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2023 日本気象株式会社

日本気象株式会社、個人向けの気象予報サービスを AWS上に構築し、サーバーレス構成によりオンプレ比で約 50% のコストを削減

Life Science

概要

気象予測などの気象関連サービスを提供する日本気象株式会社。同社は個人ユーザー向けに提供している自社運営サイト『お天気ナビゲータ』『FRAN(フラン)』をアマゾン ウェブ サービス(AWS)上に構築しています。柔軟にリソースの拡張ができる AWS により、地震や台風時に 10 倍以上の負荷がかかるスパイクアクセスにも耐えるレスポンスを実現。サーバーレス構成により運用負荷を軽減し、オンプレ比で約50% のコスト削減を実現しています。

Map of Tokyo area showing weather information for Setagaya with a sunny icon and temperatures of 22°C and 13°C, alongside blue shaded areas indicating rainfall.

課題・ソリューション・導入効果

課題

オンプレミス環境から AWS への移行

1985 年設立の日本気象は、大阪と東京、海外ではデンマークに拠点を置く社員数約 70 名の民間気象会社です。法人向け事業として、気象データの提供、再生可能エネルギーのマネジメント、AI・需要予測などを、個人向け事業として Web サービスやスマートフォンアプリの提供、気象予報士育成スクールの運営などを展開しています。

個人利用者向けの自社運営サイトには、200 万人以上が利用するお天気総合サイト『お天気ナビゲータ』や、天気予報が外れると償金が当たる天気サイト『FRAN』、専門天気図が見られる『地球気』などがあります。個人向けサイトは、長らくデータセンターのオンプレミス環境で運用してきましたが、サーバー増強などにかかる運用負荷の軽減、インフラの柔軟性の向上、開発スピードの向上などを目的に、2016 年に『お天気ナビゲータ』のサービスプラットフォームを AWS に移行しました。

「AWS は 2012 年にスパイクアクセスの多い津波・地震情報系サーバーで導入した実績があり、そこでの安定運用を評価してお天気ナビゲータでの採用を決めました。技術関連情報が多いこと、技術者の確保が容易なことなども採用の理由です」と語るのは、デジタルイノベーション推進室長の大野佳伸氏です。

その後、オンプレミス環境で運用していた個人向けの各種サービスを AWS 上に順次移行し、データセンターを解約しました。

ソリューション

AWS Amplify を活用して新たな気象予報サービスを 3 か月で開発

既存環境をクラウドに移行した後、AWS 上でゼロから構築したサービスが、2021 年 7 月にリリースした『FRAN』です。

FRAN では、その日に雨が“降る”か“降らない( 降らん)”かの 2 択で予測する“FRAN 予報”が、同社から 1 日 2 回発表されます。ユーザーは「練馬」「世田谷」などベットしたいエリアの天気予報を選択。結果を待ち、ユーザーがベットしたエリアの FRAN 予報が外れると、“お天気スクラッチ”がゲットでき、お天気スクラッチが当たれば償金(電子マネー)獲得となります。

「FRAN は、天気予報が外れてがっかりした経験がある方に、少しでも楽しんでもらいたいと思って企画したサービスです。私たちは 100% を目指して予報をしていますが、外れてしまうことがあります。そのお詫びの意味をこめていることと、天気に興味を持っていただき、自分の身を守る行動につなげて欲しいという思いで開発しました」(大野氏)

FRAN のサイト構築には、工数をかけることなく、短期間で開発したいという狙いから、AWS が提供する Web アプリケーション開発プラットフォームの AWS Amplify を採用しました。AWS Amplifyは、サーバーレスなバックエンドを構築・管理するための CLI ツール、Web アプリケーションを公開するためのコンソール、アプリケーション開発のためのツールなどが提供されるサービスです。採用の理由についてデジタルイノベーション推進室の廣瀬達也氏は次のように語ります。

「Web アプリケーションを開発するために必要なツールがすべて揃っているからです。FRAN では償金を支払うために会員を管理する機能が必要であったことから、Amazon Cognito を使った認証基盤を自動的にプロビジョニングできることがポイントになりました」FRAN の開発期間は、2021 年 4 月から 7 月までの約 3 か月。アーキクチャの設計から構築までを廣瀬氏がほぼ 1 人で担当しました。プラットフォームは、AWS  LambdaAmazon DynamoDBAmazon S3 などのサーバーレスで構成し、集計用の DB には Amazon RDS を採用しています。

