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【開催報告】自治体事業者向け AWS ガバメントクラウドワークショップ 2025 in 東京

こんにちは。ソリューションアーキテクトの松本侑也です。普段はパブリックセクター技術統括本部で自治体のお客様の技術支援を担当しています。

2025 年 6 月 17 日に「自治体事業者向け AWS ガバメントクラウドワークショップ 2025 in 東京」を開催しました。このイベントは、ガバメントクラウドへの標準化対象業務システムの移行を進める上で必要となる技術について深く学び (Dive Deep)、実践的なワークショップを通じて技術スキルを高め、さらに参加者同士の交流 (Have Fun) を目的として開催されました。本ブログでは、イベント内容を簡単にご紹介しつつ、当日のセッションやワークショップの様子を共有いたします。

また、同日に中央省庁向けガバメントクラウドワークショップ、夜には Gov-JAWS 第2回 も開催され、約 140 人が参加する大規模なイベントになりました。

イベント概要

「AWS ガバメントクラウドワークショップ 2025」を以下のような形で実施しました。

  • 日時: 2025 年 6 月 17 日 (火) 13:00-18:30 (懇親会 + Gov JAWS: 18:30-21:00)
  • 場所: アマゾン ウェブ サービス ジャパン合同会社 目黒オフィス
  • 参加対象: 運用管理補助者、ASP、自治体向けパッケージ開発者の方々、自治体

前半:事例セッション

まず前半では、実際の導入事例に基づいた2つのセッションを実施しました。

  • 生成 AI によるガバメントクラウド運用管理補助業務の効率化 – ネットワーク運用管理補助における生成 AI の具体的な活用例
  • 標準準拠システムのモダナイズとコスト最適化 – 健康管理システムのクラウド移行とアーキテクチャ刷新の実例

後半:テーマ別ワークショップ

後半は、参加者が以下の4つのワークショップから自身の関心や課題に合わせて選択できる形式を採用しました。

ワークショップ名 主な内容
耐障害性・可用性設計ワークショップ 障害耐性評価と復旧プロセスの体験
ガバメントクラウド IaC、CI/CD ワークショップ マルチアカウント環境での CDK デプロイ自動化
⽣成 AI による開発・運用効率化ワークショップ 生成 AI による業務効率化と開発支援の実践
セキュリティインシデント疑似体験 GameDay セキュリティインシデント対応と調査手法

事例セッションで得た知識をどう実践するのか、具体的に学ぶことができる構成となっていました。

事例セッション – ハイライト

生成 AI によるガバメントクラウド運用管理補助業務の効率化

株式会社大崎コンピュータエンヂニアリング 久保田 亨 氏より、自治体向け標準 20 業務システムを展開する中での生成 AI 活用事例をご紹介いただきました。ガバメントクラウドにおけるネットワーク運用管理補助業務を、生成 AI でどのように効率化したかについて、具体的な実装事例をお話しいただきました。

特に印象的だったのは、セキュリティアラート分析の自動化や複雑なログ解析を生成 AI により効率化した事例です。また、生成 AI を導入する際の地方自治体との調整内容など、実務的な知見も共有いただきました。参加者からは「具体的な適用シナリオがイメージしやすくなった」という声が聞かれました。

詳細については、以下のブログ記事もご参照ください。

【寄稿】生成 AI 活用によるガバメントクラウド環境運用管理補助業務の効率化 | Amazon Web Services ブログ

標準準拠システムのモダナイズとコスト最適化

日本コンピューター株式会社 嶋田 忠相 氏より、標準化業務である健康管理システム「WEL-MOTHER」のモダナイゼーション事例についてご講演いただきました。クラウド移行による具体的なメリットとして、コスト改善や AWS CDK を用いたインフラ構築作業の効率化について詳しくご説明いただきました。

実際のアーキテクチャ図を用いた説明は、参加者にとって非常に参考になったようです。特に、従来のオンプレミスシステムからクラウドへの移行における考慮点や、ガバメントクラウドならではの要件対応について、具体的な手法が示されました。

テーマ別ワークショップ

耐障害性・可用性設計ワークショップ

このワークショップでは、AWS における障害への備え方やサービス継続性の考え方を学びました。座学では「レジリエンス (障害への耐性) 」の基本的な考え方や、コストとのバランス、障害時に備えた設計パターン (バックアップ・ウォームスタンバイ・マルチサイト構成など) を体系的に整理しました。

また、演習パートでは 各自に割り当てられた AWS アカウントの中で AWS Fault Injection Service を使用してアプリケーションに対して疑似的な障害を発生させ、リアルタイムで対応するという緊張感のあるシナリオを体験しました。復旧手順や設定の確認を通して、「設計段階からどう備えておくべきか」を身をもって体感できる内容でした。

