はじめに
皆さん、こんにちは!カスタマーソリューションマネージャーの青木です。
「AWS でのコスト最適化の進め方」シリーズも第3回となりました。
第 1 回 では Frugal Architect のご紹介および、アプリケーションオーナーによるコスト最適化に役立ちそうな myApplications を紹介し、第 2 回 では AWS Cloud Financial Management (CFM) フレームワーク における「可視化」についてご紹介をしました。
みなさんの活動において、参考となっていますでしょうか。
さて、第 3 回は第 2 回に続いて CFM の 4 つの柱における「最適化」をテーマに紹介をしていきます。
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CFM について
まず、最初に CFM についておさらいをしましょう。CFM には、「可視化」、「最適化」、「計画・予測」、「FinOps の実践」の 4 つの柱があります。

CFM の 4 つの柱
可視化 : アカウント・タグ付け戦略、タグ設定のガバナンスによりクラウドコストの可視化を行う
最適化 : クイックウィン最適化、アーキテクチャ最適化によるワークロードの適正に応じた最適化を行う
計画・予測 : クラウド使用量予測、予算策定といったクラウド利用の計画・予測を行いコスト最適化のトラッキングを行う
FinOps の実践 : CCoE の組成・文化の醸成、持続的最適化のためのプロセスの確立や、IT 部門と財務・ビジネス部門の連携による継続的なコスト最適化を行う
最適化のアクション
CFM のおさらいをしましたが、この CFM を実施するうえで重要なことは「最適化」におけるクイックウィン最適化によって得られる短期的な ”コスト削減” に留まらず、「継続的に活動を行う FinOps の実践」まで組織として取り組み、中長期的に ”コスト最適化” を行っていくことにあります。
つまり、「可視化」、「最適化」、「計画・予測」の 3 つの活動を「FinOps の実践」として継続的に実施することがポイントです。ぜひこの点を意識し、FinOps の実践につなげていただくことをおすすめします。
それでは、「最適化」のアクションとして以下の 2 点を紹介していきます。
短期的に、アーキテクチャを大きく変更せずに効果を得られる「クイックウィン最適化」
中長期的に、クラウドネイティブなアーキテクチャに変革していく「アーキテクチャ最適化」

クイックウィン最適化
クイックウィン最適化では、以下 4 つのアクションを実施します。
アクション |
概要 |
インスタンスの再選定 |
過剰なリソースが割り当てられている場合、適切なインスタンスタイプへ変更する。または、最新世代のインスタンスタイプや AWS Graviton を選択する。 |
未使用リソースの停止 |
AWS Trusted Advisor にて未使用のリソースを特定したり、AWS Cost Explorer にてアイドル状態のインスタンスを特定し、削除する。 |
スケジューリング |
未使用の時間帯におけるリソース停止や、AWS Auto Scaling による需要に応じたリソースの増減。 |
ストレージの再選定 |
各ストレージサービス (Amazon EBS, Amazon FSx, Amazon EFS, Amazon S3) にて、利用用途に合った適切なサービスを選択する。 |
それぞれのアクションにおける詳細な手順については以下の記事を参照し、実践してみてください。
クイックウィン最適化のアクション
また、経営層からのクラウドコスト削減指示への対応として、多くのお客様で思いつく対策は Amazon EC2 の場合であれば リザーブドインスタンス(RI) や Savings Plans(SPs) といった購入オプションの利用ではないでしょうか。この購入オプションの選択も、クイックウィン最適化のアクションの 1 つです。
AWS では、RI や SPs のカバー率を上げていただくための購入プロセスとして、事前にこのクイックウィン最適化の 4 つのアクションを実施し適切なリソースの状態にすることをおすすめしています。この流れに沿って、運用フローの見直しをご検討ください。

スポットインスタンス
もう 1 つ、Amazon EC2 をメインでご利用なされているシステムがある場合では、3 つ目の購入オプションである スポットインスタンス の利用もぜひ合わせてご検討ください。

AWS ベンチマーク調査
2022 年の AWS ベンチマーク調査では、Amazon EC2 や Amazon RDS のカバー率に対し、他の Amazon Redshift、Amazon ElastiCache、Amazon OpenSearch のカバー率が低いという結果が出ています。これは、IT 部門がビジネス部門や特定のプロジェクトで利用されていることを把握できていないことが想定されます。
上記運用フローを進めていただく中で、ぜひビジネス部門の方々とのコミュニケーションを図っていただくことで効果的な結果が得られるでしょう。
ベンチマークに関しては、こちらのブログを参照ください。
AWS Cloud Financial Managementベンチマーク調査 »
AWS リソースのカバー率

