Crypto.com が AWS で生成 AI を活用して 1 秒で正確な感情分析を実現

Crypto.comは、すべてのウォレットに暗号通貨を導入するという大胆な使命を掲げて2016年に設立されました。同社は、マーチャントや支払いゲートウェイを含む幅広いパートナーネットワークを持ち、ユーザーによる採用を促進することに極めて重点的に取り組むことで、他の取引プラットフォームと一線を画しています。Crypto.comは現在、90か国で約1億人のユーザーにサービスを提供しています。

このような急速な成長と多様な顧客基盤（すべてが進化し競争の激しい業界内）において、 Crypto.comはジェネレーティブ人工知能（AI）を採用して、最適化された顧客体験を迅速に提供してきました。同社の AI ユースケースには、オンボーディングや顧客からの問い合わせに対応する会話型アシスタント、ソーシャルメディアマーケティングキャンペーンを生成するウィザードが含まれます。

生成 AI アプリケーションでは、感情分析とニュースナラティブの分類がますます重要になっています。特に暗号通貨の分野では、投資家は、十分な情報に基づいた意思決定を行うために、適時かつ正確なマーケットインテリジェンスを必要としています。Crypto.comは、ユーザーが暗号通貨と従来のニュースソースの両方からの最新のニュースや情報にアクセスして、会社のインテリジェンスエンジンから洞察を得ることができる市場洞察サービスを提供しています。各サブスクリプションは、ユーザーの取引レベルとウォレット内のコインに合わせてカスタマイズされます。

Crypto.comは、センチメント分析に独自のカスタムモデルに加えて、さまざまな既製の機械学習（ML）モデルを採用しています。しかし、デベロッパーは、オープンソースモデルの制限と、大規模言語モデル (LLM) の自己ホスティングのコストが高いという課題に直面しました。また、特に多言語ニュースサイトを扱う際に、オープンソースモデルによって生成された出力の精度の問題にも直面していました。そこで、 Crypto.comは、暗号市場に関する正確で信頼性の高い、包括的な洞察を提供するために、複数のMLモデル（事前トレーニング済みおよびカスタムの両方）からの出力を統合および合成する、より効果的なソリューションを探しました。

Crypto.comは創業以来アマゾンウェブサービス （AWS）で運営されてきたため、センチメント分析のための新しいLLMを探していたとき、Amazon BedrockのAnthropic Claude 3が論理的な選択でした。 これらの LLM は高度にスケーラブルで、膨大な量のデータをリアルタイムで処理するため、包括的な市場調査が容易になります。当初の結果では、Amazon Bedrock 上の LLM は通常 1 秒以内という非常に迅速な結果を返すことがわかりました。

Amazon Bedrock を統合することで、LLM のセルフホスティングに伴う人間による作業、追加コスト、計算上の制約がなくなりました。1か月も経たないうちに、 Crypto.comはAmazon BedrockにAnthropic Claude 3のハイクモデルを実装してセンチメント分析を行い、25以上の言語で暗号ニュースを収集および分析しました。同社はまた、進行中の概念実証 (POC) と開発でも Amazon Bedrock を活用しています。Crypto.comのAIおよびイノベーションテクノロジーの責任者であるサニー・フォックは、次のように語っています。「Amazon SageMakerやAmazon BedrockなどのAWSサービス上のジェネレーティブAIにより、最新のLLMとAIテクノロジーの採用が合理化されました。今では数週間で、革新的なアイデアを POC からフルスケールの本番にもたらすことができます」。

ドメイン固有の知識がモデル出力に確実に適用されるように、 Crypto.comは独自のデータを使用して、Amazon Elastic Compute Cloud（Amazon EC2）上のMistral AIやMeta Llamaなどのオープンソースモデルを微調整しました。 このアプローチは、新しいコインが市場に登場するときに非常に重要です。なぜなら、既製のモデルでは、期待に沿わない結果になることが多いためです。その後、 Crypto.com は Amazon SageMaker をオンデマンドのエンドツーエンド機械学習開発プラットフォームとして使用して、カスタムモデルを微調整し始めました。

Crypto.com のシニアエンジニアである Raymond Lam 氏は次のように述べています。「Amazon SageMaker には、ユーザーフレンドリーなインターフェイスでモデルを簡単に調整できるツールと API が用意されています。Amazon Bedrockと同様に、必要に応じて機械学習ジョブを実行するだけでよく、カスタムモデリングの管理は、自分で行う場合よりもはるかに簡単です。」

Crypto.comは、マルチエージェントデプロイメントのアイデア生成、POC、および本番フェーズを通じて、AWSから広範なサポートを受けました。「私たちは、さまざまなユースケースにどのツールまたはフレームワークをデプロイするのかについて、何度も話し合いました」と Lam 氏は述べています。「AWS チームは、既存のユースケースを共有し、サンプルコードを提供するとともに、各ステップをデモンストレーションしてくれました。技術的な問題が発生した際には、AWS Solutions Architect がトラブルシューティングをサポートし、提案してくれたため、AWS サービスでの生成 AI へのオンボーディングが迅速化されました」。

Crypto.com では、センチメント分析のためのマルチエージェントによる合意形成ソリューションを AWS に実装することで、正確で包括的かつローカライズされた暗号市場の洞察を世界中のユーザーに効率的に提供できます。Fok 氏は次のように説明しています。「当社は、コインに関する感情 (ブルかベアかなど) に関する最新ニュースを、より即時にユーザーに提供できます。ユーザーはより多くの情報を得ることができ、より計画的な投資を行うことができます」。 また、エンジニアは、Amazon Bedrock での Claude 3 モデルを使用した大規模コンテキストクエリ拡張の精度が改善されたと述べています。

さらに、Amazon Bedrockの導入により、 Crypto.comはインサイト生成を自動化して時間とリソースを節約する拡張性の高いモデルの恩恵を受けています。「API 経由でアクセスできるすぐに使用可能なモデルによって当社の効率化が進んでおり、開発における柔軟性が高まっています」と Lam 氏は述べています。「AWS での生成 AI により、さまざまなユースケースや要件のためのオプションが増えました。そのため、新しいモデルが登場したときに簡単にテストできます」。

Crypto.comは現在、ドキュメント、テーブル、チャートの処理など、Amazon Bedrockでのクロード3モデルの新しいユースケースを模索しています。初期テストでは、市販の ML ドリブンの光学文字認識 (OCR) リーダーと比較して、精度の点で有望な結果が示されました。同社はまた、ソーシャルメディアでの感情のキャプチャなど、新しい生成 AI ユースケースを積極的に開発しています。

顧客は進行中の作業に満足の意を示しており、 Crypto.comはジェネレーティブAIを組織全体に展開する方法をテストし続けることを奨励しています。「当社の生成 AI プロジェクトからのフィードバックは、それが社内からのものか、ユーザーからのものかを問わず、非常にすばらしいものでした」と Fok 氏は述べています。