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Amazon Q のコスト最適化
AWS の生成 AI コスト最適化に関する全 5 回構成シリーズ の 4 回目のブログでは、前回までの議論を踏まえて AWS の生成 AI を活用したアシスタントである Amazon Q の価値を最大化することに焦点を当てます。以前の記事では、Amazon EC2 と SageMaker AI による AI モデル構築のコスト最適化と Amazon Bedrock で基盤モデルを使用する際のコスト最適化について説明しましたが、今回は Amazon Q を利用する際のコスト最適化戦略を探ります。適切な料金プランの選択、戦略的ユーザー管理の実装から、コンテンツのインデックス作成の最適化やコスト予測可能性の向上まで、機能性とコスト効率のバランスを取るのに役立つ実践的なアプローチを紹介します。生成 AI を活用したアシスタントとして Amazon Q Business を使用する場合でも、開発者の生産性を高めるために Amazon Q Developer を使用する場合でも、これらのベストプラクティスは、Q の利用について情報に基づいた意思決定を行うのに役立ちます。
Amazon Q を理解する: Business と Developer
Amazon Q Business は、情報の検索、コンテンツの生成、およびタスクの自動化を支援するように設計された AI 搭載アシスタントです。利点として、迅速な対応による生産性の向上、コンテキストを踏まえた回答、安全なデータアクセスによる意思決定の強化やビジネスツールとのシームレスな統合などがあります。生成 AI のニーズに応えて Amazon Q Business を採用するケースが増えるにつれ、投資収益率(ROI)を最大化するには、コスト最適化戦略を理解することが重要になります。
Amazon Q Developer は、リアルタイムのコード提案システムと自動タスク実行を通じてソフトウェア開発を促進し、生産性の向上と開発期間の短縮を実現しています。このツールにより、開発ライフサイクル全体にわたる迅速なオンボーディング、コード品質の向上やセキュリティ統合が可能になります。Amazon Q Developer は、あらゆる規模のビジネスに対応できるようにユーザー単位の価格を設定しており、JetBrains、VS Code、Visual Studio や Eclipse などの IDE と統合できます。Amazon Q Developer について言えば、先日、私たちはコスト最適化の機会を見つけるのに役立つ魅力的な新しいコスト最適化推奨機能を発表しました。この機能は、自然言語での会話を通じ、インスタンスのライトサイジング、Savings Plans やリザーブドインスタンスの購入やアイドル状態のリソースの終了などのコスト最適化の機会を見つけるのに役立ちます。これは、コードの作成中にリソースの使用を最適化し、コストを最適化するための効率的な方法となります。

図 1. Amazon Q によるコスト最適化分析
それでは、メイントピックである Amazon Q のコストを最適化するための実践的なヒントに戻りましょう。
料金プランの選択
始めに決めることは、適切な料金プランを選択することです。Amazon Q Business には、Amazon Q Business Lite と Amazon Q Business Pro の 2 つの料金プランがあります。Amazon Q Business の料金をご覧ください。ビジネス要件に合わせてプランを慎重に選択することで、最大 85% のコスト削減を実現できます。Amazon Q Business Lite の料金は、ユーザー 1 人につき 1 か月あたり $3 です。安全なデータアクセスや権限に応じた応答などの基本機能を提供します。応答の最大サイズは 1 ページまでとなります。(訳注:1 ページのサイズはドキュメント参照)Amazon Q Business Pro は、ユーザー 1 人につき 1 か月あたり $20 です。すべての Amazon Q Business Lite 機能に加えて、Amazon Q Apps、コンテンツ作成ツールや最大 7 ページの長い応答が含まれます。Amazon Q Business Pro のユーザーは、Q in QuickSight (Reader Pro) を使用して構造化データに関するインサイトを得たり、一般的なサードパーティアプリ用のカスタムプラグインやマネージドプラグインを使用したり、画像ベースの応答を受け取ったりすることもできます。

Amazon Q Business 料金プランの変更
