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週刊AWS – 2025/7/14週

みなさん、こんにちは。ソリューションアーキテクトの杉山です。今週も 週刊AWS をお届けします。

AWS Summit New York 2025 が現地時間の 7/16 に開催されました。Keynote で生成 AI 周りのアップデートが発表され、夜遅くに盛り上がっていました。AgentCore がやはり注目の機能で AI エージェントの試行錯誤をしてから本番環境へデプロイする流れが、とてもスムーズになるうれしさがあります。生成 AI 周りのアップデートは 週刊生成AI with AWS で主に取り上げるため、こちらもぜひお見逃しなく。

それでは、先週の主なアップデートについて振り返っていきましょう。

2025年7月14日週の主要なアップデート

  • 7/14(月)
    • Amazon S3 コンソールで全てのバケットの外部アクセス概要が表示されるようになりました
      Amazon S3 コンソールで全バケットの外部アクセス状況を一括確認できるようになりました。これまでは各リージョンごとに個別確認が必要でしたが、AWS アカウント全体のパブリックアクセスや他の AWS アカウントからのアクセス許可状況を一画面で把握可能です。この機能は AWS IAM Access Analyzer で提供され、新たな機能に関して追加費用は発生しません。詳細はこちらのドキュメントをご参照ください。
    • AWS Price List 向け Model Context Protocol (MCP) サーバーの発表
      AWS が AWS Pricing MCP Server をリリースしました。この新しいサーバーにより、Amazon Q Developer CLI や Kiro, Claude Code などの AI アシスタントが、自然言語での会話を通じて AWS の価格情報をリアルタイムで取得できるようになります。従来は手作業で価格を調べていた作業が、「東京リージョンと大阪リージョンの EC2 価格を比較して」といったテキストで質問を投げかけることで簡単に実行できます。詳細はこちらの GitHub リポジトリをご参照ください。
    • Amazon Q in QuickSight のトピック向けカスタム指示が一般提供開始
      Amazon Q in QuickSight で Q&A トピック向けカスタム指示が提供開始されました。Amazon Q in QuickSight には Q&A 機能があり、指定したデータセットに対してテキストで質問を投げかけることで、その質問に基づく答えを得られます。答えを確認しながらデータの理解を深めて改善のアクションにつなげられる形です。今回のアップデートで、Q&A の回答の精度を上げやすくするためのカスタム指示ができるようになりました。企業固有の同義語などをカスタム指示に指定することで、特有の用語や定義に基づいた回答を生成しやすくなりました。例えば「売上」と「レベニュー」を同義語として設定することで、どちらの用語で質問されても適切な回答を返すことが可能です。Pro Author と Pro Admin の 2 ユーザーが利用できます。詳細はこちらのドキュメントをご参照ください。
  • 7/15(火)
    • Amazon RDS Custom for SQL Server が Change Data Capture をサポート開始
      Amazon RDS Custom for SQL Server で Change Data Capture (CDC) がサポート開始されました。CDC はデータベーステーブルへの挿入、更新、削除をログに記録し、データ変更履歴をアプリケーションから参照できる機能です。データ変更の追跡が必要なアプリケーションで活用でき、RDS Custom for SQL Server が利用可能な全リージョンで提供されています。
    • Amazon S3 が Apache Iceberg テーブル向けに Apache Avro および ORC 形式のコンパクション機能をサポート開始
      Amazon S3で Apache Iceberg テーブルのコンパクション機能が拡張され、従来の Parquet 形式に加えて Apache Avro と ORC 形式もサポートされました。コンパクション機能は、複数の小さなオブジェクトをより少ない大きなオブジェクトに結合することで、パフォーマンスの向上をしやすくする機能です。例えば、日次購入取引、ストリーミングセンサーデータ、広告インプレッション収集などのデータ取り込みおよびストリーミングユースケースにおいて、書き込みパフォーマンスを向上させるために Avro を使用しながら、コンパクション機能も活用できます。詳細はこちらのドキュメントをご参照ください。
