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BlueXP Workload Factory Migration Advisor を使用して、VMware から Amazon EC2 および Amazon FSx for NetApp ONTAP への移行を迅速化

本稿は、2025 年 5 月 15 日に AWS Storage Blog で公開された “Expedite VMware migration to Amazon EC2 and Amazon FSx for NetApp ONTAP using the BlueXP workload factory migration advisor” を翻訳したものです。

過去 20 年間、仮想化、特に VMware は、組織のコスト削減、運用効率の向上、インフラ管理の簡素化に貢献してきた主要なテクノロジートレンドでした。しかし、テクノロジーを取り巻く環境は急速に進化しています。クラウドサービスプロバイダーは現在、従来のオンプレミス仮想化ソリューションに同等かそれ以上の高度なハイパーバイザー機能を提供するとともに、幅広いクラウドネイティブサービスとのシームレスな統合を実現しています。Broadcom による VMware の買収は、ライセンスモデルと価格体系に大きな変化をもたらし、多くの組織が仮想化戦略の見直しを迫られています。

こうした業界の変化を受け、あらゆる規模の企業が、VMware ワークロードを Amazon Elastic Compute Cloud(Amazon EC2) へ効率的に移行するための方法を積極的に模索しています。この移行は、潜在的なライセンス制約を回避するだけでなく、インフラストラクチャをモダナイズし、コスト効率、柔軟性、信頼性、セキュリティといった AWS サービスのメリットを活用する機会でもあります。しかしながら、こうした移行には、複雑な計画サイクル、パフォーマンス最適化の取り組み、そして移行プロセスにおける見落としによるコストのかかるリスクなど、大きな課題が伴うことがよくあります。

NetAppBlueXP Workload Factory Migration Advisor は AWS 上で Amazon FSx for NetApp ONTAP (以降 FSx for ONTAP) ストレージを使用して VMware ワークロードを Amazon EC2 インスタンスに移行するための自動計画と最適化を提供することで、組織がこれらの課題を克服するのに役立ちます。

この記事では、図 1 に示すように、BlueXP Workload Factory Migration Advisor を使用して、VMware デプロイメントから AWS へのシームレスな移行を計画および実行する方法を説明します。

AWS へのVMware のデプロイ

図 1: VMware デプロイメントから AWS へのシームレスな移行

ウォークスルー

このブログ記事では、移行元の VMware ワークロードを分析し、ストレージインフラストラクチャを最適化し、リスクを最小限に抑えて移行プロセスを効率化する包括的な移行計画を作成する方法を学べます。Migration Advisor は、VMware 移行を評価、計画、実行するための以下の体系的なプロセスをガイドします。

  1. プランニングオプションを選択する。
  2.  AWS クラウドのオンボーディングを準備する。
  3. 移行対象の VM のスコープを設定する。
  4. 仮想ディスクを分類する。
  5. デプロイメント計画をまとめる。
  6. 移行計画をレビューする。
  7. 最適化されたストレージインフラストラクチャをプロビジョニングする。

前提条件

このプロセスを始める前に、次のものを用意しておく必要があります。

  • AWS アカウント
  • VMware 環境へのアクセス
  • RVTools または VMware PowerCLI がインストールされていること (評価タイプによる)
  • BlueXP アカウント (無料)

Workload Factory Migration Advisor の仕組み

移行手順を詳しく説明する前に、BlueXP Workload Factory が VMware から AWS への移行を効率化するためにどのように役立つかを理解しましょう。このソリューションは、既存の VMware 環境を分析し、FSx for ONTAP ストレージを備えた Amazon EC2 への移行に最適なプランを作成する包括的な Migration Advisor を提供します。

Migration Advisor は、オンプレミス、VMware Cloud on AWS、または他のクラウドプロバイダーによってホストされている環境など、あらゆる VMware 環境からネイティブ AWS インフラストラクチャへの移行をサポートします。vSphere 環境における現在の仮想マシン構成を詳細に分析し、Amazon EC2、Amazon Elastic Block Store (Amazon EBS)、そして外部データストアとしてカスタマイズされた FSx for ONTAP ファイルシステムの導入に最適な推奨事項を生成します。

このアプローチには、いくつかの重要な利点があります。

  • コストの最適化: ホストとストレージのリソースを分離し、高度なデータ効率機能を活用することで、インフラストラクチャコストを大幅に削減できます。
  • スケーラビリティ: ストレージ容量はコンピューティングリソースとは独立して調整できるため、柔軟性が向上します。
  • 高度なデータ管理:効率的なスナップショット、クローン作成、データ圧縮などの NetApp ONTAP 機能にアクセスできます。
  • 運用効率: ハードウェア管理のオーバーヘッドが削減され、インフラストラクチャのスケーリングが簡素化されます。
  • 高可用性: マルチ AZ デプロイメントと柔軟なネットワークオプションをサポートします。

