社 パブリックセクター技術統括本部 教育・研究技術本部 ソリューションアーキテクト 田村健祐
開催挨拶の後は、「教育業界におけるデータ利活用」をテーマにSA 田村により座学パートを行いました。
まず冒頭では、教育 DX の重要なミッションである「誰もが、いつでもどこからでも、誰とでも、自分らしく学べる社会」の実現に向けたこれまでの取り組みについて述べました。GIGA スクール構想に始まり、教育データ利活用ロードマップが策定され、これに基づいた施策が実施されてきました。さらに現在は改訂版である教育 DX ロードマップの策定が始まっています。
続いて、「教育 DX ロードマップ」に基づいて、教育現場が抱える課題についての説明を行いました。子供たちにとっては「自分らしい学び」や「自律的な学習」の実現が課題となっており、教職員の方々は厳しい勤務実態の中で業務効率化が求められています。
これらの課題に対して、教育データの活用は一つの柱となります。特に教育データ利活用では 3 つの重要な取り組みが必要と考えられます:
1:教育サービスの相互接続 校務支援システムやデジタル教科書など、様々な教育システムの連携を目指す
2:教育データの標準化 主体情報、内容情報、活動情報といった教育データの xAPI 活用などの標準化を進め、効率的なデータ活用を目指す
3:データ分析・活用の推進 学校・学級・個人レベルでのダッシュボード導入により、データの可視化と活用の促進を目指す
データの活用により、子どもたちにとっては個別最適な学習支援の実現が期待できます。教職員にとっては子どもたちや学校の状況を即座に把握し、データに基づいた支援ができるため、業務効率や質の面での向上が見込めます。 教育現場のデジタル化は着実に前進していますが、上で述べたような教育現場が抱える課題を踏まえると、データ分析・活用のさらなる推進が求められます。
座学パート2「教育データ活用のためのAWSアーキテクチャ」
AWS ジャパン 合同会社 パブリックセクター技術統括本部 教育・研究技術本部 ソリューションアーキテクト 大南賢亮
続いて SA 大南より、教育データ活用のための AWS アーキテクチャについて、実践的な解説を行いました。
教育現場でのデータ活用には、データをさまざまな場所からコピーしており「正」のデータが不明確になりやすいことや、分析手法の変更に対応できるデータの持ち方がされていないことなどの課題が挙げられます。これらの課題に対して、多様なデータを一元的に保存する「データレイク」というアプローチが有効です。 しかし、実際にデータレイクを構築するには、データの蓄積・分析・可視化といった機能を用意する手間や、高い可用性・拡張性・性能・セキュリティを担保するための管理負担の大きさなど、技術的な課題も多くあります。
そこで AWS のマネージドサービスを活用することで、効率的なデータレイク構築が可能となります。具体的には:
- Amazon S3 をコアのストレージとして活用
- AWS Glue でデータカタログ化と ETL 処理を実現
- Amazon Athena でデータに対するクエリを簡単に実行
- Amazon QuickSight でのデータ可視化
といった組み合わせで、包括的なデータ分析環境を構築できます。
実際の活用案として、xAPI 形式のスタディログ分析や教育ダッシュボードの構築を紹介しました。これらにより、学習理解度の分布や推移、生活記録との相関など、多角的な教育データの分析が可能となります。
また、データレイクのセキュリティとして、文部科学省「教育データ利活用に係る留意事項」に沿った個人情報・プライバシー保護に対応するため、Amazon S3 Object Lock (WORM : Write Once Read Many の実現)や、Amazon GuardDuty S3 Protection(データ管理の脅威検知)などの機能を活用できる点も紹介しました。
ハンズオンパート1「データのプロファイリング(AWS Glue, AWS Glue DataBrew)」
AWS ジャパン 合同会社 パブリックセクター技術統括本部 教育・研究技術本部 ソリューションアーキテクト 秋山怜穏
ワークショップの後半ではハンズオンパートとして実際に AWS の Workshop 環境に触りながら、参加者の皆さまと AWS におけるデータ分析環境の構築方法について学びました。ハンズオンでは、こちらのコンテンツを用い、大学の学生情報システムおよび学習管理システム上のデータを題材に AWS におけるデータのプロファイリングと可視化の流れを体験いただきました。
まず、ハンズオンパート1では AWS Glue DataBrew を用いてデータのプロファイリングを行う手順(Lab 4: データプロファイリングを通じた学生データレイクの理解)を体験いただきました。
