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Amazon ElastiCache for Redis OSS バージョン 4 および 5 の延長サポートの紹介
本記事は 2025 年 7 月 31 日に公開された “Introducing Extended Support for Amazon ElastiCache version 4 and version 5 for Redis OSS” を翻訳したものです。
Redis Open Source Software (OSS) バージョン 4 と 5 は、それぞれ 2020 年と 2022 年にコミュニティのサポート終了を迎えました。これは、コミュニティからの更新、バグ修正、セキュリティパッチがもう提供されないことを意味します。Amazon ElastiCache はお客様が自分のペースでアップグレードできるよう、これらのバージョンのサポートを継続してきました。しかし、ElastiCache における ElastiCache Redis OSS バージョン 4 と 5 の標準サポートは 2026 年 1 月 31 日に終了します。サポートが終了した Redis OSS バージョンを使い続けると、既知の Common Vulnerabilities and Exposures (CVE) に対してデータが脆弱になる恐れがあります。
Amazon ElastiCache は、ビジネス要件に合わせたペースで新しいメジャーバージョンにアップグレードできるように、延長サポートを提供するようになりました。延長サポートは有償のサービスで、2029 年 1 月 31 日まで ElastiCache for Redis OSS バージョン 4 および 5 に対する重要なセキュリティアップデート、バグ修正、継続的なサポートを提供します。2026 年 2 月 1 日以降、アップグレードされていない ElastiCache Redis OSS v4 および v5 クラスターは、継続的な可用性とセキュリティを提供するために延長サポートに自動的に登録されます。延長サポートは柔軟性を提供しますが、標準サポートの終了を本番環境ワークロードの計画マイルストーンとして扱うことをお勧めします。標準サポートの終了前に、Redis OSS v4 および v5 クラスターを ElastiCache for Valkey または Redis OSS v6 以降にアップグレードすることを強くお勧めします。
この投稿では、ElastiCache 延長サポートの内容、主な利点、および利用可能なアップグレードオプションについて説明します。
ElastiCache 延長サポートのメリット
ElastiCache 延長サポートは、ElastiCache の標準サポート終了後 3 年間にわたり、Redis OSS メジャーバージョンに対する CVE の重要なセキュリティアップデートと不具合修正を提供します。アップグレードの計画と実行のための追加時間を確保しながら、セキュアで安定したワークロードを維持することができます。
ElastiCache 延長サポート期間を賢く活用して、アプリケーションの互換性を検証し、リスクを軽減し、ElastiCache for Valkey または ElastiCache for Redis OSS v6 以降への移行を進めましょう。
次の表は、Amazon ElastiCache の標準サポート終了日と延長サポート日をまとめたものです。
メジャーエンジンバージョン | 標準サポート終了 | 延長サポート Y1 プレミアム開始 | 延長サポート Y2 プレミアム開始 | 延長サポート Y3 プレミアム開始 | 延長サポート終了およびバージョンの EOL (サービス終了) |
Redis OSS v4 | 2026/1/31 | 2026/2/1 | 2027/2/1 | 2028/2/1 | 2029/1/31 |
Redis OSS v5 | 2026/1/31 | 2026/2/1 | 2027/2/1 | 2028/2/1 | 2029/1/31 |
延長サポート期間中、アップグレードには 2 つのオプションがあります:
- Service Update API を使用して、ElastiCache for Valkey バージョン 8 に自動アップグレードする
- Modify API を使用して、選択した対応バージョンにアップグレードする
ElastiCache for Redis OSS バージョン 4 およびバージョン 5 の延長サポートでは、以下のメリットを提供します:
- 重要度 Critical および High の CVE に対する継続的なセキュリティアップデート
- 重大な問題に対する不具合修正とパッチ
- 標準 ElastiCache SLA 内でサポートケースをオープンしてトラブルシューティングのヘルプを受ける機能
2026 年 2 月 1 日以降、Redis OSS v4 および v5 で実行されているクラスターは、サービスとセキュリティカバレッジを中断なく確保するために、自動的に延長サポートに移行します。これにより、お客様は自分のタイムラインでアップグレードを計画しテストする柔軟性が得られます。
ElastiCache 延長サポートの料金は、ElastiCache 標準サポート終了後、毎年増加し、詳細な価格情報は Amazon ElastiCache pricing で確認できるようになります。
ElastiCache 延長サポート期間が 2029 年 1 月 31 日に終了した後、Redis OSS v4 または v5 で実行されている残りのクラスターは、サービスを継続するために、自動的に ElastiCache for Valkey の最新の安定版にアップグレードされます。
延長サポートは、Redis OSS の ElastiCache バージョン v4.0 および v5.0 で利用可能です。サポートされているバージョンの完全なリストについては、ElastiCache のエンジンバージョンとアップグレードをご覧ください。
