Amazon Web Services ブログ
週刊AWS – re:Invent 2025 特別号 part 2 (2025/12/8週)
みなさん、こんにちは。ソリューションアーキテクトの杉山です。
今週も 週刊AWS をお届けします。
先週は AWS re:Invent 2025 が開催されました。今週は特別号となっており、多くのアップデートを広くお届けするために、以下の 3 part 構成となっています。
- 週刊生成AI with AWS – re:Invent 2025 特別号 part 1 (ToBeUpdate)
- 週刊AWS – re:Invent 2025 特別号 part 2 (本記事)
- 週刊AWS – re:Invent 2025 特別号 part 3 (ToBeUpdate)
re:Invent の発表内容をほぼ網羅したオンラインセミナーを 12/5 に開催しており「2025 年 AWS re:Invent 速報」に資料と動画が公開されていますので、こちらも合わせてご覧ください。
カテゴリリンク :
Analytics | Business Application | Compute | Containers | Database | Global Infrastructure | Management & Governance
AWS re:Invent 2025 期間に発表された主要なアップデート Part 2
- Analytics
- AWS Clean Rooms で ML トレーニングのためのデータセット生成機能をサポート
AWS Clean Rooms で、新たにデータセット生成機能をサポートしました。AWS Clean Rooms を活用すると、セキュリティを意識しながら社内外にデータを共有できます。新しいデータセット生成機能を利用すると、実際のレコードにアクセスすることなく、元のデータと類似した統計的特性を持つトレーニングデータセットを作成できるようになりました。元のデータ内でデータが収集された人物やエンティティなどの対象を匿名化し、モデルがトレーニングデータ内の個人に関する情報を学習するリスクを軽減しやすくなります。 - Amazon EMR Serverless でローカルストレージが不要に
Amazon EMR Serverless で Apache Spark ワークロード向けのサーバーレスストレージが利用可能になりました。これまでローカルディスクを手動設定する必要がありましたが、今回のアップデートでサーバーレスストレージを自動的に一部の処理で利用できるようになり、データ処理コストを最大 20 % 削減できます。EMR Serverless は shuffle などの中間データ操作を自動的に処理し、ローカルストレージを利用するのではなく、新しく追加されたサーバーレスストレージにオフロードします。この機能は、EMR リリース 7.12 以降で提供されています。
- AWS Clean Rooms で ML トレーニングのためのデータセット生成機能をサポート
- Business Application
- Amazon Connect が Model Context Protocol (MCP) サポートを開始
Amazon Connect が Model Context Protocol (MCP) をサポートしました。エンドユーザーが Amazon Connect に電話をかけると、コンタクトフロー上の自動音声対応や AI エージェントの対話の中から独自のMCP処理を呼び出せます。例えば、セルフサービスのやり取りの中で、注文ステータスの検索や顧客記録の更新を行うことができます。自動発注や自動返金などの金銭に関係する処理も技術的には可能ですが、ハルシネーションが発生する可能性が 0 ではないので、テストを行いながら検証を頂くとよいかなと思います。詳細はこちらのドキュメントをご覧ください。 - Amazon Connect で Amazon Nova Sonic モデルとの統合が可能に
Amazon Connect で Amazon Nova Sonic の音声モデルと統合がサポートされ、より自然な音声体験を提供しやすくなりました。例えば、お客様が注文について電話をかけてきた際に、AI エージェントは名前を呼び掛けて挨拶を行い、要望を確認するための質問を行い、注文ステータスを調べ、返金処理を行います。会話全体を通じてお客様の会話トーンに適応した自然な応答がやりやすくなります。現在、バージニア北部、オレゴンリージョンで利用可能です。英語とスペイン語は一般提供されており、フランス語、イタリア語、ドイツ語ではプレビューで利用できます。 - Amazon Connect Customer Profiles で新しいセグメンテーション機能を開始 (ベータ版)
Amazon Connect Customer Profiles で、AI 支援によるセグメンテーション機能がベータ版で提供開始されました。従来のシンプルなセグメンテーションに加えて、Spark SQL を使った高度な顧客セグメント作成が可能になります。自然言語で「過去 1 か月で 3 回以上カスタマーサービスに連絡したお客様」といった条件を入力すると、AI が自動で SQL を生成してくれます。統計関数やデータ結合など複雑な分析も実現でき、より精密なターゲティングでアウトバウンドキャンペーンや個別化された顧客体験を提供できます。詳細はこちらのドキュメントをご参照ください。
- Amazon Connect が Model Context Protocol (MCP) サポートを開始
- Compute
- AWS Lambda が複数ステップアプリケーションと AI ワークフロー向けの Durable Functions を発表
AWS Lambda に新機能「Durable Functions」が追加されました。従来の Lambda 関数は 15 分以内の短時間タスクに適していましたが、「Durable Functions」により長時間にわたるワークフローや、AI 関連フローなどを構築できるようになりました。実行状況を自動保存し、最大 1 年間処理を一時停止でき、障害時も自動復旧します。外部のオーケストレーションサービスが不要になり、開発者はビジネスロジックに集中できます。現在オハイオリージョンで Python と Node.js に対応しています。 - AWS Lambda Managed Instances で EC2 インスタンス上で関数を実行
