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【開催報告】第二回 中央省庁向け AWS ガバメントクラウドワークショップ

こんにちは。ソリューションアーキテクトの東 健一です。普段はパブリックセクター技術統括本部で中央省庁のお客様の技術支援を担当しており、主にガバメントクラウドや医療 DX に関わるご支援を担当しております。

2025 年 6 月 17 日に「第二回 中央省庁向け AWS ガバメントクラウドワークショップ」を開催しました。中央省庁向けのガバメントクラウドワークショップは 2024 年 11 月に第一回目を開催しており、今回は記念すべき第二回目の開催です。
このイベントは、ガバメントクラウドへのシステム移行や新規システムの構築を進める上で必要となる技術や知見について、実際のプロジェクトの事例を交えつつ深く学び (Dive Deep)、実践的なパネルディスカッションやワークショップを通じて技術スキルを高め、さらに参加者同士の交流 (Have Fun) を目的として開催されました。
本ブログでは、イベント内容を簡単にご紹介しつつ、当日のセッションやワークショップの様子を共有いたします。

また、同日に 自治体事業者向けガバメントクラウドワークショップ 、夜には Gov-JAWS 第2回 も開催され、約 140 人が参加する大規模なイベントになりました。

イベント概要

本ワークショップは以下のような形で実施しました。

  • 日時: 2025 年 6 月 17 日 (火) 13:00-18:30 (懇親会 + Gov JAWS: 18:30-21:00)
  • 場所: アマゾン ウェブ サービス ジャパン合同会社 目黒オフィス
  • 参加対象: 中央省庁の案件に関わるパートナー、中央省庁職員

(1)事例セッション

まず、実際にガバメントクラウドにてシステム構築を行なった事例に基づいた2つのセッションを実施しました。

  • Amazon EKSを活用したインフラ基盤の構築と運用・GSS経由での各府省システムとの接続
  • CDKを利用したガバメントクラウド新規構築案件における CI/CDパイプラインの実装例

(2)パネルディスカッション・ワークショップ

事例セッションの後、参加者が以下のパネルディスカッション・ワークショップから自身の関心や課題に合わせて選択できる形式を採用しました。

ワークショップ側の詳細については自治体事業者向けガバメントクラウドワークショップの開催ブログをご覧ください。

パネルディスカッション・ワークショップ名 主な内容
IaC・CI/CD パネルディスカッション 実際のプロジェクトの事例を交えたIaC・CI/CD導入のポイント
耐障害性・可用性設計ワークショップ 障害耐性評価と復旧プロセスの体験
ガバメントクラウド IaC、CI/CD ワークショップ マルチアカウント環境での CDK デプロイ自動化
⽣成 AI による開発・運用効率化ワークショップ 生成 AI による業務効率化と開発支援の実践
セキュリティインシデント疑似体験 GameDay セキュリティインシデント対応と調査手法

(3)AWS セッション

最後に AWS のソリューションアーキテクト、テクニカルアカウントマネージャからオブザーバビリティやセキュリティ、コスト最適化に関して合計 3 つのセッションを実施しました。

  • ガバメントクラウド移行と共に考える アプリケーションのオブザーバビリティ
  • AWS で実現する サイバーセキュリティ対策 ガバメントクラウド編
  • ガバメントクラウドでの コスト管理戦略

事例セッション – ハイライト

Amazon EKSを活用したインフラ基盤の構築と運用・GSS経由での各府省システムとの接続

アクセンチュア株式会社 小塚豊氏より、Amazon EKS を活用して既存システムをガバメントクラウドへ移行した事例についてご講演いただきました。実際のアーキテクチャ図を用い、Helm や Kustomize を活用した効率的なアプリケーション管理・デプロイ手法や、コンテナ化によるワークロードの変更容易性・拡張性といったメリットについて具体的にご紹介いただきました。また、プロジェクト中に発生したさまざまな課題に対し、Amazon EKS の機能や Kubernetes の設定を最適化することによって対応された点が非常に印象的でした。

さらに、インターネットや府省庁システムとの接続、GSS (ガバメントクラウド接続ネットワーク) の利用など、ガバメントクラウド特有の要件をどのように実現したかについても具体的に解説されました。

参加者からは「自分たちが検討しているシステム構成と非常に近く、参考になった」といった声が寄せられました。

AWS CDKを利用したガバメントクラウド新規構築案件における CI/CDパイプラインの実装例

NTTデータ 大畠 敬就氏および中田 大輔氏より、ガバメントクラウド上で新規システムを構築する際の AWS Cloud Development Kit (AWS CDK) を利用した CI/CD パイプライン設計・実装事例についてご講演いただきました。プロジェクト特有の要件や制約に対応するため、パイプラインやリポジトリの適切な分割、Amazon ECS を用いたコンテナアプリケーションのデプロイを AWS CDK (IaC) の一部として管理する工夫 (SSM パラメータストアを用いた設定値の外部管理やイメージ管理の戦略等) 、パイプライン毎の承認フェーズの設計などが紹介されました。

また、IaC のテスト自動化の実装においては、プロジェクトの途中で一部方針転換を行うなど、さまざまな試行錯誤を重ねた結果、プロジェクトとしての”ベタープラクティス”にたどり着いた点が非常に印象的でした。

参加者からは「実装上の工夫がわかるリアルな事例で非常に参考になった」といった声が寄せられました。

パネルディスカッション – ハイライト

IaC・CI/CD パネルディスカッション

NTTデータ 大畠 敬就氏および川上 彰庸氏をお招きし、パートナーソリューションアーキテクトの山田 磨耶のファシリテートのもと、IaC・CI/CD についてパネルディスカッションを行いました。