Amazon Q Developer にも、Amazon Q Developer 無料利用枠と Amazon Q Developer Pro の 2 つの料金プランがあります。Amazon Q Developer の料金をご覧ください。無料利用枠では、Amazon Q Developer を簡単に使い始めることができます。無料利用枠には、コードの提案、CLI の補完、CLI の統合がありますが、 高度な機能への 1 ヶ月あたりのアクセスが制限されています。Amazon Q Developer Pro は 1 か月あたり $19 で、無料利用枠のすべての機能に加えて、エンタープライズアクセス制御、コードベースのカスタマイズやクエリ作成、コード変換などの高度な機能に対する制限の緩和が含まれます。
料金プランの決定は、より高い料金プランを無条件で選択するのではなく、ユースケースとユーザーニーズを分析して決定する必要があります。これにより、ユーザーが実際に利用する機能に見合った料金プランとなるためコスト効率を維持できます。
戦略的ユーザー管理
Amazon Q Business と Amazon Q Developer のユーザーアクセスを管理することは、コストの最適化と業務の効率化にとって非常に重要です。これは、サービスの料金がユーザーごとに設定されているためです。厳格なユーザー管理手法を導入することで、その機能を本当に必要とするユーザーだけがアクセスできるようにし、非アクティブなユーザーやたまにしか使用しないユーザーによる不必要なライセンスコストを防ぐことができます。ユーザーアカウントを定期的に監査し、離職したユーザーのアクセス権を削除し、使用パターンが最小限であるユーザーにはライセンスの必要性を再評価する必要があります。さらに、ユーザーを役割とニーズに基づいて適切な権限階層とグループに分割することで、データアクセスをより適切に制御し、セキュリティコンプライアンスを維持し、リソースの浪費を防ぐことができます。ユーザー管理に対するこの戦略的なアプローチは、ユーザーのコストを削減するだけでなく、サービスの使用状況をより適切に監視するのにも役立ちます。
コンテンツインデックスの最適化
Amazon Q Business は、データソースの接続による検索拡張生成(RAG)をサポートしています。Amazon Q Business データソースの接続を参照してください。インデックス作成プロセスは単位時間ごとの料金設定で、1 つのアベイラビリティーゾーンのスターターインデックスを作成するか、3 つのアベイラビリティーゾーンにまたがってエンタープライズインデックスを作成できます。インデックス作成の時間と頻度を最小限に抑えることは、インデックス作成コストにプラスの影響を与えます。インデックス費用の例については、Amazon Q Business の料金ページの「価格設定の例」セクションの例 3 から 5 を参照してください。インデックス作成コストを管理するうえで重要な 2 つの手段は、「同期モード」と「同期実行スケジュール」です。
同期モードには 2 つのオプションがあります。「Full sync」 を選択すると、Amazon Q は以前の同期ステータスに関係なく、すべてのコンテンツを同期してインデックスを作成します。「New, modified, or deleted content sync」を選択すると、Amazon Q は新規、変更、削除されたコンテンツのみを同期します。データを段階的に追加または変更する場合は、コストを最小限に抑えるために 「New, modified, or deleted content sync」 を選択する必要があります。データソースに大きな変更を加える必要がある場合は、「Full sync」 を選択して同期を 1 回実行するとよいでしょう。その後、「New, modified, or deleted content sync」に戻す必要があります。
「「Sync run schedule」では、インデックス作成の頻度を設定できます。選択できる項目は、時間単位、日単位、週単位、月単位、またはカスタム(cron 式)です。接続されているデータソースが更新される頻度と、ソリューションに必要なデータのインデックス作成頻度に基づいて、インデックス作成頻度を最適化する必要があります。この設定の実行頻度が高すぎると、予期しないコストが発生する可能性があります。
結論
Amazon Q Business と Amazon Q Developer の最大の利点の 1 つは、予測可能なコスト構造です。コアビジネスの目標に焦点を当てながら、経費を正確に予測できます。この予測可能性とフルマネージド型のサービスを組み合わせることで、インフラストラクチャの管理を気にすることなく価値の提供に集中できます。
ここまで、料金プランの選択、ユーザー管理やコンテンツインデックスの最適化を通じて、Amazon Q Business と Amazon Q Developer のコストを最適化するための主な要素について説明してきました。次回のブログでは、AI ソリューションと連動するサービス (ストレージ、ベクトルデータベース、データ転送やレポート) のコスト最適化戦略について説明します。費用対効果が高くスケーラブルな AI アプリケーションを構築するための重要なインサイトをお見逃しなく。
翻訳はテクニカルアカウントマネージャーの加須屋 悠己が担当しました。原文はこちらです。