図 2 のように Workload Factory に移動し、VMware ワークロードの 「Migration to AWS native compute」 オプションを選択して、VMware ワークロードをネイティブ AWS コンピューティングと FSx for ONTAP に移行するための Plan プロセスを開始します。

ワークロードファクトリ

図 2: Workload Factory

1. プランニングオプションを選択する

最初のステップは、VMware 環境に関するデータを収集するための適切な評価方法を選択することです。Migration Advisor は、移行計画の異なるニーズに適した 2 つのアプローチを提供します。

Quick Assessment

このオプションでは、広く使用されている VMware インフラストラクチャ評価ツールである RVTools を使用して、高レベルの設計ブループリントを作成します。Quick Assessment は、次のような場合に最適です。

  • お客様の環境の初期評価を迅速に実施する。
  • ベースラインのデプロイメント要件を理解する。
  • 潜在的なコスト構造をプレビューする。
  • 事前最適化の機会を特定する。

Detailed planning

より包括的な分析を行うには、組み込みの Migration Advisor data collector を介して VMware PowerCLI を活用する Detailed planning オプションを使用します。この方法は以下のようになります。

  • 長期の拡張パフォーマンスメトリックを収集する。
  • VM の実行時の動作を監視する。
  • well-architected designs を作成する。
  • きめ細かな最適化の推奨事項を提供する。
  • 正確なストレージアーキテクチャの設計図を作成する。

正確なパフォーマンスサイズ設定とコストの最適化が重要な要素となる本番環境の移行には、Detailed planning オプションが推奨されます。

このチュートリアルでは、図 3 に示すように、Detailed planning オプションを使用して Migration Advisor の全機能を実演します。

ワークロードファクトリ移行アドバイザー

図 3: BlueXP Workload Factory Migration Advisor

ご希望の評価方法を選択すると、Migration Advisor がお客様の VMware 環境から必要な構成データとパフォーマンスデータの収集を開始します。このデータは、その後のすべての移行計画ステップの基礎となります。

2. AWS クラウドのオンボーディングの準備

プランニングオプションを選択したら、次のステップは分析用の VM データを準備し、ターゲット AWS 環境のパラメータを設定することです。このステップは、正確な評価と最適な移行計画を実現するために不可欠です。準備プロセスは 3 つの主要な領域に分かれています。

VM 構成のアップロード

  1. Migration Advisor インターフェイスで VM configuration タブを展開します。
  2. 画面の右側にある Codebox を見つけます。
  3. 提供されているスクリプトスニペットをダウンロードまたはコピーします。
  4. VMware 環境でスクリプトを実行します。これにより、VM に関する包括的なデータを含むインベントリ ZIP ファイルが生成されます。
  5. 生成されたインベントリ ZIP ファイルを Migration Advisor にアップロードします。

VM インベントリの考慮事項

このセクションでは、移行のターゲット AWS リージョンを指定します。

  1. AWS リージョンのドロップダウンメニューを見つけます。
  2. 移行したワークロードを展開する予定のリージョンを選択します (図 4)。

AWS リージョンを指定します。

図 4: 移行用の AWS リージョンを指定する

ターゲット容量と保護に関する考慮事項

Migration Advisor は、業界のベストプラクティスに基づいて、容量とデータ保護に関するデフォルトのパラメータを提供します。このタブでは、これらの設定を確認し、組織固有の要件に合わせて調整できます。

3. 移行対象の VM のスコープを設定する

次に、Migration Advisor は移行対象となる VM を表示します(図 5)。デフォルトでは、パワーオン状態の VM がすべて選択されます。ルールを変更して、すべての VM を選択したり、特定のデータセンターやクラスタを選択したり、特定の VM を手動で検索して選択したりすることもできます。

AWS への移行の対象となる仮想マシンのスコープ

図 5: Migration Advisor が移行される VM を表示します

4. 仮想ディスクを分類する

ストレージインフラストラクチャの評価は、移行計画の重要な要素です。このステップでは、Migration Advisor が仮想ディスクの詳細な分析を行い、FSx for ONTAP と Amazon EBS ストレージサービスを使用して最適化されたストレージ導入プランを作成します。

