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2022 株式会社リンクステーション

全国のホールに導入されている票券管理システム『Gettii(ゲッティ)』を AWS に移行。 スパイクアクセスに耐える柔軟なインフラ環境の構築コストを 90% 以上削減し、低価格でサービス提供を可能に

概要

青森県を拠点に日本全国のチケット販売促進をトータルサポートする株式会社リンクステーション。同社はオンプレミス環境で提供していた ASP 型チケット管理システム『Gettii』のプラットフォームを、アマゾン ウェブ サービス(AWS)に移行しました。データベース を Oracle RAC から Amazon Aurora PostgreSQL に移設、社内に AWS 技術者を育成しサービス拡張時にかかる DB の構築コストを 90% 以上削減しました。さらに、スケーラビリティの向上により、急激なアクセス増にも耐えうる柔軟なインフラ環境が実現しています。

A photo of an office building stairwell with a large, colorful directory sign for 'Gettii' mounted on the wall. The sign features a layout map and list of offices, with some plants decorating the stairwell area.

Oracle ライセンスの価格と DB の安定運用が課題に

「私たちを大事にし、未来をつくる」を経営理念に、青森から世界へ展開する IT 企業を目指すリンクステーション。ASP 型チケット管理システム『Gettii』のソフトウェア開発・運営から、プロスポーツチームのファンクラブ運営、青森県ポータルサイトの運営、イベント公演情報登録業務代行、チケット配送業務代行まで、幅広い事業を展開しています。

2005 年 12 月から提供している『Gettii』は、チケット販売管理システムの分野でトップクラスのシェアを誇り、導入社数は 250 以上、クラシック・伝統芸能・プロダクション・スポーツ・劇団など 3,600 以上の団体様に利用されています(2021 年 11 月末現在)。

『Gettii』のプラットフォームは、サービス提供開始以来、オンプレミス環境で運用してきました。しかし、導入社数や利用団体数が増えるに従い、サーバーリソースの調達やスケールの課題が大きくなってきました。
「一番の問題は Oracle ライセンスの価格です。年々コストがかかる状況でした。運用面でも Oracle RAC の安定運用が課題となっていました。加えて、人気チケットの発売日などではアクセスが急増します。この対応を安価に素早く実現する方法が求められていました」と語るのは、技術部 マネージャーの半澤秀宜氏です。

そこで同社は、安定稼働と利用者増に対するスケーラビリティの確保に向けて、『Gettii』のプラットフォームのクラウド化の検討を開始しました。

内製開発とパートナー支援によりオンプレミスから AWS に 5 か月で移行

複数のクラウドサービスを検討した同社は、国内外でのユーザー数の多さから AWS の採用を決定します。
「最大の理由は、システムを構築するうえで、AWS の公式情報以外にも、技術関連の Web サイトや専門書など、情報ソースが多くあることです」(半澤氏)

当初から内製開発を前提としていたものの、検討当時は AWS を使った開発経験があるエンジニアは数名しかいませんでした。そこで、アーキテクチャの設計、初期構築と内製化支援のパートナーとして株式会社ヘプタゴンを採用しました。
「決め手は、PCI-DSS の構築実績があったことです。個人情報を扱う『Gettii』では、PCI-DSS 認証を取得しています。AWS 上で PCI-DSS を構築できるベンダーを探していたところ、ヘプタゴンにたどり着きました。同じ青森県内に拠点があり、オフラインを含めて円滑にコミュニケーションが取れることも後押しになりました」(半澤氏)

AWS への移行プロジェクトは、2020 年 11 月にキックオフ。要件定義や設計などを経て、2021 年 1 月から 3 月にかけて 1 社分の基盤を移行し、2021 年 4 月より稼働を開始しました。2 社目以降は、ヘプタゴンのサポートを受けながら内製開発で基盤を構築しています。2022 年 1 月までに計画していた約 250 社の移行を終える予定です。

システム管理部の佐々木普哉氏は「1 社目は、自社運用しているポータルサイトの『Gettii』のシステムをトライアルとして選び、5 か月間で移行しました。2 社目以降の内製開発では、データ量、他社との連携数、カスタマイズ量、アクティブユーザー数などが少ないご契約者様を抽出し、複数社分の一括移行も試しながら進めました」と語ります。

基盤構築では、運用実績と移行スピードを優先するため、オンプレミスに近いアーキテクチャのまま移行する“リフト”を選択。チケット販売時のトラフィック集中に備えて、スケーラビリティを意識した構成としています。

DB は Oracle RAC に代わり、性能面や運用面等を考慮して Amazon Aurora PostgreSQLを採用。セキュリティ監査対応などを見据えて、アカウントやネットワークの分離を行い、AWS のセキュリティやログ関連のサービスを重点的に実装しました。さらに、今後の導入社数の増加に備えて、インフラの構築 / 管理をコード化し、コードを活用し内製化を始めています。
「コード化については、ヘプタゴンに依頼しました。その結果、インフラの構築・運用が格段に効率化・スピード化されました。ネットワークセキュリティについても、新サービスの AWS Network Firewall を実装していただき、外部への通信制御を強化することができました」(半澤氏)