「AWS Amplify であれば、コンソールを使うことなく、CLI を使ってコマンドを実行し、対話的に質問に回答するだけで、サーバーレスなバックエンドが構築することができるので、慣れてしまえば開発は簡単です。テスト環境を作りたいといった時も、すぐに構築して試すことができます。結果として、より短時間でリリースすることができました」(廣瀬氏)

バージョン 1 をリリースした後、2022 年 8 月には FRAN 予報をテキストベースの表示から、マップ上にグラフィカルに表示する方式にリッチコンテンツ化し、予報間隔もこれまでの 1 日 1 回から、1 日 2 回にして償金獲得のチャンスを拡大したリニューアル版をリリースしました。

導入効果

台風、地震などで発生する 10 倍以上のスパイクアクセスにも対応

AWS への移行によりインフラの柔軟性は大幅に向上し、スパイクアクセスにも十分に耐えられるようになりました。大雨や台風、地震が発生した際にアクセスが急増する『お天気ナビゲータ』では、自動的にリソースを拡大する AWS Auto Scaling によって通常の 10 倍以上のスパイクアクセスにも対応し、長時間のサービスダウンが発生することもありません。

オンプレミスからクラウドに移行し、FRAN を中心にサーバーレスアーキテクチャを採用したことにより、インフラコストも削減することができました。

「個人向けのサイトでは、データセンターで運用していたオンプレミス環境と比較して、インフラコストを約 50% 削減することができました。クラウドへの移行で運用負荷もなくなり、エンジニアは開発にリソースを集中することができます」(大野氏)

最新の技術を使った開発が可能になったことで、エンジニアの学習意欲も高まり、AWS の資格取得にチャレンジするエンジニアも増えています。

「私の場合、お天気ナビゲータの開発時に AWS 認定ソリューションアーキテクトのアソシエイトを取得し、2022 年秋にはプロフェッショナルを取得しました。AWS を使ってみて感じるメリットは、マネージドサービスの組み合わせ次第で開発の選択肢が拡がること、開発生産性や運用保守性が上がることなどです。ユーザー会などのコミュニティも充実し、事例も豊富で、常に最新情報を追いかけ、ワクワクしながら開発できるのが AWS の魅力です」(廣瀬氏)

今後も主力サービスの『お天気ナビゲータ』と『FRAN』は機能の強化を継続し、より魅力的で使いやすいサービスへと進化させながら、多くのユーザーの獲得を目指していく方針です。また、いずれのサービスもブラウザーだけで利用できる Web サービスとして提供していますが、今後はスマートフォンアプリ版の開発も見据えています。

個人向けサービス以外でも、同社は法人向けの気象データ提供サービスのプラットフォームや、気象予報提供サービスのデータ計算基盤などで AWS のサーバーや HPC サービスなどを利用中で、法人向け、個人向け問わず AWS の活用を積極的に進めていく考えです。

「気象分野において、斬新で楽しいサービスを生み出したいという思いで、日々チャレンジを続けていきます。AWS には、私たちがコアサービスの開発に集中できるよう、より便利なマネージドサービスの提供を期待しています」(大野氏)

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個人向けのサイトでは、データセンターで運用していたオンプレミス環境と比較して、インフラコストを約 50% 削減することができました

大野 佳伸 氏

日本気象株式会社 デジタルイノベーション推進室 室長

アーキテクチャ図

Diagram showing a user interacting with AWS Amplify with Vue, which connects to Amazon Cognito for authentication, AWS AppSync for APIs, AWS Lambda for serverless functions, and databases Amazon RDS and Amazon DynamoDB.

日本気象株式会社

1985 年に日本気象調査株式会社として設立し、気象観測業務を開始。1996 年に気象庁より気象庁予報業務許可第53 号取得を取得し、1997 年に社名を日本気象株式会社に変更。現在、“Earth Communication Provider”として、気象予測、大気環境調査、IT を活用した情報配信、シミュレーションなど多彩な業務をおこなっている。

取組みの成果

  • 約 10 倍
    スパイクアクセスへの対応
  • 3 か月
    新たなWeb サービスの開発期間
  • 約 50%
    AWS によって得られたコスト削減効果
  • インフラ運用負荷の軽減
  • エンジニアの学習意欲の向上

本事例のご担当者

大野 佳伸 氏

A person wearing a white collared shirt against a plain background.

廣瀬 達也 氏

A person wearing a light blue button-up shirt against a plain background.