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SIOS LifeKeeper と Amazon FSx for NetApp ONTAP を活用したミッションクリティカルシステム向けの高可用性ソリューション

本記事は、サイオステクノロジー株式会社 BC & CS サービスライン エグゼクティブマネージャー 西下容史氏とネットアップ合同会社 AWS SE Support 部 シニアクラウドソシューションアーキテクト 藤原善基氏、およびアマゾン ウェブ サービス ジャパン合同会社 パートナー技術統括本部 テクノロジーソリューション本部 本部長／パートナーソリューションアーキテクト 河原哲也による共著です。

はじめに

クラウド環境におけるミッションクリティカルなシステムの構築において、高可用性とデータの整合性の確保は重要な課題です。

サイオステクノロジー株式会社は、AWS ISV Accelerate プログラムに参加する AWS ソフトウェアパートナーであり、HA クラスター製品の SIOS LifeKeeper が AWS ファンデーショナルテクニカルレビュー (FTR) の認定を受けています。また、AWS Marketplace 販売者です。LifeKeeper により、Amazon Elastic Compute Cloud (Amazon EC2) 上で稼働する Oracle、SQL Server などのデータベースや、JP1、HULFT、SAP、SVF などの基幹業務アプリケーションの障害を検知し、待機系へ自動でフェイルオーバーする高可用性ソリューションを提供します。

NetApp, Inc. は、保護、セキュリティ、分類、可観測性のためのクラウドストレージとデータサービスを提供する AWS ソフトウェアパートナーです。ストレージコンピテンシーを始め、コンテナ、セキュリティ、移行とモダナイゼーションなどの AWS コンピテンシープログラムを多数取得しており、技術的な専門知識と実績があります。

本記事では、SIOS LifeKeeper と Amazon FSx for NetApp ONTAP を組み合わせることで、これらの課題を解決し、信頼性の高いシステム構築を実現する方法をご紹介します。

Amazon FSx for NetApp ONTAP の概要と特徴

Amazon FSx for NetApp ONTAP (FSx for ONTAP) は、NetApp の人気のある ONTAP ファイルシステム上に構築された、信頼性とパフォーマンスが高く、スケーラブルで機能が豊富なファイルストレージを提供するフルマネージドサービスです。ONTAP は、広く採用されているデータアクセスおよびデータ管理機能のセットを提供する NetApp のストレージ OS です。オンプレミスで使い慣れた ONTAP の機能や API の操作性をそのままに、AWS の俊敏性、拡張性、運用の簡素化を実現します。以下が主な特徴です。

  • パフォーマンスとスケーラビリティ: FSx for ONTAP は、ファイルシステムあたり数百万 IOPS を超える高性能を提供し、ストレージ容量をペタバイト単位でスケールできます。これにより、大規模なデータ集約型アプリケーションにも対応可能です。
  • データ管理と保護機能: スナップショット、クローニング、データレプリケーション、暗号化などの高度なデータ管理と保護機能を提供します。これにより、安全なデータのバックアップ、リカバリ、および災害対策が容易になります。
  • ハイブリッドワークロード対応: オンプレミスの NetApp ONTAP 環境とシームレスに連携でき、ハイブリッドクラウドアーキテクチャを簡単に実現します。これにより、オンプレミスとクラウド間でのデータ移行や同期がスムーズになります。

詳しくは、「Amazon FSx for NetApp ONTAP の特徴」をご覧ください。

Amazon FSx for NetApp ONTAP の主な活用シーン

Amazon FSx for NetApp ONTAP は、IT および基幹業務アプリケーション、データベース (SAP HANA、Oracle Database、Microsoft SQL Server など)、ホームディレクトリ、ビッグデータと分析、Electronic Design Automation (EDA)、メディア処理など、Linux、Windows、macOS の幅広いワークロードとアプリケーションをサポートするように設計されています。例えば、以下のような活用シーンがあります。

