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2023 ソフトバンク株式会社

ソフトバンク、携帯電話サービスのオンラインストア開発体制を再構築。アジャイル + 内製化で改善スピードを高め、顧客満足度の向上へ

通信

概要

ソフトバンク株式会社が展開する多彩な携帯電話サービスにおいて、オンラインストアは大きな役割を担っています。しかし、以前はビジネス部門と IT 部門の連携そしてストアの開発・改善に時間がかかることが課題でした。同社はこの課題を解決するため、アマゾン ウェブ サービス(AWS)のサービスを利用して、ビジネス部門と開発部門が協力して開発する BizDevOps の体制を築きました。内製でサイトの改善を迅速に行う体制を確立し、顧客の満足度向上につなげています。
A person smiling while using a smartphone, representing user interaction and mobile technology for the SoftBank case study.

課題・ソリューション・導入効果

課題

開発スピードの向上に向け、AWS でアジャイル開発の体制づくり

近年、オンラインストアでのサービス体験の質が非常に重要度を増しており、サイトを通じて顧客の期待に応えることが、ビジネスの成功に直結しているといえます。しかし以前のソフトバンクは、携帯電話ブランド『Y!mobile(ワイモバイル)』のオンラインストアの開発体制に課題を抱えていました。組織面ではビジネス部門と IT 部門の連携に時間がかかり、環境面では基幹システムと連携するためオンプレミス環境で開発しなければならないという制約があったためです。

「以前は IT 部門が開発を外部に依頼し、一般ユーザーにリリースするまでに 1 ~ 2 か月、場合によっては 1 年近くかかることがありました。そこで、社内に環境を用意して開発や改善を行い、早期にリリースできるようにしたいと考えました」と語るのは、LINE&Y!mobile 事業推進本部 事業基盤統括部 オンライン推進部 オンラインデベロップメント課 課長代行の菅野晃夫氏です。

このように従来のウォーターフォール型開発の課題を認識していた IT 部門は、2018 年頃にDevOps とアジャイルの観点に基づき、クラウドネイティブをベースとした技術を活用する『アジャイルディベロップメントセンター』という組織を立ち上げました。そこで次期アーキテクチャの策定や技術サポートなどの要請を受けたのが、株式会社豆蔵です。基幹システムとクラウドを API で連携させることで、柔軟かつ迅速な対応が可能になると判断したソフトバンクのエンジニアと豆蔵の担当者は、業界のデファクトスタンダードとして多くの事例や豊富なナレッジ、充実したサポートやセキュリティを評価し、AWS を採用しました。

さらに 2019 年に Y!mobile のオンラインストアのフロントエンドをリプレイスする際にも、アジャイルディベロップメントセンターでの支援実績がある豆蔵に、内製のためのチームビルディングを要請しました。「豆蔵はアジャイルの知識や技術力など、幅広いスキルセットと提案力を持っています。ビジネスの課題に対し、同じ視点で協力してくれる点に価値を感じました」(菅野氏)

ソリューション

チームの自律性とシステムの拡張性を支援するサーバーレスアーキテクチャ

Y!mobile のオンラインストアのチームをサポートするにあたり、豆蔵はユーザーの要望に迅速に対応できるアジャイル体制の強化を目指しました。スクラムマスターやアジャイルコーチとしての役割を担い、組織の自律性と拡張性の向上を促進。さらに、ユーザーへの迅速な成果物の提供と、それによるフィードバックを基に、開発の楽しみや達成感を実感できる環境を AWS 上に構築するサポートも行いました。LINE& Y!mobile 事業推進本部 事業基盤統括部 品質管理部 サービスマネジメント課の老田浩之氏は「急速な変化にも迅速に対応していくため、サーバーレス環境を選択しました。AWS LambdaAmazon API GatewayAWS Step Functions などを使用して環境を構築したことで、サーバーの調達にコストや時間がかかっていたオンプレミス環境での課題は払拭されました」と振り返ります。Y!mobile のオンラインストアは2019 年 11 月にリニューアル。オンラインストアの開発チームは豆蔵からスキルトランスファーを受け、自ら開発を進められる体制を確立していきました。

その後ソフトバンクは、LINE と Z ホールディングスの経営統合を機に 2020 年 12 月にオンライン専用の携帯電話の新ブランドの立ち上げを発表。新ブランド『LINEMO(ラインモ)』誕生に向け、わずか 3 か月あまりで新しくオンラインサービスサイトを立ち上げることになりました。ビジネス側の立場からオンラインストア開発に関わった LINE&Y!mobile 事業推進本部 Y!mobile 事業推進統括部 オンライン企画部 推進課の皆瀬怜氏は「開始時期が決まっているなか、大きな事故を起こさず、ユーザーの皆様がわかりやすい UI を目指しました」と語ります。そうした中、オンラインストアの開発チームは、自らさまざまな決定を下し、迅速に開発を進める体制を構築していきました。「レビューで改善点が見つかったとしても、より良いものにするための変更としてポジティブに話し合いました。所属部署などの立場を超えてより良い成果を目指す話し合い、情報共有の場を設けました。その進め方なども豆蔵の担当者がアドバイスしてくれました。今でもプロジェクトを進める上で欠かせない存在です」(菅野氏)

