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週刊生成AI with AWS – 2025/7/28 週

みなさん、こんにちは。AWS ソリューションアーキテクトの野間です。8月に入り、生成AI分野の進化がますます加速する日々が続いています。特に気になっているのは、AWSが本番環境での安全かつ柔軟なエージェント運用を実現する Amazon Bedrock AgentCore や、従来難しかった大規模ベクトルデータの長期保存( S3 )とリアルタイム検索( OpenSearch )を低コストで両立する Amazon S3 Vectors × OpenSearch Service の連携強化、AWS のAIエージェントSDK「Strands Agents」などです。生成AI活用に不可欠な基盤技術や開発環境の進化も続き、国内外のユーザーやパートナーによる導入事例もどんどん増えてきており2025年後半も「責任あるAI」「安心して使える生成AI」の実現に向けて、AWSがどのような取り組みや進化を続けているのか。生成AIの最新トレンドを、今号でもぜひキャッチアップしてください。
では今週も生成 AI with AWS界隈のニュースを見ていきましょう!

さまざまなニュース

  • ブログ記事「AWS サーバレスサービスで実現するラーメン山岡家のキッチンオペレーション効率化」
    株式会社丸千代山岡家様が AWS Summit Japan 2025 での展示内容をもとに、従来の厨房タイマー装置が抱えていた視認性の問題や熟練職人への依存といった課題を、AWS Fargate 、 Amazon ElastiCache Serverless 、Amazon Bedrock などのサーバレスサービスを活用してどのように解決したかを詳しく解説しています。記事では、導入によりスタッフのスキル習得期間が 500 日から 350 日に短縮され、提供時間も平均 30 秒削減されるなど、具体的な成果を示しながら、外食産業におけるデジタルトランスフォーメーションの実践例として紹介しました。さらに、Amazon Bedrock を活用した生成AI による調理順序の最適化など、より高度な機能の開発も進められています。
  • ブログ記事「SDV (ソフトウェア定義車両)向け AUTOSAR 開発を Amazon Q Developer で加速」
    このブログでは、Amazon Q Developer が AUTOSAR (AUTomotive Open System ARchitecture: 車載ソフトウェア開発の国際標準規格) 開発をどのように効率化できるかについて説明しています。SDV (ソフトウェア定義車両) 向けの開発において、Amazon Q Developer を開発者のコーディング作業を支援する強力なAIツールとして紹介しています。具体的には、LED制御やCANメッセージ送信などの一般的な車載ソフトウェア開発のユースケースで、コードの自動生成やユニットテストの作成を効率化できます。開発者の報告によると、初期開発が25%速くなり、生産性が最大40%向上したとのことです。
  • ブログ記事「株式会社 BTM 様の AWS 生成 AI 活用事例:Amazon Bedrock と Strands Agents を活用したシステム調査の自動化により、調査時間を大幅短縮し運用業務の効率化を実現」
    株式会社BTM様が Amazon Bedrock とオープンソース AI エージェント SDK である Strands Agents を活用してシステム調査を自動化し、業務効率を大幅に改善した事例を紹介します。複数システムの管理における調査業務や関係者間のコミュニケーションに課題を抱えていたBTM様は、生成AIと MCP(Model Context Protocol)を組み合わせたAIエージェントシステムを構築しました。このシステムでは、Slackをユーザーインターフェースとして活用し、Amazon Bedrock の Claude 4.0 Sonnet を基盤モデルとして採用し、その結果、従来半日かかっていたシステム調査時間を最短10分に短縮し、PMのトラブルシュート工数を95%削減することに成功しました。さらに、開発工数も90%削減するなど、業務効率化を実現しています。
  • ブログ記事「[開催報告]AWS Summit Japan 2025 生成AIエージェントハッカソン」
    6月25日~26日に開催された AWS Summit Japan 2025 において「使いたおして『○○』を実現するAIエージェント爆誕祭」をテーマに、AIエージェントを徹底的に活用することで人間固有の価値や目的を明確にすることを目指したハッカソンが開催されました。全国から14チームが予選に参加し、最終的に6チームが決勝に進出しました。ほぼ全てのチームが開発に Coding Agent を活用し、短期間にも関わらず商用レベルの完成度の高いソリューションを実現していました。最優秀賞を受賞したWhiteBoxお酒同好会の「KanpAI」をはじめ、各チームが Bedrock、Lambda、Connect、RDS 等のAWSサービスを効果的に組み合わせた実装を行い、AIエージェント時代の新しい可能性を示しました。このハッカソンは、AIが開発を支援する「AIがAIを作る」時代の到来を明確に示す重要なイベントとなりました。

