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IoT@Loft #26 関西発 IoT × 生成 AI が描く新たな未来 【開催報告&資料公開】
こんにちは、ソリューション アーキテクトの佐山です。
2025 年 5 月 15 日に 第 26 回 IoT@Loft 「関西発 IoT× 生成 AI が描く新たな未来」を開催しました。本ブログでは、イベントの内容を紹介し、各登壇者の発表資料を公開します。
今回のイベントは、関西エリア・大阪で初めての IoT@Loft 開催であり、多くの方にご参加いただきました。生成 AI と IoT の融合による新たな可能性について、お客様 3 社と AWS のセッションにて深く掘り下げてご紹介しています。また、前回に引き続きセッション後に登壇者や参加者間でのカジュアルなネットワーキングの時間も設け、参加者の皆様に大変ご好評いただきました。
当日のアジェンダ
- 『生成 AI を活用した組み込み SW 設計書検索システム開発』 三菱電機株式会社
- 『現場で AI 、どう運用する?安い AI と生成 AI でや ってみる(まだ道半ば)』 株式会社 Opt Fit
- 『家電×生成AIによる新たな生活体験とは?』 シャープ株式会社
- 『生成 AI で IoT はどのように活用できるか』AWS Japan
- ネットワーキング
IoT@Loft とは ?
IoT@Loft は AWS が年に数回ずつ開催している、IoT 関連ビジネスで開発を担当するデベロッパーのためのイベントです。「総合格闘技」とも呼ばれるほど、幅広い分野の技術が求められる IoT において、参加者同士の情報共有と意見交換の場を提供することで、参加者の事業や製品開発の成功につながるきっかけを作ることを目指しています。
お客様登壇
生成AIを活用した組み込みSW設計書検索システム開発
登壇者: 三菱電機株式会社 AI 戦略プロジェクトグループ 塚田 真規 氏
発表資料
まずは1つ目のセッションでは、三菱電機株式会社 塚田氏より、生成 AI を活用した組み込み SW 設計書検索システムの構築について紹介していただきました。三菱電機株式会社では、エアコンや室外機を開発する際に、複数製品でモジュールを共有することで開発を効率化されています。しかし共通モジュール改修時には、機種の多様性や知見の属人化により、影響範囲の見積もりに時間がかかるという課題がありました。そこで、複雑な図表を多く含む組み込みソフトウェア設計書に対して、マルチモーダルモデルを活用して設計情報を抽出し、関連する設計書を効率的に検索するサービスを開発されました。AWS 支援のもと AWS 初学者を含むスクラムチームを立ち上げ、組み込みソフトウェア開発者をユーザーとしてアジャイル開発を行い、3 か月でユーザーテストを実施されています。当初はユーザーの期待を満たす性能が得られませんでしたが、プロンプトの改善等による精度向上や、LLMOps 基盤を整備し継続的改善を実現する仕組みづくりに取り組まれたそうです。試行錯誤のプロセスも交えた実践的なセッションとなりました。
現場で AI、どう運用する?安い AI と生成 AI でやってみる(まだ道半ば)
登壇者: 株式会社 Opt Fit 取締役 CTO 荒川 準也 氏
2つ目のセッションでは、株式会社 Opt Fit 荒川氏より、 IoT × 画像解析 AI の運用から得た知見や今後の技術的展望についてご紹介いただきました。株式会社 Opt Fit は、AI 監視とデータ活用により、ジムや介護施設の戦略的な運営を支援しています。2000 店舗以上のジムに設置した専用防犯カメラの画像をエッジデバイス上の AI で解析し、不正入館の検知などを実現しており、そのノウハウは介護施設向けの見守り AI カメラにも応用されています。コストや開発・運用リソースを抑えつつ誤検知を軽減するための工夫として、エッジ側では軽量な AI モデルによる高速検知を行い、クラウド側で生成 AI を活用して「人か人以外か」といった現場の文脈に即した柔軟な判定を実施する仕組みを検証中とのことです。シンプルなプロンプトでも十分に実用性が確認できたことや、ネットワークが安定しない店舗などの環境では、エッジとクラウドのどちらで生成 AI の API を実行するかが検討ポイントとなっている点も共有されました。今後の展開に関する質疑応答では、化学物質などを扱う工場製造ラインにおける倒れている人の検知への応用を回答頂くなど、参加者の関心を集める内容となりました。
家電×生成AIによる新たな生活体験とは?
