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要件定義・開発・チームワーク──学生たちの挑戦が実を結ぶ! 大学生向けプログラミング学習コミュニティ「POSSE」決勝レポート

大学生向けのプログラミング学習コミュニティ「POSSE」では、実践的な開発スキルやチームワークの向上を目指して、独自のカリキュラムを提供しています。

【参考記事】大学の 4 年間で、即戦力レベルのデジタル人材に。AWS も支援する“人が育つ”コミュニティ「POSSE」

その中でもチーム開発は、1 年生・2 年生の学びの集大成となる取り組みです。2 月から約 2 カ月にわたりプロダクトの要件定義・設計・開発をし、4 月には成果を発表。3 年生は後輩を支援する立場でこのカリキュラムに関わります。この記事では、2025 年 4 月 13 日に開催された決勝戦の模様をお届けします。

開会式

決勝戦当日は、多くの「POSSE」関係者や新入生・新入生候補者、企業の審査員が会場に集まりました。「POSSE」運営メンバーによる開会式の挨拶では、「このような素晴らしい舞台に参加できることを嬉しく思います」との言葉が述べられ、来場者への感謝の気持ちが伝えられました。加えて、「POSSE」は大学生活において「熱中できる経験」を得られる場であることが強調されました。

さらに、「この日がみなさんにとって忘れられない経験になることを願っています」と語り、参加者全員に向けてイベントを楽しんでほしいというメッセージが届けられました。

概要説明

ここからは「POSSE」運営メンバーによる概要説明です。チーム開発は、2 週間の要件定義期間、5 週間の実装期間、1 週間のプレゼン準備期間というスケジュールで進められます。初期段階では一切コードを書かず、プロダクトの方向性をチーム内で深く議論。その後、要件をブラッシュアップしながら、システムとプレゼンを仕上げていきます。学年ごとに、1 年生(初級)は 3 チーム、2 年生(中級)は 4 チームが決勝に進みます。

決勝戦では、企業を代表して参加した審査員が「一番発注したいチーム」という観点で審査を行い、最優秀賞を決定します。参加学生には企業からのフィードバックも提供され、今後の学びに活かされます。先輩であるスピーカーは自身の過去の経験を交えながら、悔しさや葛藤も含めて、成長に繋がる学びの場であることを力強く語り、決勝進出チームへエールを送りました。

初級チームによる発表

まずは、初級の 3 チームが発表を行いました。初級のプロダクト開発のお題は、「サークルの困りごと・悩みごとを、他のサークルの得意分野で解決する仕組みを考える。それによって、サークル同士の交流を促進し、個人やコミュニティの成長機会を広げること」です。初級とは思えない完成度と熱量が、会場を大いに沸かせました。

「毘沙門天」チーム

「毘沙門天」チームは、大学生向けクラウドソーシングサービス「taks」を提案しました。発表では、若年層のクラウドソーシング活用率の低さや、大学間・サークル間の交流機会の不足という課題を提示。多くの大学生にサービスを使ってもらうため、「就活の不安」を「クラウドソーシング × ガクチカ」で解決する方向性を選びました。また、メンバーの特性を活かした分業体制にしたことも、チームとしての動き方の特徴でした。

「Avocode」チーム

「Avocode」チームは、大学生の「やってみたい」「手伝いたい」という感情を起点に、サークル間での協力関係を促進するサービス「AvoColLab」を提案しました。既存のクラウドソーシングが持つ「依頼関係の一方通行さ」を解消するため、互いに支え合う「協力関係」をサービス思想の核としました。また、今後の段階的な拡張戦略も提示しました。「大学生だからこそ生み出せる価値」を信じ、固定観念にとらわれないコラボレーションを追求する姿勢が際立っていました。

「わんぱくパンパカパンケーキ」チーム

「わんぱくパンパカパンケーキ」チームは、クラウドソーシングの若年層での認知度や利用率の低さに着目し、大学サークル間のマッチングサービス「CQ(Circle Quest)」を開発しました。特に、クリエイティブ系サークルの仕事を他の学生が受託できる仕組みとし、「クラウドソーシング=ワクワクするもの」として浸透させる狙いがあります。チームとして、ユーザー目線を取り入れながら企画・改善を重ねた点が印象的でした。

中級チームによる発表

次に、中級の 4 チームが発表を行いました。中級のプロダクト開発のお題は「企業の現場にいる管理職が自ら組織状態を把握し、改善施策を立案・実行できるようにサポートするサービスを作ること」です。課題設定の的確さや、実行可能性を意識したプロダクト設計が各チームで際立っていました。

「Polaris」チーム

「Polaris」チームは企業の離職率を改善するため、可視化・施策立案・施策実行の 3 ステップを軸に、改善の継続性と現場負担の最小化を両立するサービス「Polaris」を提案しました。生成 AI の活用や、施策効果を循環させる評価サイクルの設計も工夫されていました。一時はチーム内で意見の対立が続き、雰囲気が悪化する局面もあったそうですが、「顧客視点」を軸に再び団結。メンバー全員でサービスとチームを磨き続けた姿勢が印象的でした。