Amazon Aurora の活用で DB のパフォーマンスが向上

AWS への移行により、『Gettii』のサービス拡張時にかかる DB の構築コストは 90% 以上削減され、運用負荷も軽減されました。
「Oracle RAC の増設にかかっていた設計や環境構築など、外部ベンダーに委託していた SE 費用が不要となり、90% 以上のコストを削減できました。PostgreSQL への移行で DB の運用コストは、従来の 75% 程度まで抑えられています。これまで 1、2 か月かかっていた DB の増設期間も、わずか 1 日に短縮ができ、迅速にサービスを提供することが可能になりました」(半澤氏)

移行した『Gettii』のシステムは、順調に稼働しています。Oracle で遅延が生じていた処理も Amazon Aurora の活用で、パフォーマンスも向上しました。クラウド化でハードウェア故障のリスクもなく、運用担当者の負荷も軽減されています。
「これまで、故障対応に多くの工数を割かれていましたが、今後はそれらもなくなり、Gettii の開発・運用に集中できるようになることを期待しています」(佐々木氏)

サーバーや DB のリソース状況は、Amazon CloudWatch で監視し、アラートに応じて対処しています。システム管理部の鳴海孝氏は「オンプレミスの環境では、さまざまなツールを使って監視し、自らデータを取得してインフラや回線の状況を把握する必要がありました。 Amazon CloudWatch では、ビジュアル化されたダッシュボードを見ながら、インスタンスのリソースやユーザーの接続数などが把握でき、通知される情報を見ながら複合的に判断ができます。結果として、アクセススパイクの状況がわかりやすくなり、今後のサービス拡張時のリソース増強、アーキテクチャの設計などにもプラスになることが期待されます」と語ります。

クラウドネイティブなアーキテクチャへシフト

オンプレミス環境のシステムを、すべて AWS 上に“リフト”した後は、クラウドネイティブなアーキテクチャへと“シフト”し、さらなるパフォーマンス強化と運用負荷の軽減に取り組む計画です。
「具体的には、Amazon Elastic Container Service (Amazon ECS)を用いたコンテナ化や、インメモリーキャッシュの Amazon ElastiCache を用いたパフォーマンス強化、AWS Auto Scaling を用いたスケールアウトの自動化などを検討しています。今回のシステム構築で内製化の支援をいただいたヘプタゴンには、今後も AWS の新しいサービスの情報提供および、サービスの使い方のコツなどをサポートしていただけたらと思います」(半澤氏)

Logo for "Link Station" featuring a blue abstract design and Japanese text below.
Oracle RAC の増設にかかっていた設計や環境構築など、外部ベンダーに委託していた SE 費用が不要となり、90% 以上のコストを削減できました。DB の増設期間もわずか 1 日に短縮ができ、迅速にサービスを提供することが可能になりました

半澤 秀宜 氏

株式会社リンクステーション 技術部 マネージャー

株式会社リンクステーション

  • 設立: 2003 年 5 月 1 日

  • 資本金: 7,000 万円(2019 年 10 月現在)

  • 従業員数: 129 名(2020 年 11 月現在)

  • 事業内容:ソフトウェア開発、ポータルサイト運営事業、ファンクラブ運営事業、イベント公演情報登録業務代行、チケット配送業務代行

AWS 導入後の効果と今後の展開

  • サービス拡張時にかかる DB の構築コストを 90% 以上削減

  • DB の運用コストを従来の 75% 程度まで圧縮

  • 1、2 か月かかっていた DB の増設期間を 1 日に短縮

  • DB のパフォーマンス向上

  • クラウドネイティブなアーキテクチャへのシフトを検討

株式会社ヘプタゴン

AWS アドバンストコンサルティングパートナー

東北では初となる AWS アドバンストコンサルティングパートナーに認定されたクラウド専業のインテグレーター。東北だけで 100 社 200 プロジェクト以上の AWS の導入実績を持ち、特に、中小規模の企業、サービス向けのインテグレーションサービスを得意とし、地方の企業がクラウドのメリットを存分に生かして事業・サービスを展開するための基盤作りをサポートしている。

Heptagon company logo with a rainbow-colored heptagon symbol and the word 'heptagon' in black text.

本事例のご担当者

半澤 秀宜 氏

A portrait photograph of a man wearing a hoodie, standing in front of a wooden background.

佐々木 普哉 氏

A man wearing a white shirt and blue lanyard poses for a portrait in front of a wooden background.

鳴海 孝 氏 

Portrait of a Linkstation employee wearing a plaid shirt and blue lanyard, standing in front of a wooden background.