IoT 向け無線ネットワークにはどんなものがあるの ? IoT 向け無線ネットワーク技術とAWS アーキテクチャの接続方法を学ぶ
2023-09-01 | Author : 松下 享平 (AWS Community Hero)
はじめに
こんにちは、松下 (ニックネーム : Max) です。
IoT プラットフォームを提供している 株式会社ソラコム で、日夜 IoT の普及に尽力しています。AWS のユーザーグループ「JAWS-UG」では IoT 専門支部 に所属しており、AWS ヒーロー です。
皆さんが「IoT」と聞いて思い浮かべるスマートスピーカーやスマート家電、ウェアラブルデバイス、コネクテッドカーなどは、すべてネットワークを通じてクラウドと繋がっています。ネットワークと言えば、Wi-Fi や LTE/5G が思いつきますが、他にも IoT 向けの無線ネットワーク技術があるのです。今回は、「IoT 向け無線ネットワーク技術」を焦点に、AWS クラウドとのつなげ方をご紹介します。
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IoT で利用できる無線ネットワーク技術
無線ネットワーク技術はユースケースに合わせて選択するのが現状です。この分類には 2 つの軸があります。1 つ目の軸は「通信速度と消費電力」です。2 つ目は「通信距離」です。
IoT センサーが扱うデータは数キロバイト程度で、高速大容量は不要なことが多いのです。それよりも IoT では省電力性が重視されます。電力消費が小さければ、バッテリーを小さくして製品を小型化したり、動作時間を長くできたりと、価値の高い製品が作れます。小型スマートウォッチ等に BLE が採用される理由の 1 つです。
長距離でも省電力が可能なカテゴリーがあります。それが「LPWA - 省電力長距離無線通信」(図 1 の右下) です。Low Power Wide Area-network (LPWAN とも略される) の頭文字が由来です。具体的な技術名としては、LTE を省電力化した LTE-M (LTE Cat.M1) や NB-IoT (LTE Cat. NB1)、他には LoRaWAN や Sigfox があります。
LPWA は、すでに商用利用されています。株式会社 MIXI の見守りサービス「みてねみまもりGPS」では LTE-M によって、充電頻度を 1 ヵ月〜 2 ヵ月というレベル で実現しています。Sigfox は、ニチガスの愛称でも知られる日本瓦斯株式会社のスマート検針器「スペース蛍」における 10 年間の自律稼働 を支えています。
様々な技術を紹介しました。選定はユースケースと特性から見極めるのが王道ではありますが、基準の 1 つには「使ってみたことがある」というのも無視できない要素です。そこでここからは、それぞれの通信技術を利用するために必要なものや、AWS クラウドとつなげる方法について解説していきます。

IoT 向け無線ネットワークで AWS クラウドにつなげるために必要なもの
Wi-Fi、セルラー、LoRaWAN、Sigfox の 4 つを取り上げます。これらは商用でも利用され、開発環境が入手しやすいためです。
受け入れ側 AWS サービスから見る、アーキテクチャの違い
ここまでで、IoT デバイスから AWS クラウドまでの通信を紹介してきました。では、AWS クラウド側ではどのように受けたら良いのでしょうか ? 最後は、プロトコルから紐解く AWS サービスの違いとアーキテクチャをご紹介します。
IoT においては、HTTPS や MQTTS がよく用いられます。そこで、これらを受け付けられる AWS サービスを考えると、Amazon API Gateway もしくは AWS IoT Core になるでしょう。また、IoT デバイス上で AWS SDK を用いたプログラミングが可能であれば、各 AWS サービスへ直接アクセスも可能です。
ここまでの情報を、図にまとめました。
特に IoT には、AWS IoT Core を使用した並列型アーキテクチャ (Fanout パターン) をおすすめします。

変化に強い「Fanout パターン」
Fanout パターンとは、一つの入力を複数の出力へ展開する構成の事で、図にすると扇のようになります。こちらのブログ では、Amazon Simple Notification Service (SNS) を利用した Fanout パターンが紹介されていますが、AWS IoT Core は「ルールアクション」を利用することで、同様の構成をコードを書かずに構築できます。
例えば最初は Amazon Simple Storage Service(S3) へ保存する「ルール A」でスタートしたところ、高速な取り出し要求が発生したため、Amazon DynamoDB へ保存する「ルール B」を追加できます。ポイントなのは、ルール Aへの影響をゼロにしつつルール Bを始められる事です。今後も例えば AI/ML の活用としてルール C を作ったり、また効果が見込めなかったので当該ルールを停止するといったことも容易です。
このような背景から、AWS IoT Core を IoT データの受け口サービスとして活用いただければと思います。このあたりの具体的な挙動や IoT Core の操作は、AWS Dev Day 2022 Japan の私のセッション「AWSとラズパイで「作らずに創る」IoT のハジメ」(19 分ごろ)で紹介しているので、併せてご覧ください。

IoT にはネットワークが不可欠 !
事例で紹介した株式会社 MIXI のようにクラウド寄りの企業が、自社サービス拡大のためにハードウェアへチャレンジする例が増えており、IoT は Web と同様に不可避な技術になると私は考えています。
昨今では、小型マイコン「Arduino UNO」の最新版 “R4” に Wi-Fi 搭載モデル が出たり、また、USB 型のセルラーモデム や Sigfox モジュール も入手しやすい状況です。LoRaWAN もハードウェアカタログ があり、利用のハードルが下がっていると言えるでしょう。ネットワークは重要ではありますが、実は容易に体験できるものである事を感じていただければ、嬉しく思います。
今回の記事が、皆さんの IoT の学びや興味の一歩になれば幸いです。
筆者プロフィール
松下 享平 (まつした こうへい)
株式会社ソラコム テクノロジー・エバンジェリスト / AWS Community Hero
IoT の活用事例やデモを通じて、IoT を世に広める講演や執筆を行う。登壇回数は延べ 500 以上、共著に『IoT エンジニア養成読本』(技術評論社) 等。1978 年生まれ、静岡育ち。座右の銘は「論よりコード」。JAWS-UG IoT 専門支部所属、AWS ヒーロー (2020 年受賞)

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