自動ボリューム階層化割り当て

Migration Advisor は、パフォーマンスプロファイルに基づいて、各ボリュームに最もコスト効率の高い階層化ポリシーを自動的に割り当てます (図 6)。

  • capacity-optimized ボリューム: GB あたりのコストが最も低く、IOPS と SLA 要件が低く、アクセス頻度の低いデータに適しています。
  • standard ボリューム: コスト最適化のために自動階層化が構成された標準ストレージ ボリュームは、汎用アプリケーションに最適です。
  • performance-optimized ボリューム: 非常に厳しいパフォーマンスと SLA 要件、および平均 IO レートが 5000 IOPS を超える VM 向けに設計されています。

Detailed planning (ステップ 1 )の一環として、これらの割り当ては、VMware 環境内のソース仮想マシンの平均およびピーク IOPS、スループット、サービス時間メトリック、および SLA 要件を分析することで決定されます。ステップ 1 で Quick Assessment オプションを選択した場合は、ランタイムデータ収集は Detailed planning モードでのみ利用できるため、VM のパフォーマンス要件を手動で見積もり、割り当てる必要があります。

クイックアセスメント

図 6: Migration Advisor は、パフォーマンスプロファイルに基づいて、各ボリュームに最もコスト効率の高い階層化ポリシーを自動的に割り当てます

ストレージ構成戦略

図 7 に示すように、Migration Advisor は最適なパフォーマンスとコスト効率を実現するために、デュアルストレージアプローチを実装しています。ルートボリュームは Amazon EBS gp3 ボリュームとして構成され、アプリケーションデータボリュームは FSx for ONTAP 上の iSCSI ボリューム(SQL Server フェイルオーバークラスターインスタンス用の共有ストレージなど)として展開されます。この構成戦略は、以下の 2 つの主要なアーキテクチャ要件に基づいています。

  • ほとんどの EC2 インスタンスタイプでは、オペレーティングシステムとブート ファイルがインストールされる EBS ベースのルートボリュームが必要です。
  • アプリケーションデータボリュームにはそれぞれ異なる主要機能が必要であり、マルチプロトコルアクセス、データ重複排除、圧縮、レプリケーションなど、FSx for ONTAP の高度な機能のメリットを享受できる明確なパフォーマンス特性があります。

EC2 ボリュームの割り当てを確認してください。

図 7: EC2 ボリュームの割り当てを確認する

5. デプロイメント計画をまとめる

Migration Advisor は、以前に収集したデータを分析し、FSx for ONTAP 上で最適化された仮想マシン導入プランを生成します。この包括的なプランは、お客様のストレージ要件を考慮しながら、最適なパフォーマンスとコスト効率を確保します。この構成には、平均的な毎日のワークロード要件だけでなく、ピーク時のパフォーマンス要求にも対応できる余裕が組み込まれています。

デプロイメントサマリーテーブル (図 8) には、インスタンスストレージの割り当ての詳細が表示されます。

図 8 デプロイメント概要表

図 8: デプロイメントサマリーテーブル

具体的な詳細を調べるには:

  1. テーブルから任意の FSx for ONTAP システムを選択します。
  2. ソース VM、保護ポリシー、関連付けられているボリューム、およびそれらの属性を確認します。
  3. 提案された構成が要件と一致していることを確認します。

展開計画を確認した後、Next を選択して移行計画プロセスを続行します。

6. 移行計画をレビューする

最終レビュー段階では、コスト分析と詳細な展開仕様が提供され、移行計画が技術要件とビジネス目標の両方に一致することが保証されます。

Migration Advisor は、提案された FSx for ONTAP 構成と同等の EBS のみのセットアップとの間でコストを徹底的に比較します。公平な比較のため、EBS のみのシナリオでは FSx for ONTAP プランで使用されている階層化アプローチを反映し、ワークロード要件に合わせて適切な EBS ボリュームタイプ(パフォーマンス最適化ワークロードには io2 ボリューム、標準ワークロードには gp3 ボリューム、容量最適化ストレージニーズには st1 ボリューム)を採用しています 。

移行計画アドバイザーによる比較

図 9: Migration Advisor による FSx for ONTAP と Amazon EBS の比較

レビューが完了したら、移行計画全体を JSON ファイルとしてエクスポートするか、包括的なレポートを PDF ドキュメントとしてダウンロードできます。エクスポートされた計画は、VMware 環境の分析から得られたすべての技術仕様、ベストプラクティス、構成推奨事項を含む実装ガイドとして機能します。提案された計画にご納得いただけましたら、Done をクリックして計画フェーズを終了し、実装の準備をしてください。