  • エンタープライズファイルシステムの移行: 既存のオンプレミスの NetApp ONTAP 環境をクラウドに移行することで、既存のデータ管理ポリシーやワークフローを変更することなく、クラウドの拡張性や柔軟性を活用できます。
  • 高性能コンピューティング (HPC): 大規模な計算リソースを必要とする科学技術計算やシミュレーションに最適です。FSx for ONTAP は、高い IOPS とスループットを提供し、HPC ワークロードに必要な高速データアクセスを実現します。
  • 仮想デスクトップインフラストラクチャ (VDI): リモートワークや分散チーム向けの仮想デスクトップ環境の構築に利用されます。スナップショットやクローン機能を利用して迅速に仮想デスクトップをプロビジョニングできます。
  • AI/ML ワークロード: 大量のデータを処理する AI/ML モデルのトレーニングや推論に適しています。高スループットと低レイテンシーのストレージを提供し、AI/ML ワークロードの効率を最大化します。

Amazon EC2 における HA クラスターの必要性

AWS 環境でシステムを構築する場合、まずは Amazon Relational Database Service (Amazon RDS) などのマネージドサービスを検討することが一般的です。しかし、要件によっては Amazon EC2 上でシステムを構築する必要があります。例えば、AWS のマネージドサービスとして提供されていないソフトウェアを使う場合などが該当します。

AWS の責任共有モデルでは、Amazon EC2 環境において OS より上位のレイヤーは利用者の責任となります。そのため、利用者側で適切な障害対策を講じる必要があります。

障害対策には、予算や要件に応じて様々な方法が考えられます。特に、基幹業務で使用されるミッションクリティカルなシステムにおいては、HA クラスターによる冗長化構成が、コストと機能面でバランスの取れた最適な選択肢となります。

SIOS LifeKeeper の概要と実績

サイオステクノロジー株式会社が開発・販売する LifeKeeper は、オンプレミス環境において 25 年以上の歴史と 8 万ライセンス以上の導入実績を持つ製品です。特に AWS 環境においては、Amazon EC2 での利用が日本国内で 600 件を超える豊富な実績があります。

LifeKeeper は、「ハートビートによる Amazon EC2 インスタンスの障害検知」と「制御スクリプトによるソフトウェアの障害検知」を並行して実施します。制御スクリプトは個別に作成することもできますが、JP1/AJS3、HULFT、Oracle、SAP といったミッションクリティカルな領域でよく使われるソフトウェア向けのオプション製品を用意しています。これにより、Web ベースの GUI 上で容易に HA クラスターを構築することができます。

製品の標準機能として、アベイラビリティゾーン(AZ) をまたいだクラスターを構築できます。このクラスターへのアクセスは、仮想 IP 経由で行います (図 1)。

図 1. 仮想 IP とルートテーブルの書き換えによる制御

詳しくは、サイオステクノロジーの Web サイト「AWS での高可用性を HA クラスターで実現する方法」をご参照ください。

HA クラスターでは、クラスターノードが Active 状態から Standby 状態に切り替わるため、ノード間でのデータの共有が不可欠です。クラウド環境でこのデータ共有を実現するには、SIOS DataKeeper を利用して Amazon EC2 に接続されたストレージ領域のリアルタイム同期を行う方法が一般的でした。DataKeeper ではローカルディスク間をブロックレベルでリアルタイムに同期することで、論理的な共有ストレージ環境を実現しています (図 2)。

図 2. SIOS DataKeeper のイメージ

SIOS LifeKeeper と Amazon FSx for NetApp ONTAP の組み合わせによる高可用性構成

近年、クラウド環境において、共有ストレージを活用したクラスターノード間のデータ共有へのニーズが高まっています。例えば、AWS のマネージドなストレージサービスを利用することで、ユーザーはリアルタイム同期の実装や運用を行う必要がなくなります。また、オンプレミスで NAS を共有ストレージとして利用した HA クラスターの構成と運用を、クラウド環境でも踏襲したいというニーズもあります。

このようなニーズに対する最適なソリューションが Amazon FSx for NetApp ONTAP です。FSx for ONTAP マルチ AZ ファイルシステムは、同じ AWS リージョン内の AZ 間で耐障害性が必要なワークロードのためのシンプルなストレージソリューションを提供します。LifeKeeper は FSx for ONTAP をサポートしており、マルチ AZ の Amazon EC2 上でオンプレミス環境と同等の共有ストレージ構成による HA クラスターを実現できます。以下は連携イメージです。Linux 環境では iSCSI と NFS をサポートしています (図 3)。 Windows 環境では iSCSI をサポートしています (図 4)。