登壇者: シャープ株式会社 Smart Appliances Solutions事業本部 Smart Life事業統轄部 副統轄部長 長沢 忠郎 氏
お客様セッションの最後は、シャープ株式会社 長沢氏より家電×生成 AI による新たな生活体験についてご紹介いただきました。シャープ株式会社は、「AI」と「IoT」を組み合わせ「人と社会に寄り添う IoT」の実現に取り組まれています。キーワードとして、「AI による人々のさらなる生活向上」と「社会課題解決への貢献」をあげ、家電 × 生成 AI により生活のお困りごと解決が圧倒的に早くなる例として生成 AI を活用した洗濯機 ( SHARP Tech-day’24 にて参考出展) についてお話しされました。ユーザーが豊富な洗濯コースを使いこなせない課題に対し、洗濯したいモノを撮影した画像を送信すると、家電の FAQ や取扱説明書の情報や、ユーザーの保有する家電データ、ユーザーの嗜好性などを踏まえて LLM でアドバイスを生成するサービスです。ユーザーの手間を減らし解決の速度を向上することで行動変容につなげています。“一般的な情報による幅広い理解“ だけでなく、”家庭・ユーザー毎の長くて深い理解” をもっているというシャープ株式会社の強みを生かして、 IoT× 生成 AI の未来を実現していくことをお伝えいただきました。
AWSセッション
生成AIでIoTはどのように活用できるか
登壇者: アマゾン ウェブ サービス ジャパン合同会社 市川 純
AWS からは、 IoT× 生成 AI のユースケースとお客様事例を紹介しました。お客様へプロトタイピングを提供している SA 市川より、生成 AI サービス開発の経験を踏まえ、IoT を活用しエッジから価値あるデータを収集することで生成 AI をより良くできることをお伝えしました。エッジからのデータ収集に利用できるサービスとしては、産業用設備からのデータ収集と自然言語での問い合わせに利用できる AWS IoT SiteWiseや、基盤モデルをエッジで動かす際に利用できる AWS IoT Greengrass などをあげています。また、国内外の事例も紹介しました。i Smart Technologies株式会社では、収集のみで利活用できていない生産現場の IoT データに対し、Amazon Bedrock でデータから得られる知見をテキストで説明する “AI 製造部長” を 1 か月で開発しています。その他の事例はぜひ資料をご参照ください。
番外編:AWS IoT Greengrass のワークショップ
IoT@Loft の前に、AWS IoT Greengrass のワークショップを実施しました。AWS IoT Greengrass は、インテリジェントなIoTデバイスをより速く構築するためのサービスと、IoT デバイス向けのエッジランタイムです 。コンポーネントをデプロイすることで、IoT デバイスにさまざまなアプリケーションを構築することができます。ワークショップでは、独自のカスタムコンポーネントを開発して IoT デバイスにデプロイする方法や、AWS が提供する ログマネージャーコンポーネントを利用して IoT デバイスのログをクラウドにアップロードする方法などを体験していただきました。AWS IoT Greengrass ワークショップのコンテンツは公開されていますので、IoT デバイスの開発やクラウドとの連携に興味がある方は、ぜひ一度触ってみてください。
AWS IoT Greengrass 勉強会資料 / AWS IoT Greengrass ワークショップ
まとめ
この記事では、IoT@Loft #26 で紹介された生成 AI と IoT の融合による新たな可能性について解説しました。組み込みソフトウェア設計書の検索効率化、現場における AI 運用の最適化、家電×生成 AI による新たな生活体験など、IoT に関連する領域でも生成 AI 活用が進んでいます。
AWS Summit Japan 2025(2025/6/25、26@幕張メッセ)では、IoT に関するデモ展示も多数ございますので、ぜひ足を運んでみてください。
次回のIoT@Loftでは、さらに深い技術的な内容や新しい事例を紹介する予定です。お楽しみに!
著者について

佐山 朝葉 (Sayama Asaha)
ソリューションアーキテクト
製造業のお客様をご支援しています

宇佐美 雅紀 (Usami Masanori)
製造業のお客様を担当するソリューションアーキテクトです。
製造業のお客様のクラウド活用を支援しています。