7. 最適化されたストレージインフラストラクチャをプロビジョニングする

移行計画に従い、前の手順で慎重に作成したパラメータを使用して、最適化された FSx for ONTAP システムをプロビジョニングします。Workload Factory のホームページから「Storage」 セクションに移動し、「Create file system」 オプションをクリックします。「Advanced create」 を選択し、移行計画で推奨されたパラメータを使用して、新しい FSx for ONTAP 構成を定義します。

Workload Factory では、ストレージをプロビジョニングする方法が 2 つあります。

  • Workload Factory UI の使用:ポイントアンドクリック方式です。実際の FSx for ONTAP ファイルシステムを作成するには、AWS ターゲットアカウントの認証情報が必要になりますのでご注意ください。AWS 認証情報の追加方法の詳細な手順は、BlueXP Workload Factory のセットアップおよび管理ドキュメント をご覧ください。
  • Infrastructure as Code (IaC): Workload Factory は、AWS アカウント内のリソースを管理するコードベースにコピーできる IaC コードスニペットを自動生成します。サポートされている形式は、CloudFormation、Terraform、REST API です。生成されたコードは画面右側の Codebox に表示されます。

IaC アプローチは、複数のファイルシステムを管理している場合や、デプロイメントを既存の自動化ワークフローに組み込む場合に特に便利です。

ストレージをプロビジョニングするためのワークロードファクトリオプション

図 10: ストレージのプロビジョニングのための Workload Factory のオプション

クリーンアップ

将来的に料金が発生しないようにするには、テスト目的で作成した FSx for ONTAP ファイルシステムと EC2 インスタンスを必ず削除してください。

結論

この記事では、NetApp BlueXP Workload Factory Migration Advisor が VMware から AWS への移行を効率化する方法をご紹介しました。コスト削減、運用効率の向上、クラウド導入の加速など、どのような目標をお持ちでも、このソリューションは自動化された分析、計画、最適化機能を提供することで、移行を成功させるために必要なツールとガイダンスを提供します。

詳細については、BlueXP ワークロードファクトリーのドキュメント、および「あらゆる VMware 環境から Amazon FSx for NetApp ONTAP および Amazon EC2 へのシームレスな移行」をご覧ください。VMware Cloud on AWS から Amazon EC2 に仮想マシンを移行する場合は、Amazon が導入した移行プログラムである AWS VMware Migration Accelerator (VMA) について詳しく理解することをお勧めします。これは、お客様のコスト削減、移行の高速化、リスク軽減に役立ちます。

Jay Horne

Jay Horne

Jay Horne は、AWS の World-Wide Specialist Organization において、Amazon FSx for NetApp ONTAP サービスのグローバルテクニカルリーダー兼サービス連携ソリューションアーキテクトを務めています。テネシー州ナッシュビルを拠点とする Jay は、15 年以上のエンタープライズコンサルティング経験を有し、クラウド、ストレージ、サーバー、ネットワークなど、様々なインフラストラクチャに携わっています。Jay は、世界各地のストレージおよびクラウド関連のカンファレンスで頻繁に講演を行っています。

Edo Geron

Edo Geron

Edo Geron は NetApp のプロダクトマネージャーであり、AWS 上の VMware ワークロードの移行と効率的な管理を効率化するための製品機能の構築を担当しています。Edo は、複数のテクニカルソリューションエンジニアリングの職務を通じて、20 年以上にわたるストレージおよび VMware の経験を積んでいます。

Igor Obradovic

Igor Obradovic

Igor Obradovic は、Amazon Web Services プロフェッショナルサービスチームのシニアデータベーススペシャリティアーキテクト(SME) です。組織がクラウド導入に向けた効率的かつ効果的な計画を策定し、実行できるよう支援しています。Igor は、お客様のシステムとワークロードのクラウド移行を加速し、アプリケーションをモダナイズし、投資価値を最大化することに注力しています。

Randy Seamans

Randy Seamans

Randy はストレージ業界のベテランであり、AWS のプリンシパルストレージスペシャリストおよびアドボケイトで、ハイパフォーマンスストレージ、コンピューティング(HPC)、そしてディザスタリカバリを専門としています。ストレージに関する詳しい情報や興味深い記事は、https://www.linkedin.com/in/storageperformance でご覧いただけます。

翻訳はパートナーソリューションアーキテクト 豊田が担当し、監修はネットアップ合同会社の藤原様に協力頂きました。原文はこちらです。