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【開催報告 & 資料公開】SaaS ビジネス成功の鍵 – メトリクス設計からつなげるデータドリブンな SaaS 組織への転換

こんにちは!AWS ISV/SaaS ソリューションアーキテクトをしているさばみそです。

2025 年 7 月 17 日に「SaaS ビジネス成功の鍵 – メトリクス設計からつなげるデータドリブンな SaaS 組織への転換」と題したイベントを AWS Startup Loft Tokyo で開催いたしました。

Software as a Service (SaaS) モデルでのビジネスが従来のパッケージ販売のモデルと比べて大きく異なる点は、ストック型で売上が積み上がり続けるという点です。この特性から、契約を獲得してからできるだけ長く使ってもらえるか、つまり LTV(Life Time Value、顧客生涯価値)をできるだけ高めることが重要です。「売ってからが始まり」であり、利用者がプロダクトから得られる価値を継続して提供する必要があります。

では、「利用者がプロダクトから得られる価値」を利用者が正しく得られているかを、どの様に判別/計測すれば良いでしょうか? その際に必要となってくるのが、プロダクトにおけるメトリクス設計です。
本イベントでは、パッケージビジネスから SaaS ビジネスへの移行が加速する中、多くの企業が直面している SaaS プロダクトにおけるメトリクス設計と活用の課題に焦点を当て、実践的な知見を共有させていただきました。

イベント概要

近年、多くの企業様がパッケージビジネスからSaaSビジネスへと移行する中で、適切なメトリクス設計の重要性が増しています。本セミナーでは、以下のような課題に対する解決策を、実践的な内容とともにご紹介させていただきました。

  • SaaS ビジネス特有のメトリクスの理解
  • リカーリングビジネスの健全性測定
  • データを活用したプロダクト戦略の立案
  • チーム間でのKPI認識の統一

セッション紹介

ゲストセッション 小城 久美子 様:プロダクト戦略の成果を測る NSM とは? その必要性と策定方法

[資料]

「プロダクトマネジメントのすべて」の共著者である小城久美子様より、プロダクト戦略の成果を効果的に測定する NSM(North Star Metric)について具体的な策定方法と重要なポイントが紹介されました。NSM の選定には、ビジョンや顧客価値、事業収益との連動性、AARRR(Pirate Metrics)との整合性、測定可能性など、5つの重要な基準があることを解説いただきました。特に注目すべきは、NSM の作成ステップが「価値の言語化」「価値提案の道筋整理」「NSM の選定」という 3 つの明確なフローで示されており、実践的なアプローチを学ぶことができる点です。プロダクトマネージャーやビジネス戦略担当者にとって、成果指標の設定に悩む課題を解決するヒントが詰まった、実務で即活用できる内容となっています。

お客様事例 株式会社ExaMD 牛越 洵也 様 : メトリクスで価値を可視化する データ駆動プロダクト開発の実践

[資料]

株式会社ExaMD 牛越様より、株式会社ExaMD が取り組む、データ駆動型のプロダクト開発アプローチについて、具体的な事例とともに紹介いただきました。医療分野における多彩なプロダクト展開を基に、データ分析基盤の構築からメトリクス設計、そして実際に得られた成果まで、体系的に解説されています。特に、医療という専門性の高い領域でいかにデータを活用し、プロダクトの価値を可視化していくのか、その実践的なノウハウが詰まっています。医療×テクノロジーの最前線で、データドリブンな意思決定がどのように行われ、どのような成果を生み出しているのか、プロダクト開発に携わる方必見の内容となっています。

NSM – KPI ツリー作成ワークショップ体験版

AWS 福本より、SaaS ビジネスの成功に不可欠なメトリクス設計を 1.5 時間で実践的に学べるワークショップを実施しました。エレベータピッチの作成から始まり、インプットメトリクスの洗い出し、因果関係の発見と NSM(North Star Metric)の探索、そして KPI ツリーの作成まで、段階的に理解を深められる構成となっています。特に、ユーザー価値を起点としたメトリクス設計のアプローチをとることによって、利用者がプロダクトから得られる価値と向き合うことができます。

パートナーセッション 株式会社アンチパターン ⽮ヶ崎 哲宏 様:SaaS メトリクスの取得と分析⼿法

[資料]

株式会社アンチパターン 矢ヶ崎様より、SaaS ビジネスにおける効果的なメトリクス収集と分析手法を包括的に解説をしていただきました。特に SaaS アプリケーションプレーンとコントロールプレーンにおける多様なデータポイント(行動履歴、API ログ、アクティビティログなど)の活用方法について具体的にお話しいただきました。顧客の利用状況を「幅(Breadth)」「深さ(Depth)」「頻度(Frequency)」「効率(Efficiency)」という複数の観点から分析し、データレイクから BI ツールまでの一貫した分析基盤の構築方法も紹介されています。さらに、生成 AI と MCP サーバーを組み合わせた最新の分析手法まで網羅されており、SaaS ビジネスの成長に不可欠なデータ活用の取り組みについても学んでいただける内容となっております

パートナーセッション 株式会社primeNumber 坂本 竜輝 様:データカンパニーが実践する SaaS ビジネスを加速させるデータ分析

[資料]

株式会社primeNumber 坂本様より、「あらゆるデータをビジネスの力に変える」をミッションとする primeNumber が実践する、最新のデータ分析アプローチを紹介いただきました。従来の課題であったデータ出力の遅延や探索的分析の困難さを解消し、データエンジニアからビジネスリーダーまで、多様なユーザーが効果的にデータを活用できる次世代の分析基盤について解説いただいております。特に、自動スケーリングが可能でセルフサービス型の分析環境の構築方法や、運用効率の向上からイノベーション加速まで、実践的なユースケースを交えた内容となっています。

AWS で実現するデータドリブン型組織

[資料]

最後に、AWS 安達より、AWS サービスを活用した SaaS メトリクスの収集・分析基盤の構築方法と、データドリブン型組織への転換に向けたベストプラクティスを紹介させていただきました。セッションの中では、従来の手作業による CSV 分析からクラウド BI を活用した自動化された最新のデータ分析基盤への進化についても解説しました。また、AWS を活用したモダンデータアーキテクチャの実現方法や、データ推進チームの発足、チャンピオン制度の導入など、組織文化の転換に向けた具体的なステップについても紹介しました。

まとめ

本セミナーでは、SaaS ビジネスにおけるメトリクス設計の重要性から具体的な実装方法まで、包括的な内容をお届けしました。また、AWS では本イベントのような支援だけでなく、AWS SaaS 支援プログラム を通じて、日本の SaaS ビジネスのさらなる成長のための様々な支援も行っており、こちらからご応募いただけます。
皆様の SaaS ビジネスの成功に向けて、本セミナーの内容が少しでもお役に立てば幸いです。

このブログの著者

安達 翔平 (さばみそ)
アマゾン ウェブ サービス ジャパン合同会社
ISV/SaaS ソリューションアーキテクト
Web 系の自社サービス、請負開発を経験後、ISV/SaaS 領域のお客様をメインにアーキテクトしてます。
趣味は、サウナ、ロックフェス、スノーボードです。ホームサウナは、ニューウィング錦糸町です。