サービスアップデート

  • Amazon Bedrock Data AutomationがDOC/DOCXとH.265ファイルをサポート
    Amazon Bedrock Data Automation (BDA) の機能が大幅に拡張され、DOC/DOCXファイルとH.265形式の動画ファイルの処理に対応するようになりました。これまではWordファイルを処理する際、一旦PDFに変換する必要がありましたが、DOC/DOCX対応により直接処理が可能となり、テキスト抽出や分析のワークフローが効率化されます。また、高圧縮・高画質なH.265形式の動画ファイルへの対応により、より効率的な動画分析が実現可能になりました。これらの新機能は、フランクフルト、ロンドン、アイルランド、ムンバイ、シドニー、米国西部(オレゴン)、米国東部(バージニア北部)の7つのリージョンで利用できます。
  • Amazon Bedrock が米国西部 (北カリフォルニア) リージョンで利用可能に
    Amazon Bedrock が、米国西部 (北カリフォルニア) リージョンで利用可能となりました。Amazon Bedrockは、1つのAPIで主要なAI企業が提供する高性能な大規模言語モデルなどを利用できる、フルマネージドサービスです。セキュリティ、プライバシー保護、責任あるAIの概念が組み込まれており、生成AIアプリケーション開発に必要な機能を幅広く提供します。
  • Fractional GPU搭載のAmazon EC2 G6fインスタンスが一般提供開始
    NVIDIA L4 Tensor Core GPUを採用した新しいGPUインスタンス「G6f」を発表しました。最大の特徴は、GPU partitioning によりGPUリソースを8分の1単位で細かく分割して利用できる点です。これにより、フルGPUの性能が不要で余分な費用が発生していた機械学習やグラフィックス処理において、必要な分だけのリソースを確保でき、コストを最適化できます。北米、ヨーロッパ、アジアパシフィックなど、東京を含めた主要なリージョンで利用可能となっています。
  • Amazon Q Developer CLIがカスタムエージェントを発表
    Amazon Q Developer CLIに新たにカスタムエージェント機能が追加されました。この機能により、コードレビューやトラブルシューティングなどの特定のタスクに特化したCLIエージェントをカスタマイズすることが可能になりました。開発者は設定ファイルを通じて、エージェントが使用できるツールやプロンプト、必要なコンテキストを定義できます。さらに、ファイルシステムへのアクセス権限の細かな制御や、静的・動的なコンテキストの指定も可能です。このカスタムエージェントはプロジェクト固有で設定でき、チームメンバー間で共有することも、個人の開発タスク全般で使用することも可能です。
  • Amazon Q Developerが多言語対応を拡大
    Amazon Q Developerの言語対応を大幅に拡充しました。AWS マネジメントコンソール、AWS Console モバイルアプリ、さらにTeamsやSlackといった主要なチャットツールで、フランス語、ドイツ語、イタリア語、日本語、韓国語、中国語、スペイン語、ポルトガル語など、多数の言語に対応するようになりました。使い方は簡単で、ユーザーが希望する言語で Q Developer に問い合わせるだけでシステムが自動的に使用言語を認識し、同じ言語で応答します。

今週は以上です。それでは、また来週お会いしましょう!

著者について

Aiichiro Noma

野間 愛一郎 (Aiichiro Noma)

AWS Japan のソリューションアーキテクトとして、製造業のお客様を中心に日々クラウド活用の技術支援を行なっています。データベースやデータ分析など、データを扱う領域が好きです。最近、麻辣醤にハマっています。