AWS Lambda Managed Instances が発表されました。これまで Lambda 関数は AWS が管理するインフラで実行されていましたが、この新機能により自分の EC2 インスタンス上で Lambda 関数を実行できるようになりました。Graviton 4 などの専用コンピュートリソースを利用できること、定常的に利用する Lambda の料金最適化 (Savings Plans など) をサーバーレス体験を維持しながら得られるメリットがあります。オートスケーリングに関して事前設定することで、裏側のスケーリングは AWS が行います。事前準備されたリソース上で Lambda 環境を実行できる場合は Lambda 関数のコールドスタートを回避できます。リクエストが多くなり追加のリソースが必要になると、AWSは数十秒以内に新しいインスタンスを自動的に起動します。最大 50 % までのスパイクリクエストはスケーリングなしに対応できますが、これを超える場合、スケーリング途中に一時的にスロットリングが発生することもあります。料金は、Lambda のリクエスト料金に加えて、EC2 インスタンスの料金が加わる形です。 - より高速で低コストな生成 AI トレーニングを実現する Amazon EC2 Trn3 UltraServers の発表
AI 推論、および動画生成アプリケーションに最適な 3nm AWS AI チップである Trainium3 を搭載した EC2 インスタンスタイプを提供開始しました。Trn3 は、Trn2 UltraServers と比較して最大 4.4 倍高いパフォーマンス、3.9 倍高いメモリ帯域幅、4 倍優れたパフォーマンス/ワットを提供し、強化学習、Mixture-of-Experts (MoE)、推論、長コンテキストアーキテクチャを含むフロンティアスケールモデルのトレーニングと提供において価格パフォーマンスを提供します。AWS Neuron SDK の利用が必要ですが、ネイティブ PyTorch 統合によりこれまでのモデルコードを活かした形で Trainium 3 の活用が可能です。 - Amazon EC2 P6e-GB300 UltraServers が一般提供開始
P6e-GB300 UltraServers の一般提供開始を発表しました。NVIDIA GB300 NVL72 で高速化された P6e-GB300 UltraServers は、P6e-GB200 と比較して 1.5 倍の GPU メモリと 1.5 倍の FP4 コンピュート (スパース性なし) を提供します。お客様は、より高いコンテキストを必要とし、推論やエージェント AI などの新興推論技術を実装するアプリケーションにおいて、P6e-GB300 を使用して本番環境で最も強力なモデルのパフォーマンスを最適化できます。利用を希望する場合は AWS にお問い合わせください。 - 新しいメモリ最適化 Amazon EC2 X8aedz インスタンスの発表
新しいメモリ最適化 EC2 インスタンス X8aedz を発表しました。x8aedz.large, x8aedz.xlarge, x8aedz.3xlarge … といったインスタンスタイプ名です。第 5 世代 AMD EPYC プロセッサを搭載し、高い CPU 周波数である 5GHz を提供します。前世代の X2iezn インスタンスと比較して最大 2 倍高いコンピュート性能を実現します。物理レイアウトや物理検証ジョブなどの電子設計自動化 (EDA) ワークロード、高い CPU 性能やメモリが必要となるリレーショナルデータベースに最適です。 - Amazon EC2 M4 Max Mac インスタンス (プレビュー) の発表
Amazon EC2 M4 Max Mac インスタンスのプレビュー提供を発表しました。このインスタンスは、16 コア CPU、40 コア GPU、16 コア Neural Engine、および 128GB のメモリを搭載しており、より必要なリソースが求められる環境でビルドが必要な際に、EC2 上で新たな選択肢を提供する形です。EC2 M4 Pro Mac インスタンスと比較して、2 倍の GPU コアと 2.5 倍以上のユニファイドメモリを提供します。利用を希望する場合は AWS にお問い合わせください。
- AWS Lambda が複数ステップアプリケーションと AI ワークフロー向けの Durable Functions を発表
- Containers
- Amazon EKS Capabilities の発表
Amazon EKS Capabilities が一般提供開始されました。 Kubernetes プラットフォームの管理機能を AWS がフルマネージドサービスとして提供します。CI/CD (Argo CD)、AWS リソース管理 (ACK)、動的リソースオーケストレーション (KRO) の 3 つの機能が利用可能です。これまではお客様自身による運用が必要でしたが、マネージドサービスとして提供されることで、アップデート作業などを AWS に任せて、運用負担の軽減といったうれしさがあります。
- Amazon EKS Capabilities の発表
- Database
- Database Savings Plans の発表
Database Savings Plans を発表しました。これは、前払いなしの 1 年間の契約期間において、一定量の使用量 (1 時間あたりの利用料金) をコミットすることで最大 35% の節約を実現する料金モデルです。従来の Reserved Instance と違い、Aurora や RDS 、DynamoDB など複数のデータベースサービスを横断して割引が適用される点がうれしいポイントの一つです。インスタンスタイプや、リージョンの変更についても柔軟に対応できます。一方、Database Savings Plans の対象になるのは第 7 世代以上であること、ElastiCache の場合は Valkey インスタンスであること、といった制限がある点にも留意です。詳細はこちらのウェブサイトをご覧ください。 - Amazon RDS for SQL Server が新世代インスタンスで CPU 最適化を開始、最大 55% の価格削減を実現