ガバメントクラウド IaC、CI/CD ワークショップ

本ワークショップでは、Infrastructure as Code (IaC)や CI/CD を活用した、AWS のガバメントクラウド環境における開発・運用の効率化について学びました。ハンズオンでは、AWS Code サービス群AWS CDK を用いた実践的な環境構築をするハンズオンを行いました。

特に、ガバメントクラウドなどで採用が進む構成を題材に、インフラとアプリケーションの責務分離、設定の一元管理の重要性、さらには Amazon RDS のようなリソースにおけるライフサイクル管理のベストプラクティスなど、実運用を見据えた設計上の注意点についても講義形式で解説しました。

参加者の多くが AWS Code サービス群AWS CDK の基本的な概念をすでに理解されていたため、講義ではそうした概要説明は最小限にとどめ、より実践的な構成管理の課題や改善に焦点を当てました。

信頼性が求められる自治体システムを例に、IaC による環境の一貫性確保や、セキュリティ・運用性の両立を意識した設計思想について、具体的な事例を通じて理解を深めることができました。

⽣成 AI による開発・運用効率化ワークショップ

生成 AI の活用に関するワークショップでは、Amazon BedrockAmazon Q Developer を使った実践的なセッションが行われました。生成 AI の概要解説から始まり、開発や運用業務での活用方法まで幅広くカバーしました。

参加者は Amazon Bedrock を使って、セキュリティアラート分析の自動化やドキュメント生成などの実用的なユースケースを体験するハンズオンを実施しました。特にガバメントクラウド特有の考慮点 (セキュリティやプライバシーへの配慮など) についても解説があり、安全に生成 AI を活用する方法への理解を深めました。

セキュリティインシデント疑似体験 GameDay

このワークショップでは、AWS 上の典型的なセキュリティインシデントを想定し、ログ分析による調査手法について学びました。セキュリティイベントを検出してから、ログ調査で原因特定を行う一連の流れを体験しました。

参加者は各チームに分かれ、提供されたログデータから不審なアクティビティを特定し、インシデント対応策を検討するという実践的な演習に取り組みました。この演習は、ログ調査をすることで答えが分かるクイズで得点を競い合い、上位 3 チームに景品を授与するゲーム形式で進めました。 ゲーム形式の演習を通して AWS 環境の典型的なセキュリティインシデントと対策について理解を深めることができる内容となっていました。

Gov-JAWS コミュニティの活動紹介

ワークショップと併せて、Gov-JAWS の活動も行われました。Gov-JAWS は、AWS のユーザーコミュニティ「JAWS-UG」の支部として、公共分野における AWS 利用に焦点を当てた新しいコミュニティです。政府や自治体が進める公共分野のクラウド利用に関連する知識やノウハウを共有するための場として設立されました。

イベント当日は夜の部として Gov-JAWS 第 2 回 Meet Up が開催され、懇親会と併せて多くの参加者が交流を深めました。参加者からは「多くのベンダーの方々と情報交換ができ、普段なかなか話す機会のない方とも直接意見を交わすことができました。こうした場で顔を合わせることで、関係性がぐっと良くなると感じました。」という声が上がりました。このコミュニティを通じて、今後も公共分野でのクラウド活用に関する情報共有と横のつながりの拡大が期待されています。

まとめ

今回のワークショップでは、ガバメントクラウドにおける技術的な課題解決に焦点を当て、実践的な知識とスキルの習得を目指しました。「セキュリティ」「レジリエンス」「モダナイズ (IaC・CI/CD)」「生成 AI」といった様々な観点から、自治体基幹システムのガバメントクラウドへの移行を進める上で重要なテーマを深掘りすることができました。

参加者からは「実際の業務に活かせる具体的な内容だった」「他の事業者の取り組みを知ることができて参考になった」といった声が多く聞かれ、大変好評でした。

今後も、AWS ではガバメントクラウドの活用を支援するためのイベントや情報提供を継続して実施してまいります。

ガバメントクラウドに関するお問い合わせ

AWS の公共チームではガバメントクラウドクラウド相談窓口を設けております。

ガバメントクラウド利用全般に関するお問い合わせについて、担当の営業およびソリューションアーキテクトがご回答いたします。ぜひご活用ください。

https://aws.amazon.com/jp/government-education/worldwide/japan/gov-cloud-advisory-site/

著者について

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松本 侑也

アマゾン ウェブ サービス ジャパン合同会社のソリューションアーキテクト。パブリックセクター技術統括本部に所属し、自治体のお客様の技術支援を担当。ガバメントクラウドにおける標準化対象業務システムの移行支援や生成 AI の活用支援に取り組んでいる。