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【GENIAC】グローバル生成AIモデルプロバイダ訪米記録
2025年5月12日〜16日、経済産業省が推進するプログラム『Generative AI Accelerator Challenge(GENIAC)』の採択者と共に、米国ベイエリアおよびシアトルの米大手モデルプロバイダーを訪問し、技術交流セッションを実施しました。GENIAC は、経済産業省と国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構 (NEDO) が推進する取り組みで、日本国内の生成 AI 基盤モデル開発力を底上げし、企業等の創意工夫を促すことを目的とするものです。AWSは計算資源の提供や技術支援、コミュニティ形成支援を行っております。今回の訪米は、グローバルモデルプロバイダーとの意見交換及び最新トレンドの把握を目的として、GENIACコミュニティに参画する6社(株式会社リコー、カラクリ株式会社、ウーブン・バイ・トヨタ株式会社、松尾研究所、株式会社ユビタス、フューチャー株式会社)から経営層・技術責任者計7名をお招きしました。
左から松尾研究所 村上取締役、上林様、フューチャー株式会社 森下 Senior Architect、ウーブン・バイ・トヨタ株式会社 小堀 Director、株式会社リコー 中田乙一 様、カラクリ株式会社 中山CPO、株式会社ユビタス 中坪 Senior Director
プログラム概要
1. Japan Innovation Campusでのビジネスセッション(5/12 11 am – 1 pm)
経済産業省が主催するシリコンバレーのイノベーション拠点であるJapan Innovation Campusにて、日本からの参加者6社は日本人起業家3名(Glasp Nakayashiki CEO, I’mbesideyou Kamiya CEO, and Ando COO)とのパネルディスカッションを実施しました。日本と米国の市場の違いや米国でのビジネスの魅力やチャレンジついてのインプットを得ました。また現地VCとAWSによるMeet Upイベントでは株式会社ユビタスが参加し、現地VCであるElevation CapitalのKrishna Mehra (AI Partner)および現地スタートアップ企業であるAdoptAのDeepak Anchala (CEO)と意見交換をしました。日本への投資意欲の実態を体感するとともに、AI Drivenな事業創造の重要性を認識しました。
2.Anthtropicとの対話セッション(5/12 3pm – 5 pm)
Anthropicは、サンフランシスコに拠点を置くAIスタートアップで、安全性と信頼性を重視した大規模言語モデル(LLM)の開発を行っています。創業者はOpenAIの元メンバーであり、同社の「Claude」は、高度な対話能力と直感的な操作性で注目を集めています。Anthropicからは、Jason Kim氏、Ethan氏、Sam氏が参加し、知見共有セッションを実施しました。Claude Codeの活用方法や顧客実装に関する知見が共有され、双方にとって示唆を得られる生産的な技術交流となりました。
3.Metaとの対話セッション(5/13 9 am – 12 pm)
Metaは、生成AI分野でも積極的に開発を進めており、独自の大規模言語モデル「Llama(ラマ)」シリーズを提供しています。Metaからは、Eissa Jamil氏(パートナーエンジニアリングマネージャー)、Christine Hayden氏(カスタマーサクセスリード)、Hamid Shojanazeri氏(Llama/PyTorchのパートナーエンジニアリングマネージャー)、Joe Spisak氏(ジェネレーティブAIディレクター)が参加し、GENIAC参加者と3時間に及ぶ討議を行いました。
4.NVIDIAとの対話セッション(5/13 2 pm – 6 pm)
NVIDIAは、GPU(グラフィックス処理ユニット)で世界的に知られる半導体企業であり、生成AIの基盤を支える中心的な存在です。NVIDIAからは、Yogesh Agrawal氏(データセンタービジネス担当VP)、Jacon Kern氏(AWS Cosellリード)、Mukundhan Srinivasan氏(NeMo GTM)、Jeff Lattomus氏(DGXC セールスリーダー)が参加し、GENIAC参加者との対話を行いました。NVIDIAのプロダクトチームとサービスソリューションアーキテクトより、NeMo、NIMs、Dynamoに関する最新の技術情報とトレンドについて詳細な説明が行われました。NVIDIA DGX Cloudの紹介では、NVIDIAとAWS合同のQ&Aセッションが実施されました。