LINEMO のオンラインサービスサイトは、リリースまでに大きなデザイン変更が 3 回ありましたが、無事に 2021 年 3 月のリリースを迎えます。  

導入効果

顧客満足度調査で 4 冠達成。AWS サービスを活用し、さらなる改善を目指す

LINEMO のオンラインストア関係者たちは 3 か月あまりで DevOps だけでなく、ビジネス部門も巻き込んだ BizDevOps のワンチームとなりました。その後もこの体制をベースに、2022 年度は 1 年間で 1,000 以上のサイト改善を実行。その貢献もあり、LINEMO は J.D. パワー 2022 年携帯電話サービス顧客満足度調査をはじめとする各社の満足度調査ランキングで 1 位になり、4 冠を達成しました。

「LINEMO のサービスサイトの提供開始後に発生した障害はほとんどなく、しかも、オンプレミス環境で開発していた時と比較して、年間のコストも 15 % ほど削減できています」(老田氏)

こうした取り組みは、社内でも注目を集めています。「他のフロントエンドシステムのメンバーとリリースサイクルについて話すと、LINEMO の開発スピードの早さは際立っています。そのため、他の部門からも私たちのやり方、とくにビジネス側と開発側の連携について聞かせてほしいと声がかかります」と皆瀬氏が語るように、BizDevOps の輪は徐々に社内に広がっています。

Y!mobile と LINEMO のウェブサイトの継続的な改善ができる内製体制を構築したソフトバンク。今後は AWS を活用した BCP 対策や、AI を使ったサポートの提供など、さらなる品質向上を目指しています。

「現在開発面で描いている目標は、AI 基盤の構築です。単なるプログラムだけでなく、ユーザーや開発者向けのサービスを作っていきたいです。ユーザー向けにはサポートやサイトの多言語化、開発者向けには AWS CloudFormation のテンプレートの自動生成などを実現したいですね」と菅野氏が将来の構想について語るように、ソフトバンクはさらなる先を見据えています。

SoftBank company logo, black text with two gray equal lines on a white background.
ビジネス部門のメンバーと開発メンバーが連携し、より良い成果を目指す話し合いが常に行われています。その進め方などもパートナーの豆蔵の担当者がアドバイスしてくれました。今でもプロジェクトを進める上での欠かせない存在です

菅野 晃夫 氏

ソフトバンク株式会社 LINE&Y!mobile 事業推進本部 事業基盤統括部 オンライン推進部 オンラインデベロップメント課 課長代行

アーキテクチャ図

Diagram of an AWS architecture showing an end user accessing services through AWS WAF, Amazon CloudFront, and Amazon S3, with backend components including API Gateway, Lambda, DynamoDB, and NAT Gateway within a VPC.

ソフトバンク株式会社

「情報革命で人々を幸せに」というソフトバンクグループの経営理念の下、ライフスタイルやワークスタイルに変革をもたらす、さまざまな通信サービスやソリューションを提供している。スマートフォンを中心とした魅力的なサービスや 5G ネットワークで通信事業を強化するとともに、AI や IoT、ビッグデータなどの活用や、グローバルに事業を展開するグループのテクノロジー企業群とのコラボレーションにより、革新的な新規事業を創出し、さらなる事業成長を目指している。

取組みの成果

  • 約 15 %
    運用コストの削減
  • 3 か月
    新規ブランドサービスサイトの立ち上げ
  • 迅速な開発、改善体制の構築
  • ビジネス/IT チームが一体化した開発体制

本事例のご担当者

菅野 晃夫 氏

Portrait photo of a speaker for the SoftBank case study, featuring an individual in a black jacket and gray shirt, standing in front of a light-colored wall.

老田 浩之 氏

Portrait of a speaker from the SoftBank case study, featuring a man in a gray suit and white shirt, seated in front of a wood panel background.

皆瀬 怜 氏

A portrait of an individual wearing glasses and a white shirt with a navy cardigan, standing in a modern office environment. The image is part of a case study for SoftBank, with a blurred background showing people working at desks.

株式会社豆蔵

AWS セレクトティア サービスパートナー

創業時(1999 年)より、発注者側視点を重視しながら、企業の内製化を強力に推進する技術コンサルティングおよび人材育成サービスを提供している AWS パートナー。同社はオープン指向のエンジニア集団として、AWS を核としたクラウド技術や AI に関する技術コンサルティングサービス(実践的な経験の獲得)と、人材育成サービス(体系的な知識の獲得)とを有機的に連携させつつ、顧客がデジタルシフト力を高め、IT を事業運営の武器にするための内製化支援を提供している。

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