(*1) SP/RI カバー率 : インスタンスの総稼働時間に対する SP/RI が適用されている割合
SP/RI 利用率:購入した SP/RI に対して適用されている割合 (どの程度 SP/RI を使い切れているかの程度)
(*2) 適正 EC2 サイズ利用率 : インスタンスの総稼働時間に対する適正なインスタンスサイズの EC2 の稼働時間の割合
(当該分析における適正なインスタンスサイズの定義 : 分析した日から遡って過去 2 週間の利用における CPU の最大利用率が 40% 超のインスタンス)
(*3) Weekend Elasticity : オンデマンドインスタンスにおける平日の稼働時間に対する土日の非稼働時間の割合 (平日に対する土日の稼働抑制の程度)
(*4) gp3 利用率 : 旧世代の EBS gp2 に対する gp3 のデータ容量利用の割合
S3 利用率:EBS に対する S3 標準のデータ容量利用の割合
S3-IA 利用率 : S3 標準に対する S3 標準-低頻度アクセスのデータ容量利用の割合
S3-Glacier 利用率 : S3 標準に対する S3 Glacier Flexible Retrieval のデータ容量利用の割合
Cost Optimization Hub
次に、適切な対象リソースを特定するための機能として Cost Optimization Hub をご紹介します。
もちろん、対象リソースを特定する手段としてAWS Cost Explorer にてコスト分析を実施し対象することも可能ですし、AWS Compute Optimizer や AWS Trusted Advisor による推奨事項を参考にしていただくことも可能です。
この機能は、2023 年 11 月にコスト最適化に関する推奨事項を特定できるダッシュボードとして発表されました。AWS Billing and Cost Management Console から無償で利用することが可能な機能であり、管理者アカウントでは組織すべてのメンバーアカウントをオプトインするオプションも利用することも可能です。注意点としては、機能を有効化してから 24 時間後にデータが参照可能となります。
さらに、これまで推定削減額は各々のツールで推定削減額が計算されていたため単純に足し算することができませんでしたが、この機能では関連するコスト最適化の機会全体の削減額を集計し重複排除して推定削減額を提示します。
開始方法については、こちらのブログ を参照してください。

推奨アクション
このダッシュボードでは、クイックウィン最適化アクションのうち以下のアクションに関する推奨アクションを確認することができます。
停止 |
アイドル状態または未使用リソースを停止し、リソースのコストを最大 100% 節約します。 |
適切なサイズ |
より小さなインスタンスタイプ、ボリューム等に移行します。 |
アップグレード |
EBS io1 から io2への移行等、より新しい世代へ移行します。 |
Gravitonへの移行 |
x86ベースのプロセッサから、AWS GravitonベースのAmazon EC2インスタンスタイプへ移行しコストを節約します。 |
Savings Plansの購入 |
各Savings Plansを購入します。 |
リザーブドインスタンスの購入 |
各リザーブドインスタンスを購入します。 |
アーキテクチャ最適化
アーキテクチャ最適化とは、サーバレスやマネージドサービスをフル活用したアーキテクチャへの移行を行うことであり、モダナイゼーションを実施することにつながります。

モダナイゼーションパス
例として、図のようなモダナイゼーションを行うことにより、クラウドコストの最適化とともにシステムの保守性を向上することができ、運用や管理にかけていた ”ヒトのコスト” も合わせて削減されます。その削減した ”ヒトのコスト” をビジネスロジックに集中させることへ回すことにより、新たなサービスの開発速度を向上することにつながっていきます。

まとめ
第 3 回では、CFM の「最適化」をテーマに短期的に効果を発揮する ”クイックウィン最適化” と中長期的に実践することで効果が表れてくる ”アーキテクチャ最適化” をご紹介しました。これら最適化アクションは、第 2 回でご紹介した「可視化」にて確認できたお客様のご利用状況を基にアクションすることがポイントとなります。
ぜひ、「可視化」から「最適化」へのつながりを実践してみてください。
また、お客様に成功体験を得ていただくプログラム「Exprience-Based Acceleration」(EBA) として、クイックウィン最適化を体験しFinOps 実践の足掛かりにしていただく FinOps Party や、お客様システムのモダナイゼーションを短期集中支援する Modernization Party を提供しています。これらもぜひご活用いただき、「継続的に活動を行う FinOps の実践」まで取り組んでいただければと思います。
最後に、第 4 回では既存サービスの成長によるリソース追加や新たな事業計画による環境の追加を行う「計画・予測」について紹介を行います。FinOps を実践するための 3 つ目の重要なアクションです。引き続き、お楽しみに !
筆者プロフィール
青木 一晃
アマゾン ウェブ サービス ジャパン合同会社
カスタマーソリューションマネージメント統括本部 カスタマーソリューションマネージャー
クラウド推進組織(CCoE)立ち上げ・活動促進支援、クラウド移行プロジェクト推進支援など、お客様の状況に応じたご支援しています。
ラグビーのまち出身ということもあり、ラグビー観戦が趣味。ラガーマンのような体型になりたいが、なかなかなれないことが悩み。

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