5.Annapurna Labとの対話セッション(5/14 10 am – 12 pm)
Annapurna Labsは、Amazonが買収した半導体開発企業で、AWSの独自チップの設計を担っています。代表的な製品には、推論用チップ「Inferentia」や学習用チップ「Trainium」があり、これらはコスト効率よく大規模なAIワークロードを処理するために最適化されています。AWSからは、AnnapurnaのHead of BD/GTMであるKamran Khanが参加し、GENIAC参加者との対話を行いました。Karakuriの中山CPOから現状の活用方法についてシェアされるとともに、Trainiumの今後の展望について共有されました。
6.Cohereとの対話セッション(5/14 2 pm – 4 pm)
Cohereは、カナダ・トロント発のAIスタートアップで、エンタープライズ向けに特化した大規模言語モデル(LLM)の開発を行っています。CohereからはSaurabh氏(CTO)とGokce氏(MLリサーチャー)が参加しました。
7.AWS Bedrockの市場動向(5/15 3 pm – 5 pm)
AWSからはAmazon BedrockのGTMチームのEugene Kawamoto(Director)が参加しました。Eugene Kawamotoは、Amazon BedrockおよびAI ServicesのGTMの立場から見たAWSの現状と米国における生成AIのニーズとトレンドについて共有しました。生成AIのトレンドとしてAgentic AIの普及とそのエコシステムについての重要性についての言及がありました。日本の参加者を交えた生成AIのモデル開発とGTMのアイデアについての意見交換がされました。
8.Amazon SageMaker HyperPod、Amazon AGIチームによるEBCセッション(5/16 9 am – 11 am)
AWSからは、Amazon SageMaker HyperPodサービスチームのRajneesh SinghとAmazon AGI AIインフラストラクチャの製品責任者であるSejun Raが登壇し、Amazon NovaとAmazon SageMaker HyperPodを使用したモデル開発に関する説明を行いました。
参加者の声
株式会社カラクリ 中山CPO:
世界トップ企業の専門家たちや現地で挑戦する日本人起業家たちと会話し、そこで得た知見をもとに先を見据えた意思決定ができました。セッティングしていただいたAWSの皆様ありがとうございました。
ウーブン・バイ・トヨタ株式会社 小堀 Director:
今回の視察ではAnthropic、Meta、Cohereなど生成AI開発の最前線を視察し大いに刺激を受けた。一方で、日本のAI事業社にとって資金調達やユースケース拡大の課題も認識でき大きな学びがありました。
松尾研究室 村上取締役:
Big Techの強さはもちろん感じましたが、日本のモデル開発事業者やAIエンジニアが十分戦えるレベルにいることを再確認することもできました。勝ち筋を見極め協調と差別化のバランスを取ることが重要です。今回得た知見を活用し、今後も松尾研として日本全体を支援していきます。
株式会社ユビタス 中坪 Senior Director:
今回の視察ではAnthropic、Meta、Cohereなど生成AI開発の最前線を視察し大いに刺激を受けた。一方で、日本のAI事業社にとって資金調達やユースケース拡大の課題も認識でき大きな学びがありました。
フューチャー株式会社 森下 Senior Architect:
この度は貴重な視察の機会を設けていただきありがとうございました。今後自社のビジネスをどのように展開していくかという点で多くの示唆をいただき、また今後国内企業が成功を収めるためには様々な国内外の企業と協力体制を築いていくことが重要になると感じました。
株式会社リコー 中田乙一様:
AWSチームの皆様の献身的なサポートのおかげで、貴重なネットワーキングの機会を得ることができました。米国やカナダの主要企業との対話を通じて、当社が取り組むべき注力分野やアプローチについて新たな視点を得ることができ、大変有意義でした。さらに、参加組織間の強いつながりも生まれ、特に意味のある経験となりました。
AWSは今後もGENIACコミュニティの活動を継続的に支援していきます。また、AWSは生成AIの社会実装を加速するために「生成AI実用化推進プログラム」も展開しています。これは、製造業、金融、医療、教育など幅広い業界のニーズに応じて、生成AIのビジネス現場での具体的な活用を支援する取り組みです。コミュニティイベントも開催されますので、ぜひ奮ってご参加ください。
このブログは、アマゾンウェブサービスジャパン合同会社 パブリックセクター 事業開発マネージャーである田村 圭が執筆しました。