前半では CI/CD をテーマに、実際に感じたメリットや技術の適用範囲、導入時に直面した課題、キャッチアップの方法、トラブル対応などについて、実際のプロジェクト事例を踏まえた具体的な経験が語られました。また、課題への対処方法や成功要因、さらに根本的な課題が残っている場合にはその内容も率直に共有され、実践的な知見が紹介されました。

後半では IaC、とりわけ AWS CDK に焦点を当て、CI/CD と同様の観点から議論が展開されました。プロジェクト導入初期やローンチ後の運用フェーズにおける課題、AWS CloudFormation など他の IaC ツールとの比較についても具体的に説明されていた点が非常に印象的でした。

パネルディスカッションの中では、聴講者からも多くの質問が寄せられ、活発な意見交換が行われました。

AWS セッション – ハイライト

ガバメントクラウド移行と共に考える アプリケーションのオブザーバビリティ

ソリューションアーキテクトの東 健一より、オブザーバビリティに関する発表を行いました。ガバメントクラウドへの移行やマネージドサービスの活用が進む中、従来型のインフラストラクチャ監視だけでは十分とは言えず、オブザーバビリティの確保がますます重要になっていることを解説しました。あわせて、サービスレベル指標(SLI/SLO)や KPI/KGI の設定・見直しの重要性についても、具体例を交えながら、ユーザー視点での目標値の設定やエラーバジェットの運用方法とともにご紹介しました。

また、上記の取り組みを AWS で実現するために「Application Signals」などマネージドサービスを活用した監視体制の構築例や、Amazon ECSAWS Fargate 環境での自動計測・可視化の実践例も取り上げ、段階的に監視の成熟度を高めていくためのアプローチについてご紹介しました。

AWSで実現する サイバーセキュリティ対策 ガバメントクラウド編

ソリューションアーキテクトの日吉 康仁より、ガバメントクラウドにフォーカスした AWS のサイバーセキュリティ対策に関する発表を行いました。AWS のセキュリティ基本方針や責任共有モデル、ISMAP などのコンプライアンス対応について解説し、Amazon GuardDutyAWS Security Hub などの AWS セキュリティサービスを活用した具体的な対策事例が紹介されています。

また、ガバメントクラウドにおけるガバナンスやアカウント管理、予防的・発見的統制の考え方、AWS CloudTrailAWS Config を使った可視化や自動化の実践例も取り上げられています。最後に、継続的なセキュリティ強化の重要性についてまとめられています。

ガバメントクラウドでの コスト管理戦略

テクニカルアカウントマネージャの廣木 秀典、堀沢 伸吾より、ガバメントクラウド移行後のコスト管理をテーマに、クラウド特有の課題とその解決策について発表を行いました。クラウド利用料の増加を防ぐため、「可視化」「最適化」「計画・予測」の3つを軸とした Cloud Financial Management (CFM) や FinOps の考え方を紹介し、タグ付けや AWS Cost Explorer を活用したコスト分析、Savings Plans の導入、未使用リソースの削減といった具体的な最適化手法について触れられておりました。

さらに、全社的なコスト配分や継続的な監視体制の構築が重要であることを強調し、AWS の各種サービスを活用した組織的なコスト最適化のベストプラクティスをご紹介しました。

Gov-JAWS コミュニティの活動紹介

本ワークショップと併せて、Gov-JAWS の活動も行われました。Gov-JAWS は、AWS のユーザーコミュニティ「JAWS-UG」の支部として、公共分野における AWS 利用に焦点を当てた新しいコミュニティです。政府や自治体が進める公共分野のクラウド利用に関連する知識やノウハウを共有するための場として設立されました。

イベント当日は夜の部として Gov-JAWS 第 2 回 Meet Up が開催され、懇親会と併せて多くの参加者が交流を深めました。参加者からは「多くのベンダーの方々と情報交換ができ、普段なかなか話す機会のない方とも直接意見を交わすことができました。こうした場で顔を合わせることで、関係性がぐっと良くなると感じました。」という声が上がりました。このコミュニティを通じて、今後も公共分野でのクラウド活用に関する情報共有と横のつながりの拡大が期待されています。

まとめ

今回のワークショップでは、ガバメントクラウド移行や新規構築を進める上で重要となる技術課題や実践例、最新の運用ノウハウが共有されました。

事例セッションやパネルディスカッションでは マネージドサービス や AWS CDK を活用したインフラ構築・CI/CDパイプラインの実装など、現場の工夫や課題解決策が紹介され、AWS セッションではオブザーバビリティ、セキュリティ、コスト管理といった運用面のベストプラクティスが解説されました。
参加者からは「実際の業務に活かせる具体的な内容だった」「他のプロジェクトでの取り組みを知ることができて参考になった」といった声が多く聞かれ、大変好評でした。

また、参加者同士の意見交換も活発に行われ、昨年 11 月に開催された第一回目を超える内容となりました。

今後も、AWS ではガバメントクラウドの活用を支援するためのイベントや情報提供を継続して実施してまいります。

ガバメントクラウドに関するお問い合わせ

AWS の公共チームではガバメントクラウドクラウド相談窓口を設けております。

ガバメントクラウド利用全般に関するお問い合わせについて、担当の営業およびソリューションアーキテクトがご回答いたします。ぜひご活用ください。

https://aws.amazon.com/jp/government-education/worldwide/japan/gov-cloud-advisory-site/

著者について

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東 健一

アマゾン ウェブ サービス ジャパン合同会社のソリューションアーキテクト。パブリックセクター技術統括本部に所属し、主にガバメントクラウドや医療 DX 、コンテナワークロードに関する案件の技術支援に取り組んでいる。