「ガンマ線バースト」チーム

「ガンマ線バースト」チームは、管理職が組織課題を正しく把握・改善できない現状に着目し、課題の特定から施策実行までを支援するサービス「Coret」を提案しました。可視化精度の向上と継続的な改善サイクルの確立をテーマに、AI による根本原因の推定機能や、スコア変動に基づく施策立案支援を実装しました。チームは密度の高い議論を通じて、短期間で要件定義を磨き上げたとのこと。課題に対する解像度の高さが光りました。

「NEON」チーム

「NEON」チームは、離職理由の“本音”にたどり着けず、組織改善に踏み切れない管理職の課題に着目し、Web コンサル型アプリ「ConPath」を提案しました。組織改善が未経験でも「課題を認識し、迷わず進められる」ように、診断テンプレートや AI による提案支援を行っています。チームでは、週 2 回の振り返りを通じて課題を洗い出し、進捗の透明性や役割分担を改善。プロダクトとチームの両方に向き合う姿勢が印象的でした。

「get mild」チーム

「get mild」チームは、組織状況の可視化と実行支援を兼ね備えたサービス「Kompass」を提案しました。5 段階評価や AI メンター機能により課題の定量化と実行支援を行い、「考えることがストレスになっている管理職」を後押しします。チームとしては当初「お互いに遠慮をして、何も言い合えない」状態からスタートしましたが、納得のいく意思決定を重ね、やがて“妥協なきチーム”として成長を遂げたプロセスが印象的でした。

閉会式(優秀賞の発表)

各チームによる発表の後は、いよいよ表彰です。初級では、2 位に「毘沙門天」チーム、1 位に「Avocode」チームが選ばれました。「Avocode」チームのメンバーは、「多くの人に支えられてここまで来ることができた」と感謝の言葉を述べました。

「Avocode」チーム(右側の 4 名)

審査員からは、今回の決勝戦全体について「どのチームも提案内容、プレゼンテーションともに素晴らしく、非常に悩んだ」との講評がありました。その上で、「Avocode」チームは、単なるプロダクト開発にとどまらず、使う人の体験を意識した設計や、学生同士の交流を促す仕組みづくりにまで踏み込んでいた点が高く評価されました。

中級チームの表彰では、2 位に「get mild」チーム、1 位に「ガンマ線バースト」チームが選ばれました。「ガンマ線バースト」チームのメンバーは、「チームで互いに支え合い、時には思い切って作り直す決断を重ねながら、納得できる成果にたどり着けた」と振り返りました。

「ガンマ線バースト」チーム(左側の 5 名)

審査員からは、「最も企業の課題を解決できそうな提案であり、特に課題分析の完成度が高かった」と講評。そして、全チームに共通して、仲間を信じて最後まで走り抜けたチームワークの素晴らしさが印象的だったと語られました。

相澤 恵奏

また、「POSSE」の活動支援を行う AWS からは、相澤 恵奏が総評をさせていただきました。Amazon の社是である「Still Day1(まだ始まったばかり)」について触れ、「みなさんの今後のチャレンジを応援しています」とエールを送りました。

基調講演

内閣官房長官 林 芳正 氏

イベント最終盤には、特別ゲストとして来場されていた内閣官房長官 林 芳正 氏の基調講演が行われました。林 氏は「POSSE」の目指す教育のあり方が、国が掲げる「Society 5.0 に向けた学校 ver.3.0」と深く共鳴していると語り、活動への期待を寄せました。

講演では、これからの社会で重要になるのは、AI に代替できないリーダーシップ、協調性、未知の課題に立ち向かう力であると力説しました。「POSSE」での経験はまさにそれらを育む場であり、今後の日本社会にとって欠かせない人材像と重なると述べました。

また、これからの時代に求められる力を育むためには、まず小・中学校段階での言語力や数学的思考力といった基礎学力が欠かせないと言及。さらに今後は、これらに加えてコーディングスキルも基礎力として重要になると述べ、早期からの土台づくりの必要性を強調しました。

今後は、優れたものを作るだけでなく、それを社会に伝え、価値を高めていく力がますます求められます。「POSSE」での実践は、単なるスキル習得にとどまらず、社会変革を担う力を育んでいると評価し、日本の競争力向上にも大きく寄与するはずだと力強くエールを送りました。

おわりに

今回の決勝戦では、初級・中級それぞれのテーマに対して、学生たちが真摯に向き合い、多彩なアプローチで課題解決に挑む姿が印象的でした。どのチームも、壁にぶつかりながらも改善を続け、最後まで走り抜けることでたくさんの学びを得ていました。「POSSE」で得た経験と仲間は、今後のキャリアにおいても大きな支えとなるはずです。

【関連リンク】

大学生向けプログラミング学習コミュニティ「POSSE」 公式サイト

株式会社アンチパターン コーポレートサイト