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第 1 回 AWS DEVCRAFT 開催報告 ~ AWS DEVCRAFTで実現する、ビジネス課題解決の高速化 ~
こんにちは、AWS ソリューションアーキテクトの上野です。2025年4月11日、5月28日に、記念すべき第1回 AWS DEVCRAFT を開催いたしましたので、その取り組みについてご紹介させていただきます。
DEVCRAFT が目指すもの
AWS DEVCRAFT は、AWSのサービスを活用してお客様の実際のビジネス課題を解決する機能を開発するハッカソンイベントです。通常のハンズオンとは異なり、短期集中型の支援を通じて実務で即活用できる機能開発を実現し、お客様のビジネスを加速させることを目指しています。
イベントの進め方
DEVCRAFT は2日間のイベントを軸に進めていきます。初日となる Day 1 では、まず開発で利用する AWS サービスの基礎を学んでいただき、その後、実際に開発する機能の要件整理や設計に取り組んでいきます。AWS のエキスパートが終日同じテーブルについて一緒に考え、技術面でのアドバイスを提供させていただきます。
Day 1 で整理した内容を持ち帰っていただいた後は、実際の開発フェーズに入ります。開発中に疑問点や課題が出てきた際には、随時技術相談会を開催し、スムーズな開発をサポートさせていただきます。
締めくくりとなる Day 2 では、参加者の皆様に開発した機能についてご発表いただきます。技術的な工夫だけでなく、開発中の試行錯誤など、貴重な経験の共有の場となっています。
参加企業様の素晴らしい取り組み
株式会社アンドゲート様からは、生成AIとMCPサーバーを組み合わせた画期的なセキュリティチェックシステムをご紹介いただきました。複数のツールに散らばる情報を一度の会話で集約できる機能は、業務効率を大きく向上させる可能性を感じさせるものでした。
協栄産業株式会社様は、建築業界の長年の課題に挑戦されました。建築図面からの自動データ抽出システムは、なんと作業時間を95%も削減することに成功。生成AIと AWS Step Functions の見事な組み合わせで、画期的な業務改革を実現されています。
それではここからは、ご参加いただいた企業様のご登壇の様子をご紹介していきます。
株式会社アンドゲート 鈴木 勘久郎 氏(写真右)、田村 祥 氏(写真左)らは、セキュリティチェックを効率化する機能および、PM 補佐機能を生成 AI と MCP サーバー連携を活用することで開発されました。MCPサーバーの活用により一度の会話で、複数ツールに散らばる情報を集約できるようになった点が特徴となります。MCP サーバーとの連携は、今回のイベントの中では唯一の実装例でしたが、開発期間中の生成 AI 関連のアップデートの早さにより、開発方針を大きく変えたという開発秘話についてもお話いただきました。今後は機能のブラッシュアップを進めながら、AI による業務改革を進めていくというお言葉で締めくくっていただきました。
協栄産業株式会社 IT ソリューション部 田中 秀弥 氏らは、建築工程の積算を担うシステムにおいて、積算に必要なデータを図面から自動で読込みする機能を開発されました。生成 AI を活用して画像から必要な値を読み取り、システムにインプットできる形に加工する一連の流れを AWS Step Functions で組み上げております。プロンプトの試行錯誤により、読取精度95%、データ読み取りの作業時間が従来の95%短縮されており、今後は対象範囲を広げ積算・見積業務における業務改善を進めていくご計画とのことです。
株式会社ファイン開発本部 ゼネラルマネージャー 雑賀 崇 氏らは、建築パースに関連度の高い商品をレコメンドする機能を開発されました。同社では、商談の場面で建築パースからイメージを膨らませたお客様に、床、タイルなどの実際の商品をご提案する際に、建築パースのイメージに近い商品になかなかたどり着けないという課題のもと、今回の開発に取り組まれております。同社で開発したモデルによる部位検出、生成 AI による特徴量抽出などの処理フローを AWS Step Functions で実装されており、今後は精度や検索パフォーマンス、スケーラビリティの向上に向けてブラッシュアップを進めていくご予定とご説明いただきました。
株式会社フレイ・スリー 開発部 リードエンジニアの青木 諭 氏らは、同社が提供する動画マーケティングサービスである「1ROLL」 の新機能として、視聴データの評価及び、課題に応じた解決策を提案する機能を開発されました。動画をインプットにして、構成情報の取得や視聴データの評価を行うフローが進み、これらの情報をもとに、解決策を提示するという一連の流れを AWS Step Functions でスピーディーに実装されています。今回の機能を動画活用のPDCAに取り込み、より良い動画活用を自動で提案、顧客自身で解決できるようなシステムを目指しますというお言葉で締めくくっていただきました。
ソウ・エクスペリエンス株式会社 システムチームの竹谷 哲也 氏(写真左)、松岡 奈々 氏(写真右)は、FAXの画像データの取得とそのデータを画像解析システムへ送信する処理フローを既存の仕組みから AWS Step Functions に置き換えられました。同社は、体験ギフトのサービスを展開されており、体験ギフトのECサイト、申し込み用のサイト、体験施設向けの管理サイトなどを運営されており、その中ではFAXデータを取り扱う業務が存在します。Step Functions での開発を試行錯誤いただき、移行後のコスト予想では90%以上の削減が見込まれています。今後は、その他の機能においても Step Functions への置き換えを検討されているとのことです。
心に残る成果と将来への期待
今回の AWS DEVCRAFT では、参加された全てのお客様が、実務で使える機能を見事に開発されました。「対面でのディスカッションで素早く方向性が定まった」「期間が決まっていることで集中して取り組めた」など、うれしい声を多数いただきました。特に印象的だったのは、このイベントをきっかけに、AWS サービスの新しい活用方法を見出されたお客様が多かったことです。今回の経験を今後の開発にも活かしていただけるとのお話もいただき、私たちとしても大変心強く感じています。AWS DEVCRAFT は、これからもお客様のビジネスの発展により一層貢献できるよう、内容の改善を重ねてまいります。
本記事公開時点では、AWS DEVCRAFTは招待制のイベントとなります。AWS側の担当者がお客様の状況を鑑みてご案内差し上げておりますので、予めご了承ください。