Amazon RDS for SQL Server で新世代インスタンス M7i と R7i に対応した Optimize CPU 機能が提供開始しました。2 コア以上のインスタンスで SMT (同時マルチスレッド) を無効化することで vCPU 数が半減し、SQL Server のライセンス料金を 50 % 削減できます。物理 CPU コア数は変わらず性能もほぼ同等のため、データベースワークロードのコスト効率が向上します。詳細はこちらの料金ページをご参照ください。 - Amazon RDS の Oracle と SQL Server で最大 256 TiB のストレージ容量に対応
Amazon RDS の Oracle と SQL Server について、これまで最大ストレージ容量が 64 TiB でしたが、256 TiB に拡張しました。プライマリストレージボリュームに加えて、最大 3 つの追加ストレージボリューム (それぞれ最大 64 TiB のストレージ) をデータベースインスタンスに追加できます。追加ストレージボリュームは、アプリケーションのダウンタイムなしにデータベースインスタンスに追加、スケールアップ、または削除できます。Provisioned IOPS SSD (io2) ボリュームと General Purpose (gp3) ボリュームの組み合わせを使用して、コストパフォーマンスの最適化を図ることも可能です。 - Amazon RDS for SQL Server が Developer Edition をサポート開始
Amazon RDS for SQL Server で Microsoft SQL Server 2022 Developer Edition がサポート開始されました。Developer Edition は無料版でありながら Enterprise Edition と同じ機能を持ち、開発・テスト環境で利用できます。これまで開発環境で Standard Edition や Enterprise Edition を使用していた場合、Developer Edition を利用することで、ライセンス費用を削減してコスト最適化をしやすくなりました。自動バックアップや暗号化などの RDS 機能もそのまま利用可能です。詳細はこちらのドキュメントをご参照ください。
- Database Savings Plans の発表
- Global Infrastructure
- AWS AI Factories の提供開始
AWS AI Factories の提供を開始しました。お客様のデータセンター内に、高性能な AI インフラを AWS が迅速に構築するサービスです。AWS Trainium や NVIDIA GPU を組み合わせた専用環境により、独自に構築する際の手間を削減して、時間を短縮出来るメリットがあります。Amazon Bedrock や SageMaker といった AI サービスも統合されており、データ主権要件を満たしながら AWS クラウドの機能を活用できます。
- AWS AI Factories の提供開始
- Management & Governance
- AWS DevOps Agent のプレビュー提供開始
AWS DevOps Agent のプレビュー提供を開始しました。このエージェントは経験豊富な DevOps エンジニアのように問題を自動解決し、アプリケーションの信頼性向上を支援します。リソース間の関係性を学習し、監視ツールや CI/CD パイプラインと連携してインシデントを分析・対処することで MTTR (平均復旧時間) を短縮できます。プレビュー期間中はバージニア北部リージョンで無料利用可能です。 - AWS Support のサポートプランが新しくエンハンスされ変更に
AWS Support で AI と人間の専門知識を組み合わせた新しい 3 つのプラン (Business Support+、Enterprise Support、Unified Operations) を提供開始しました。AI による 24 時間体制のサポートが追加されたことが特徴で、AWS エンジニアによる直接支援と併用した活用ができます。料金プランが変わっている点に留意です。Developer Support がなくなりますが、これまでのプランを利用していたお客様は 2027 年 1 月 1 日まで引き続き利用が可能です。一方、新しく AWS を利用するお客様については、新規のプランから選択する形になります。 - Amazon CloudWatch インシデントレポートで Five Whys 分析をサポート
Amazon CloudWatch で、AI を活用したインシデントレポート機能が追加されました。この機能は Amazon Q を使った「Five Whys (5 つのなぜ)」分析を通じて、システム障害の根本原因を特定できます。従来は手動で原因調査していた作業が、AI ガイド付きのチャットベースワークフローで効率化されます。東京リージョンを含む 12 リージョンで追加コストなしで利用可能です。詳細はこちらのドキュメントをご参照ください。 - Amazon CloudWatch で AWS CloudTrail イベントを簡単に収集できるように
AWS CloudTrail のイベントを Amazon CloudWatch で簡単に収集できる機能が提供開始となりました。これまで CloudTrail のログを CloudWatch で監視するには複雑な設定が必要でしたが、今回のアップデートにより VPC フローログや EKS コントロールプレーンログなどと一緒に一元的に設定・管理できるようになります。組織全体での包括的な監視とデータ収集が簡単に実現でき、運用効率が向上します。詳細はこちらのドキュメントをご参照ください。
- AWS DevOps Agent のプレビュー提供開始
それでは、また来週お会いしましょう!