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【開催報告】AWS Summit Japan 2025 建設・不動産向けブース展示

日本最大の “AWS を学ぶイベント” AWS Summit Japan が 6 月 25 日(水)、26 日(木)の二日間で開催されました。今年も業種ごとのブース展示の中で、建設・不動産業界向けのソリューション展示を行いました。大勢のお客様にご来場いただけましたこと、御礼申し上げます。「デジタルの力で、建設・不動産の”当たり前”を革新する」というタイトルで、生成AIの活用による業界課題の解決や業務効率化に向けて3つのソリューションを展示させていただきました。このBlogを通じて展示内容を改めてご紹介します。

生成 AI による書類審査業務の改善

AI 書類審査ソリューション – RAPID(Review & Assesment Powered by Intelligent Documentation)

クリックすると説明資料を表示します。

不動産業界において「大量のドキュメント審査/レビューに時間がかかっている」という課題から生まれたソリューションです。ソリューションの開発中に他の業界でも同様の課題が存在することが分かりました。そのため、多くのお客様に試していただけるように AWS Samples でソースコードを公開しています。簡単にデプロイできますので、是非試してみてください!主な機能は以下の3つになります。

  1. 構想化されたチェックリストの作成と管理
  2. 生成 AI による書類審査のサポート
  3. AIによる判断根拠や信頼度を表示し透明性を確保

何らかのルールに基づいて申請書を人がレビューする業務は多いのではないでしょうか?生成 AI を利用して書類審査ができれば、業務負荷の低減や属人的な審査の削減につながるのでは?と期待を持たれる方もいらっしゃると思います。一方で、AIに審査を任せた場合には、精度、妥当性、説明責任などを担保する上での課題が生じます。このソリューションは、Human-in-the-Loop の考えに基づき、利便性と信頼性を両立させたものになっています。最初に審査ルールとなるドキュメントをアップロードすることで、AIがチェックリストを作成します。審査精度を高める工夫として作成されたチェックリストは構造化されており、必要に応じて人間が修正や追加をできるようにしています。次に審査対象のドキュメントをアップロードすることで、AIがチェックリストを参照し、ドキュメントを審査します。ここでは、審査結果に加えて判断根拠や信頼度が表示されるため、AI審査の透明性を確保することができます。他にも信頼度が低い結果だけをフィルタリングして効率的に確認したり、MCPを利用して外部ツールを参照し審査精度を高める機能なども実装されています。詳しくは、是非 AWS Samples にてご確認ください。

実際の画面サンプルやアーキテクチャは以下となります。(画像クリックで大きな画像を表示します)

  1. ハウスメーカーがお客様との商談結果を元に議事録を作成。その決定事項と案内しようとしている間取りの条件が合っているかを確認する例 「構造化されたチェックリスト作成」 〜 「書類審査の実行」

    チェックリストをアップロードして構造化されたデータへ変換するフロー

    チェックリストをアップロードして構造化されたデータへ変換するフロー

    書類の審査処理フロー

    書類の審査処理フロー

  2. 社内稟議書チェックのサンプル画面

    RAPID

    社内稟議書サンプル

  3. アーキテクチャ図。AWS Lambda や AWS Step Functions といったサーバレスサービスを中心に構成されており、利用頻度に応じた課金体系が主体となっています。

    RAPID Architecture

    RAPID Architecture

生成 AI による建設現場 映像活用の推進

生成 AI とカメラが描く建設現場のDX未来像 – CEDIX(Construction/Camera Edge Data/Device Intelligence X )


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生成 AI を利用して、建設現場に設置されたカメラの映像をより有効活用したいというニーズに応えるソリューションです。本ソリューションは以下のような特徴で現場カメラの映像活用を推進します。

  1. 多様なカメラの統合と映像データの一元管理
  2. 安価で拡張可能な保存先を提供
  3. 生成 AI 活用による高度な分析と自動化

建設現場では安全管理、防犯、遠隔臨場を目的に現場カメラの導入が進んでいます。一方で、「モニターに映った映像を常時確認するのではなく、何らかの問題が起きた場合だけ通知を受けたい」、「蓄積した映像データから新たな洞察を得たい」など、映像を活用して業務のあり方を変えたいという要望があるのではないでしょうか?また、現場に導入されるカメラのメーカーや仕様もバラバラで、それらを一元管理したいというニーズもあると思われます。CEDIX はカメラの仕様に応じた多様なインターフェースを提供し、収集した映像データを共通の仕組みで管理します。さらに、生成 AI を活用して映像データを分析することができます。例えば、安全管理の観点から、建機の近くに人が立ち入った場合にアラートを上げることができます。また、同じ安全管理の例でも、工事の進捗に応じて確認すべき観点は変わります。高所作業においては、ハーネスの未着用を検出することが必要になります。CEDIX はカメラごとにプロンプトで役割を指示できます。工程の進捗に応じて、「建機と人の位置から危険を判定」という指示から「ヘルメットやハーネスなどの個人用保護具の未着用による危険を判定」という様に柔軟に指示を追加・変更することができます。さらに蓄積された映像データを生成 AI で分析することで、事故につながる可能性のある危険な状況の件数など統計分析をおこないそれをレポートとして出力することが可能です。分かりやすい例として安全管理を挙げましたが、現場での整理整頓・施工状況の把握・ベテラン職人の視点を再現など、どのような指示を与えるかによって現場の QCDSE 向上に寄与できます。導入に向けた検討や発展的なユースケースの相談については、弊社営業担当もしくは AWS 問い合わせ窓口へお問い合わせください。