参加者の皆さんには、AWS Glue Data Catalog に格納された学生テーブルから DataBrew データセットを作成していただき、本格的なデータプロファイリングジョブの設定を体験していただきました。
PII(個人識別情報)検出機能や重複データの特定、データ間の相関関係分析など、実際のデータ分析プロジェクトで必要となる高度な機能を一通り試していただきました。セキュリティ面でも、KMS 暗号化や IAM ロールの適切な設定を通じて、データガバナンスの重要性を実践的に理解しました。
プロファイルジョブの実行後は、データ品質サマリーや値分布の可視化結果を確認し、データの特性を深く理解しました。生成AIを活用しながら分析結果から得られるインサイトを得る段階まで体験いただきました。
ハンズオンパート2 「データの可視化(Amazon QuickSight、Q in QuickSight)」
AWS ジャパン 合同会社 パブリックセクター技術統括本部 教育・研究技術本部 ソリューションアーキテクト 山本ひかる
続くハンズオンパート2では、ハンズオンパート1で準備したデータを可視化する手順(Lab 6:学生データレイクの探索、学生データレイクの可視化)を参加者の皆さまと行いました。 Amazon QuickSightの基本機能や、Amazon Q in QuickSight による生成 AI とのコラボレーションをご体験いただきました。
まずは、Amazon QuickSight アカウントの設定を行い、ユーザーの登録を行いました。 その後、ハンズオンパート1で準備したデータへのアクセス権を付与し、Amazon QuickSight の「データセット」へデータの取り組みを行います。データの取り込み後、「分析」の画面へ移り、ダッシュボードのためのビジュアルの構築を行いました。
ビジュアルの構築では、学生の人口統計の可視化をテーマに行いました。例えば、学生の男女比を示す円グラフ、学部・専攻別の first-generation student(家庭で最初に学位以上の課程に進学した学生)の割合を示すヒートマップ、学生の出身州を示す地図上での可視化、などを行いました。
Amazon QuickSight の基本操作を一通り体験いただいた後は、Amazon Q in QuickSight によるビジュアルの構築に皆さまにご体験いただきました。
- Amazon Q in QuickSight を使用してビジュアルを構築・編集する
- Amazon Q in QuickSight を使用して計算フィールドを作成し、ビジュアルで使用する
- ダッシュボードに関する自然言語での Q&A 体験
このように、ハンズオンパート2では、Amazon QuickSight の基本的な操作(アカウントの設定、サンプルデータセット・分析・ダッシュボードの作成など)に加え、Amazon Q in QuickSight による生成 AI とのコラボレーションによる BI 業務の効率化・ユーザーエクスペリエンスの向上をご体験いただきました。
最後に
本ワークショップを通じて、AWS のデータ分析サービスの基礎から実践的な活用方法までご紹介させていただきました。データの蓄積から可視化まで、AWS S3、Glue、Glue DataBrew、Athena、Amazon QuickSight といった各サービスを組み合わせることで、効率的なデータ分析基盤を構築できることをご確認いただけたかと思います。
多くの企業様が「データは持っているものの、どう活用すればよいかわからない」「BI ツールの導入に時間がかかりそう」といった課題を抱えていらっしゃいます。本ワークショップをきっかけに、AWS のデータ分析サービスを活用いただくことで、皆様のデータ活用の第一歩を踏み出していただければ幸いです。
まとめ
ワークショップ後の懇親会(任意参加)では、参加者の皆さまの間で活発な意見交換が行われ、教育分野でのデータ活用についての具体的なディスカッションが展開されました。この機会を通じて、参加者同士の貴重なネットワーキングの場となったことを大変嬉しく思います。
AWS は今後も、教育機関のデータ活用を支援するため、様々なテクニカルセッションやコミュニティ活動を継続して実施して参ります。 ご関心を持たれた方は、お気軽にお問い合わせください。教育のイノベーションに取り組まれる皆さまのご参加をお待ちしております。 次回の教育業界向けイベントにも、ぜひご期待ください!
このブログは、アマゾン ウェブサービス ジャパン合同会社 パブリックセクター 技術統括本部 教育・研究技術本部 ソリューションアーキテクト 秋山怜穏、山本ひかるが執筆しました。