ElastiCache 延長サポートのユースケース
ElastiCache 延長サポートを使用すると、AWS の継続的なセキュリティパッチとメンテナンスアップデートへのアクセスを維持しながら、ビジネスニーズに合わせてバージョンアップグレードをスケジュールできます。
特定の Redis OSS v4 または v5 に依存するアプリケーションは、互換性をテストするために追加の時間が必要になる場合があります。
以下は ElastiCache 延長サポートが役立つシナリオです:
- アプリケーションの依存関係 – 特定のアプリケーションは、特定のデータ構造やカスタム機能との互換性など、ElastiCache for Redis OSS v4 または v5 に特定の依存関係がある場合があります。これらのアプリケーションを新しいバージョンに移行するには、徹底的なテストが必要になることがあります。ElastiCache 延長サポートを使用すると、アップグレードパスを検証しながら、アプリケーションのワークフローを中断することなく現在のバージョンを引き続き使用できます。
- 大規模フリートの要件 – 多数の Redis クラスターを運用しているお客様にとって、アップグレードの調整は時間がかかり、運用が複雑になる可能性があります。ElastiCache 延長サポートを使用すると、チームは時間をかけて段階的にアップグレードを行うことができ、IT リソースに負担をかけることなくスムーズな移行が可能になります。この段階的なアプローチにより、組織は完全な移行を行う前に、フリートの一部に対するアップグレードの影響をテストして検証することができます。
これらのシナリオがワークロードに該当する場合、または ElastiCache の標準サポート終了日 (2026 年 1 月 31 日) までにアップグレードを完了できない場合、延長サポートを利用することで、移行を完了しながら Redis OSS v4 および v5 クラスターの実行を継続する柔軟性が得られます。
ElastiCache の最新バージョンへのアップグレードの主な利点
ElastiCache for Redis OSS バージョン 6 以降では、Redis OSS v4 および v5 と比較して、パフォーマンス、セキュリティ、運用効率を向上させるいくつかの機能強化が導入されています。
- ElastiCache for Redis OSS バージョン 6 では、アクセスコントロールリスト (ACL) を通じてロールベースのアクセス制御 (RBAC) を利用できます。コマンド全体にわたってユーザーと詳細な権限を定義でき、安全なマルチテナント Redis クラスターを実現できます。このバージョンには、サーバーサイドの無効化を伴うクライアントサイドキャッシングも含まれており、頻繁にアクセスされるキーのネットワークラウンドトリップを削減し、レイテンシーを改善するのに役立ちます。
- ElastiCache for Redis OSS バージョン 7 は、強化された I/O マルチプレキシングを導入することで、これらの改善点をさらに発展させ、高並行環境において Redis OSS v6 と比較して最大 72% 高いスループットと 71% 低い P99 レイテンシーを実現します。
これらの新しいバージョンにアップグレードすることで、アプリケーションのキャッシュレイヤーがより安全で、パフォーマンスが高く、機能が豊富になるメリットを得ることができます。ElastiCache Redis OSS の新しいバージョンのメリットについて詳しく知るには、新機能 – Amazon ElastiCache の Redis 6 互換性 および New for Amazon ElastiCache for Redis 7: Get up to 72% better throughput with enhanced I/O multiplexing を参照してください。
ElastiCache for Valkey バージョン 8 以降では、Redis OSS バージョンと比較して、パフォーマンス、セキュリティ、運用効率を向上させるいくつかの機能強化が導入されています。
- ElastiCache version 8 for Valkey には Redis OSS v6 と v7 の利点が含まれており、さらにコスト最適化、スケーラビリティ、そしてメモリ効率が20%向上と大幅な改善が加えられています。Valkey は Redis OSS API と完全に互換性があるため、アプリケーションコードを変更せずにアップグレードできます。
- ElastiCache version 8.1 for Valkey は、バージョン 8 に加えてメモリ効率を 20% 向上させる新しいハッシュテーブル、Bloom フィルターの組み込みサポート、インメモリワークロードの観測性強化を導入しています。これらの改善は、特に大規模でメモリバウンドなキャッシュを実行しているお客様にとって、1 バイト、 1 ミリ秒が重要な場合に大きな影響を与えます。
- ElastiCache Serverless for Valkey は、13 分以内に 1 秒あたり 500 万リクエストまでスケールでき、キャパシティを事前にプロビジョニングすることなくバースト性の高いワークロードをサポートします。ノードベースの ElastiCache for Valkey を使用するお客様は、以前のバージョンと比較してキーあたり 32 バイト少ないメモリ使用量という改善されたメモリ効率の恩恵を受けられ、大規模なデータセットに対して意味のある節約につながります。Valkey は価格面でも優位性を持ち、Redis OSS より Serverless は 33% 低価格で、ノードベースのクラスターは 20% 低価格です。これらの改善は、Valkey のマルチスレッド I/O アーキテクチャとメモリモデルの強化によって実現されており、AWS はオープンソースコミュニティの一部としてこれに貢献しています。キャッシングインフラストラクチャをモダナイズするお客様にとって、Valkey は長期的なイノベーションと運用の柔軟性を備えた魅力的な選択肢を提供します。
