Amazon Web Services ブログ
週刊生成AI with AWS – 2025/7/7 週
みなさん、こんにちは。AWS ソリューションアーキテクトの野間です。6月25日、26日に開催された AWS Summit 2025 に参加された方も多いのではないでしょうか?私も2日間ブースに立たせていただき、たくさんの学びと刺激を得ることができました。この場を借りて、お忙しい中ご参加頂いた皆様と運営に関わられた皆様に感謝申し上げます。
さて、最近生成AI関連の自己学習リソースが本当に充実してきました。特に注目なのが、先日リリースされた AWS Builder Center! これまでの community.aws が進化する形でローンチされた、新しい学習ポータルです。技術スキルの向上をサポートしてくれるプラットフォームとして生まれ変わり、AIやML、コンテナ、サーバーレスなど、興味のある技術分野に応じた学習パスの提供や hands-on まで無料で利用できます。この後ご紹介する AWS SimuLearn と合わせて、AWS の学習環境が進化していますので是非チェックしてみてください。
では今週も生成 AI with AWS 界隈のニュースを見ていきましょう!
さまざまなニュース
- ブログ記事「通信事業者が提供するSmart-Xのための協調AIエージェントによる分散推論」
このブログでは、デバイスエッジからAWSクラウドまでの多層アーキテクチャにおいて、AIの推論処理を効率的に分散させる新しいアプローチについて解説しています。具体例として交差点安全システムを取り上げ、カメラやセンサーからのリアルタイムデータを用いた事故予防や対応の仕組みを説明しています。ファーエッジ(デバイス)でリアルタイムの推論処理、ニアエッジ(通信事業者のMECサイト)で複数デバイスからのデータ集約と高度な推論、そしてAWS上で全体的なオーケストレーションと分析を行います。このアプローチにより、低遅延での即時対応と、AWS上での高度な分析の両立が可能になります。リアルタイム性が求められるエッジでの処理と、高度な分析が必要なクラウドでの処理を最適に組み合わせることで、より効率的で信頼性の高いSmart-Xソリューションを構築できる点がポイントです。 - ブログ記事「スタートアップ 3 社に学ぶ生成 AI 実装のリアル。AWS 活用の最前線【AWS Summit Japan・事例セッション】」
AWS Summit Japan 2025 で紹介された、生成AIを活用する3つのスタートアップ企業の事例を紹介しています。LayerX社は、Amazon Bedrock を活用して経理業務の効率化を実現し、独自のAI-OCRシステムと大規模言語モデルを組み合わせることで、高精度な帳票処理を可能にしました。カラクリ社は、AWS Trainium を活用して独自のLLMを開発し、カスタマーサポート業務に特化した高性能なAIエージェントを低コストで実現しています。ファインディ社は、Amazon Security Lake を導入してセキュリティログを一元管理し、Amazon Bedrock と連携させることで、セキュリティ監視業務の効率化に成功しました。それぞれ生成AIを活用する事で企業固有の課題を解決し、業務効率を大きく改善した事例になります。 - ブログ記事「AWS SimuLearn: Generative AI – 「生成AI」を無料で学習しましょう!」
AWS SimuLearn は、生成AIを活用した新しい学習プラットフォームです。現在、生成AIとクラウドの基礎に関する無料の日本語対応コースを提供しています。現在、生成 AI 関連の 8 コースとクラウドの基礎 12 コースを無料で利用することができます。実際のAWSアカウントを使用した実践的なハンズオン学習が、料金を気にすることなく実施できる環境が整備されていることがポイントです。
サービスアップデート
- Amazon CloudWatch と Application Signals の AI 支援トラブルシューティング用 MCP サーバー
AIによる自動化されたトラブルシューティングと監視を強化する2つの新しいModel Context Protocol (MCP) サーバーを発表しました。これにより、AIエージェントが、より高度な分析と問題解決をサポートできるようになります。CloudWatch MCPサーバーはアラームベースのインシデント対応やメトリクス分析を提供し、Application Signals MCPサーバーはSLOを通じたサービスヘルスモニタリングと自動化された根本原因分析を実現します。ポイントは、自然言語でのクエリを通じてテレメトリーデータからビジネスインサイトを生成できること、そしてAIアシスタントが組み込みのアプリケーションパフォーマンスモニタリングの知識を活用して実用的な解決策を提案できることです。これらのツールにより、開発者は複数のAWSコンソールやAPIを手動で操作する必要がなくなり、より効率的なトラブルシューティングが可能になります。 - Amazon Neptune AnalyticsがGenAIアプリケーション向けにMem0との統合を開始