実際の画面サンプルやアーキテクチャは以下となります。(画像クリックで大きな画像を表示します)

  1. カメラ管理の基本的な機能 – 設置場所別のカメラ一覧、最新映像をまとめてみるLiveビューイング、過去の時系列画像・映像及び生成 AI による検知内容の表示

    CEDIX-基本機能

    カメラ管理の基本的な機能

  2. 事前設定された内容に加え、生成 AI によって設定されたタグも含めた検索、注意・確認が必要なシーンのブックマーク管理、生成 AI による自由度の高いレポート作成

    CEDIX-Screenshot3

    画像・映像の検索、ブックマークからの一覧表示、レポート作成

  3. カテゴライズ可能な生成 AI 自動タグの設定、カメラごとで組み合わせ可能な AI 検知設定、現場毎に検知したタグを可視化するインサイト分析、設定されたタグでシーンを絞り込める検索機能

    CEDIX-Screenshot2

    生成 AI による自動タグ設定と活用シーン

  4. アーキテクチャ図。都度処理を行う部分は Amazon API Gateway や AWS Lambda といったサーバレスサービスを中心に構成。画像収集処理はリアルタイム性などの特性に応じてコンテナやサーバレスを活用

    CEDIX-Architecture

    CEDIX Architecture

生成 AI による BIM データ活用

IFC With GraphRAG
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生成 AI を利用することで、BIM( Building Information Modeling )データの活用を広げる方向性を提示するソリューションです。本ソリューションは以下のような機能を持っています。

  1. IFC ( Industry Foundation Classes ) ファイルをAIが扱いやすい形式(RDF ( Resource Description Framework ) グラフ)に変換しグラフデータベースに格納
  2. グラフデータベースに格納された建物の情報にチャットで問い合わせ
  3. 問い合わせ結果に関係するオブジェクトをブラウザベースのビューワー上にハイライトして表示

建設業界のデジタル変革が進む中で、BIM の導入が進んでいます。しかし、オペレーターの専門知識の習得に加え、BIM に持たせるべきデータの粒度や工程や企業を跨ったデータ連携の課題など、BIM の活用にはまだ多くの障壁がある状況です。本ソリューションは、生成 AI を利用して自然言語で BIM データ(IFC)にアクセスする機能を持っているため、BIM のソフトウェアライセンスを持たないユーザーや BIM に習熟していないユーザーに対するユースケースを広げることを目的にしています。チャットから「窓の数を教えて」と質問することでオブジェクトの数量を取得したり、「窓の熱貫流率を教えて」と質問することで素材・構造に関係する属性情報を取得したりすることができます。また対象のオブジェクトがビューワー上でハイライトされるため、問い合わせ結果に影響するオブジェクトを直感的に把握することができます。このソリューションを実現する技術的な方法はRAGに該当しますが、寸法や数量に関する情報を正確に取得するために、ナレッジベースにグラフデータベースを利用した GraphRAG を採用しています。IFC ファイルをアップロードするだけでデータベースへの格納まで実行されるので、 GraphRAG の専門知識がなくても始められるのも特徴です。導入に向けた検討や発展的なユースケースの相談については、弊社営業担当もしくは AWS 問い合わせ窓口へお問い合わせください。

実際の画面サンプルやアーキテクチャは以下となります。(画像クリックで大きな画像を表示します)

  1. 実装イメージ。IFC ファイルをグラフデータベースに変換・格納し、生成 AI を通じて自然言語で操作を可能にしています。

    IFC With GraphRAG 説明

    IFC With GraphRAG 説明

  2. 操作例1。オブジェクトを条件指定して簡単に検索したり、オブジェクトの情報を元に自然言語による質問へ回答が可能です。

    IFC With GraphRAG Screenshot-1

    IFC With GraphRAG Screenshot-1

  3. 操作例2。条件を絞らずにシンプルな質問でも回答が可能です。

    IFC With GraphRAG Screenshot-2

    IFC With GraphRAG Screenshot-2

  4. アーキテクチャ図。IFC ファイルの変換は AWS Batch を中心としたバッチ処理で行います。グラフデータベースはマネージドサービスの Amazon Neptune Serverless を利用しています。

    IFC With GraphRAG architecture

    IFC With GraphRAG Architecture

    まとめ

    今回のAWS Summit Japan 2025 建設・不動産向けブース展示では3つのソリューションと、建設不動産における AWS Marketplace のソリューションをご紹介させていただきました。様々な立場のお客様から強い関心とお困りごとについてのディスカッションをさせていただきました。改めて御礼申し上げます。これらの情報はソリューションへの反映等で活用させていただきます。

    本ブログの内容や各展示内容の詳細についてご関心持たれましたら、 弊社営業担当もしくは AWS 問い合わせ窓口へお問い合わせください。

    本ブログは、ソリューションアーキテクト 伊藤が担当しました。