Amazon Web Services ブログ
株式会社ウィンシステム様の AWS 生成 AI 事例:Cline with Amazon Bedrock の活用により開発生産性が 10 倍向上
本ブログは株式会社ウィンシステム様と Amazon Web Services Japan 合同会社が共同で執筆いたしました。
みなさん、こんにちは。AWS アカウントマネージャーの塩見です 。
昨今、多くのお客様から生成 AI の活用についてご相談いただくようになりました。特にシステム開発事業者様や SaaS 事業者様においては、システム開発に生成 AI を活用することで開発生産性を向上させる取り組みに注目されています。
株式会社ウィンシステム様は、旅行会社向けシステム開発や、企業の出張管理などを主な利用シーンとした自社プロダクト「 Travel Studio 」の開発を主力事業としている企業です。今回は、同社が Amazon Bedrock と AI コーディングエージェント( Cline )を組み合わせることで実現した、劇的な開発生産性の向上についてご紹介します。
課題:非効率的な内部業務
ウィンシステム様の社内管理ツールは古く、特定の担当者に依存した Excel 管理などの運用も続けていました。企業成長に伴い業務が複雑化したことで、従来の管理方法では効率が悪く、社内統制も困難な状況となっていました。
内部業務の Web アプリ化による効率化が急務である一方で、顧客向け開発案件へ戦略的に開発リソースを投入する必要がありました。そのため、内部業務の Web アプリ化は最小限の工数で進めるアプローチが求められていました。
解決策と導入効果:AI コーディングエージェントにより開発工数を抑えた内部業務改善の実現
これらの課題に対し、 AI コーディングエージェントの導入により、従来の開発プロセスにおける工数削減を実現しつつ、管理ツールの Webアプリケーション化にチャレンジしました。具体的には、 AI コーディングエージェント と Amazon Bedrock ( Claude 3.7 Sonnet )を組み合わせた AI 開発環境を構築しています。
AI コーディングエージェントには Cline を利用しています。Cline は、Visual Studio Code で動作する AI 搭載のコーディングアシスタントです。AI によるコード生成を行うだけでなく、プロジェクトの計画段階からコードのテストまで、包括的にサポートします。
上記開発環境により工数削減を実現しながら、企業レベルでの AI 活用における情報セキュリティ要件を Amazon Bedrock で実現しました。以下の導入効果が得られています。
- 1営業日で Web アプリケーション版の管理ツールが完成
- 従来手法では技術調査を含め10営業日を要する工程を1営業日で完遂(開発生産性が10倍に向上)
- 認証機能の実装やアプリケーションに関するドキュメント作成も AI コーディングエージェントが実施
- 通常なら後回しになりがちなドキュメント作成まで AI コーディングエージェントが自動で行ってくれたおかげで、属人化のリスクなく、早期運用開始を実現
またそのほか以下のような開発でも AI 開発環境を活用し、開発生産性向上ならびに企業価値向上に努めています。
- 営業提案の高速化
- お客様への提案用プロトタイプを数時間で作成し、商談のスピードアップを実現
- 既存システムの品質向上
- マスター画面の自動生成やコードのリファクタリングにより、保守性が改善
- グローバル展開の加速
- 既存サイトの多言語化を短期間で完了
お客様の声
ウィンシステム様 システム部エンジニアの髙橋隼人様は次のように評価されています。
「技術的に実現可能であると分かっていても、実際に開発するには技術調査等で想像以上に時間がかかります。AI コーディングエージェントを活用することで開発生産性は大幅に向上します。また、LLM プロバイダーとして Amazon Bedrock を利用することデータプライバシーやガバナンスを効かせながら開発できます。」
今後の展望
更なる開発生産性向上を目指しつつ、効率的に AI コーディングエージェントを活用するため、次の項目を検討予定です。
- バッチ処理など、ロジックは単純だが記述量が多く開発者が敬遠しがちな処理の実装にも活用を拡大
- 利用者のトークン利用量に応じた最適な AI コーディングエージェントの選定(従量課金制と定額課金制の最適なバランスの模索)
- プロジェクト固有の制約や自社のコーディング規約などを整理したドキュメントを用意し、AI コーディングエージェントに参照させる仕組みの確立
本事例は、 AI コーディングエージェントを効果的に活用することで、限られたリソースの中でも大幅な生産性向上を実現できることを示しています。特に、Amazon Bedrock のセキュアな環境と、 AI コーディングエージェントの柔軟性を組み合わせることで、企業の開発現場における実践的な AI 活用の好例となっています。