Amazon Neptune Analytics がオープンソースのGenAI向けメモリシステムであるMem0との統合を発表しました。この統合により、AIエージェントがグラフデータベースを長期記憶機能として活用できるようになり、よりパーソナライズされたAI体験の提供が可能になります。Neptune をメモリストアとして使用することで、LLMは各インタラクションから学習し、時間とともにより効果的な応答が可能になります。グラフ、ベクター、キーワードの複数のモダリティにわたるハイブリッド検索もサポートされており、マルチホップグラフ推論による応答品質の向上も実現します。 - Amazon Bedrockが開発を効率化するAPIキーを導入
Amazon Bedrock に新しくAPIキー認証機能が追加され、生成AIアプリケーションの開発がより簡単になりました。従来はIAMのプリンシパルとポリシーの手動設定が必要でしたが、Amazon Bedrock コンソールやaws SDKから直接認証情報を生成できるようになります。開発者は短期(最大12時間)または長期のAPIキーを選択でき、長期キーは有効期限の設定やIAMのコンソールでの管理が可能です。 - Amazon SageMaker AIがAWSアジアパシフィック(台北)リージョンで利用可能に
機械学習の開発をサポートするAmazon SageMaker AI が、2025年6月に新しくオープンしたアジアパシフィック(台北)リージョンでの提供を開始しました。Amazon SageMaker AI は、開発者やデータサイエンティストが機械学習モデルを効率的に構築、トレーニング、デプロイできる完全マネージド型プラットフォームで、機械学習プロセスの各ステップにおける煩雑な作業を軽減し、高品質なモデル開発を容易にします。 - Amazon Q in QuickSightが7つの新しいリージョンで利用可能になりました
Amazon Q in QuickSight のサービス提供地域が大幅に拡大され、東京を含むアジア太平洋、ヨーロッパ、米国の7つの新しいリージョンで利用可能になりました。このサービスは、自然言語を使ってデータから洞察を引き出し、ビジネス分析を加速させる機能を提供します。ユーザーはAmazon Q in QuickSight を使用することで、データの説明やレコメンデーションを含むドキュメントやエグゼクティブサマリーを生成できます。 - Amazon Q Developer のチャット機能が AWS Management Console を介してサービスのデータを照会可能に
Amazon Q Developer の機能が拡張され、AWS Management Console、Slack、Microsoft Teams、AWS Console Mobile Applicationから直接AWSサービスのデータを照会・分析できるようになりました。例えば、S3バケットに保存されたログや、DynamoDBのレコード、CloudWatchログなどを自然言語で対話しながら分析できます。複数のインターフェースを行き来したり、異なるソースから情報を手動で収集したりする必要がなくなるため、クラウド環境の管理やトラブルシューティングにかかる時間と労力を大幅に削減できます。この機能は追加設定なしですぐに利用可能です。 - Amazon SageMaker HyperPodが新しいオブザーバビリティー機能を発表
Amazon SageMaker HyperPod に新しいオブザーバビリティー機能が追加され、生成AIモデルの開発プロセスを大幅に効率化できるようになりました。Amazon Managed Grafana と Amazon Managed Prometheus を活用した統合ダッシュボードにより、生成AIタスクのパフォーマンスメトリクス、リソース使用率、クラスターの健全性を一元的に監視できます。これにより、パフォーマンスボトルネックの特定やトラブルシューティングの時間が大幅に短縮されます。 - フルマネージド型MLflow 3.0がAmazon SageMaker AIで利用可能に
Amazon SageMaker が提供するフルマネージド型MLflow 3.0は、生成AIの開発プロセスを大幅に効率化する新機能です。実験の追跡から本番環境までのエンドツーエンドのオブザーバビリティーを提供し、開発者は単一のツールで実験の追跡やモデル・AIアプリケーションのパフォーマンス監視が可能になりました。特に生成AIアプリケーションの各ステップにおける入力、出力、メタデータを記録するトレース機能は予期せぬ動作や不具合の原因特定を迅速化できます。また、各モデルとアプリケーションバージョンの記録を維持することで、AIの応答をソースコンポーネントまで追跡できるため、トラブルシューティングの時間を大幅に削減することができます。 - Amazon SageMaker HyperPodがAIワークフロー用のCLIとSDKを一般提供開始
Amazon SageMaker HyperPod のCLIとSDKが一般提供開始されました。CLIはHyperPodクラスターの管理と迅速な実験のための一貫した操作性を提供し、SDKは分散トレーニングと推論機能へのプログラムによるアクセスを可能にします。データサイエンティストやMLエンジニアは、簡単なコマンドでトレーニングジョブの起動、推論エンドポイントのデプロイ、クラスターのパフォーマンス監視が可能になり、システムログや可観測性ダッシュボードへのアクセスによってデバッグや開発の効率化が図れます。
今週は以上です。それでは、また来週お会いしましょう!