Redis OSS v4 および v5 から新しいバージョンへのアップグレードオプション
Amazon ElastiCache では、Redis OSS v4 および v5 から新しい Redis OSS バージョンまたは ElastiCache for Valkey にアップグレードするための 2 つのメカニズムを提供しています: Modify API を使用したインプレースアップグレードと、Service Update API を使用した管理されたアップグレードです。
どちらのアップグレード方法も既存のエンドポイントとクラスター構成を保持するため、アプリケーションワークロードへの影響を最小限に抑えてバージョン移行ができます。
適切な方法は、現在のバージョン、ターゲットエンジン、およびアップグレードが管理された自動化の対象となるかどうかによって異なります。
Modify API パスを使用すると、既存の ElastiCache クラスターまたはレプリケーショングループに新しいエンジンバージョンを指定することで、インプレースアップグレードを開始できます。この方法はすべての Redis OSS および Valkey バージョンでサポートされており、AWS Management Console、AWS Command Line Interface( AWS CLI )—特に modify-replication-group または modify-cache-cluster コマンド—、またはサポートされている ElastiCache SDK を使用して実行できます。
アップグレードが適用されると、ElastiCache は基盤となるノードを指定されたバージョンを実行するインスタンスに置き換えます。メンテナンスウィンドウ中にアップグレードをスケジュールするか、ApplyImmediately
フラグを使用して即時に適用することができます。このアプローチにより、チームはアップグレードのタイミングを直接制御でき、幅広いクラスターアーキテクチャをサポートします。
サポートされているシナリオ ( Redis OSS から Valkey へのクロスエンジンアップグレードを含む場合) では、Service Update API も使用できます。この方法では、定義されたウィンドウ内でバージョンアップグレードを確認、延期、またはスケジュールできるマネージドアップグレード体験を提供します。
サービスアップデートは AWS を通じて調整され、ElastiCache コンソールに表示され、進捗状況は Amazon EventBridge 通知を通じて追跡されます。
コンソールまたは batch-apply-update-action AWS CLI コマンドを使用してサービスアップデートを適用でき、現在のエンドポイントと構成を保持しながらアップグレードプロセスを開始できます。
いずれのタイプのアップグレードを開始する前にも、AWS では エンジンバージョンの互換性 とリリースノートを確認し、ステージング環境でアプリケーションの動作をテストし、最新のスナップショットが存在することを確認することをお勧めします。
Modify API または Service Update API を通じた各アップグレードアプローチは、ElastiCache for Valkey または Redis OSS v6 以降のバージョンに、自信を持って運用への影響を最小限に抑えて移行するために必要なツールと柔軟性を提供します。
まとめ
ElastiCache for Redis OSS バージョン 4 および 5 延長サポートは、セキュリティやサポートを犠牲にすることなく、アップグレードの移行を完了するための追加の時間と柔軟性を提供するように設計されています。
古い Redis OSS バージョンと密接に結合されたワークロード、より長期間の検証サイクルを必要とするアプリケーション、または大規模なフリート全体での運用において、延長サポートは標準サポート終了後も 3 年間、重要なパッチ、不具合修正、および AWS Support SLA への継続的なアクセスを提供します。
ElastiCache の標準サポート終了日である 2026 年 1 月 31 日よりも十分前に、アップグレードの計画を立てることをお勧めします。ElastiCache for Valkey または Redis OSS v6 以降へのアップグレードにより、強化されたセキュリティ、パフォーマンスの向上、メモリ効率の改善、そして長期的なコミュニティと AWS のサポートを利用できるようになります。
Modify API を使用したインプレースアップグレードや、Service Update API を使用した管理ワークフローなど、柔軟なオプションから選択できるため、運用ニーズに合わせたアップグレード方法を計画することができます。
次のステップとして、現在の Redis OSS エンジンバージョンを確認し、アップグレードのタイムラインに影響する可能性のある依存関係を特定し、ステージング環境で新しいバージョンのテストを開始してください。標準サポート終了までにアップグレードを完了しないお客様は、2026 年 2 月 1 日から自動的に ElastiCache 延長サポートに登録されます。料金は、Amazon ElastiCache 料金ページに記載されているように、バージョンと ElastiCache 延長サポートの期間に基づいて設定されます。
追加のガイダンスについては、ElastiCache のバージョン管理、ElastiCache のエンジンバージョンとアップグレード、および Amazon ElastiCache for Valkey の使用開始 を参照してください。
この記事の翻訳は Solutions Architect の堤 勇人が担当しました。