図 3. LifeKeeper と FSx for ONTAP の連携イメージ (Linux の場合)

図 4. LifeKeeper と FSx for ONTAP の連携イメージ (Windows の場合)

詳しくは、「クラスターノード間のデータ共有に共有ディスクサービスを使う構成」をご参照ください。

本組み合わせによるユースケースと効果の例

ユースケース 1 – 仮想デスクトップインフラストラクチャ (VDI)

リモートワークや分散チーム向けの VDI 環境を構築し、安定した業務環境を提供します。

  • FSx for ONTAP の役割:
    • スナップショットやクローン機能による迅速な仮想デスクトップのプロビジョニング
    • 高速なデータアクセスとスケーラビリティによるユーザー体験の向上
  • LifeKeeper との連携効果:
    • VDI 環境の高可用性確保と自動フェイルオーバーによる業務継続性の実現
    • クラスターノード間でのデータ一貫性と高速アクセスの実現

ユースケース 2 – AI/ML ワークロード

大規模なデータ処理を必要とする AI/ML モデルのトレーニングや推論を効率的に実行します。

  • FSx for ONTAP の役割:
    • 高スループットと低レイテンシーのストレージによる AI/ML ワークロードの効率最大化
    • スナップショット機能を活用したモデルの効率的なバージョン管理とデータ保護
  • LifeKeeper との連携効果:
    • AI/ML システムの高可用性確保と自動フェイルオーバーによるダウンタイムの最小化
    • クラスターノード間でのデータ一貫性と高速アクセスの実現

ユースケース 3 – エンタープライズファイルシステムの移行

既存のオンプレミス NetApp ONTAP 環境から AWS クラウドへ円滑に移行します。

  • FSx for ONTAP の役割:
    • 既存のデータ管理ポリシーやワークフローを維持したまま AWS の拡張性や柔軟性を活用
    • 高い互換性による既存の管理ツールの継続利用と容易なデータ移行
  • LifeKeeper との連携効果:
    • 移行後のシステムの高可用性確保と自動フェイルオーバーによるダウンタイムの最小化
    • クラスターノード間でのデータ一貫性と運用効率の向上

まとめ

Amazon FSx for NetApp ONTAP は、AWS 環境において高性能かつスケーラブルなストレージソリューションを提供しています。その優れた性能と信頼性により、VDI 環境から AI/ML ワークロード、さらにはエンタープライズシステムの移行まで、幅広いユースケースに対応できます。

SIOS LifeKeeper は、Amazon EC2 上で稼働する重要なシステムの障害対策を実現する HA クラスター製品として、25 年以上にわたる実績と 600 件以上の AWS 環境での導入実績を持ち、高い信頼性を証明しています。

この FSx for ONTAP と SIOS LifeKeeper を組み合わせることで、マネージドなストレージサービスの特徴を活かしながらクラスターノード間のデータ共有を可能にし、システム全体の高可用性を実現します。特にミッションクリティカルなシステムに最適なソリューションとなり、ビジネスの継続性を確保できます。

参考情報

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サイオステクノロジー – AWS パートナースポットライト

サイオステクノロジーは、Amazon EC2 上で利用される SAP などの基幹業務アプリケーションやデータベースの高可用性を実現する HA クラスター製品「LifeKeeper」と「DataKeeper」を提供する、AWS ソフトウェアパートナーおよび AWS Marketplace 販売者です。

サイオステクノロジーの問い合わせ先 | パートナーの概要

ネットアップ – AWS パートナースポットライト

ネットアップは、保護、セキュリティ、分類、可観測性のためのクラウドストレージとデータサービスを提供する AWS ソフトウェアパートナーです。ストレージやセキュリティ、コンテナ、移行とモダナイゼーションなどの各種 AWS コンピテンシープログラムを取得しています。

ネットアップの問い合わせ先 | パートナーの概要

Tetsuya Kawahara

Tetsuya Kawahara

Senior Manager, Technology Partner Solutions Architecture, Japan Partner Management, Amazon Web Services Japan G.K.