    • Amazon EKS がクラスタあたり最大 100,000 ワーカーノードをサポート
      Amazon EKS で最大 100,000 のワーカーノードをサポートしました。今回のアップデートで超大規模な AI/ML ワークロードを単一クラスタで実行できるようになります。例えば、Trn2 インスタンスなら最大 160 万の Trainium チップ、P5・P6 インスタンスなら最大 80 万の GPU を活用可能です。数兆パラメータが求められる最先端 AI モデル構築をしやすくなる、大規模環境における機能アップデートです。詳細はこちらの Blog 記事をご参照ください。
  • 7/16(水)
    • AWS 無料利用枠が $200 のクレジットと 6 か月間の無料プランを提供開始
      AWS Free Tier がアップデートされ、新規ユーザーは最大 200 ドルのクレジットと 6 ヶ月間の無料利用が可能になりました。サインアップ時に 100 ドル、Amazon EC2 や Amazon Bedrock などのサービス利用でさらに 100 ドルを獲得できます。また、「無料プラン」と「有料プラン」のどちらかから選択いただけるようになりました。無料プランは、料金が発生しない形で利用ができ、費用感の肌感覚がなくても安心してご利用いただけます。無料プランの上限に達した際に、有料プランに切り替えることも可能です。一方、無料プランで新規アカウントを登録する際に、不正行為の防止のためクレジットカードを利用した登録が必要です。実際に料金は発生しませんが、登録自体は必要になる点ご留意ください。また、無料プランでは一部のサービスの利用が制限されています。例えば、QuickSight, Kendra, OpenSearch などは利用できません。Kendra などを利用すると 200 ドルの制限を超えやすくなるので、一部の制限があるのかなと個人的に思っています。詳細はこちらの AWS Free Tier サイトドキュメントをご参照ください。
    • Amazon Bedrock AgentCore がプレビューで利用可能に
      Amazon Bedrock AgentCore がプレビューで提供開始されました。個人的に好きなアップデートで、例えば、EC2 などで Strands を利用しながら AI エージェントの開発や精度の確認などのサイクルを回す試行錯誤をします。サイクルの中で、本番運用ができると判断したときに、AgentCore で簡単に本番環境としてデプロイが可能です。説明例として Strands を記載しましたが、CrewAI, LangGraph, LlamaIndex などの慣れているフレームワークがあれば、それを利用いただくことも可能です。また、長時間稼働 (最大 8 時間) やメモリ機能、ストリーミングレスポンス、Web ブラウザ操作、コードを実行する Code Interpreter、MCP 連携機能、オブザーバビリティなども含まれ、本番環境に求められる機能を提供できます。現在バージニア北部、オレゴン、シドニー、フランクフルトリージョンで利用できます。詳細はこちらの Blog 記事をご参照ください。
    • Amazon CloudWatch が生成 AI 可観測性を追加 (プレビュー)
      Amazon CloudWatch で生成 AI アプリケーションの監視機能がプレビュー提供開始されました。従来は AI アプリケーションの各コンポーネント (モデル呼び出し、エージェント、ナレッジベースなど) を個別に確認する手間がありましたが、今回のアップデートで包括的な確認がしやすくなりました。レイテンシやエラー率などのメトリクスを一元的に確認でき、精度が悪い AI の回答の原因が、Vector DB の問題なのか RAG システムのプロンプトによるものかを特定しやすくなります。LangChain や LangGraph といった人気フレームワークにも対応しており、既存の CloudWatch 機能とシームレスに統合されます。現在、バージニア北部、オレゴン、フランクフルト、シドニーの 4 リージョンで利用可能です。詳細はこちらのドキュメントをご参照ください。
    • Amazon EBS が EBS ボリューム初期化ステータスの可視性を提供開始
      Amazon EBS で、スナップショットから作成したボリュームの初期化ステータスが確認できるようになりました。従来はボリューム初期化の完了タイミングが分からず、初期化中にアプリケーションを起動するとパフォーマンスが低下する問題が発生する場合がありました。新機能により初期化の進行状況をリアルタイムで監視でき、完了後にアプリケーションを起動することで最適なパフォーマンスを確保できます。詳細はこちらのドキュメントをご参照ください。
    • AWS Marketplace で AI エージェントとツールを導入
      AWS Marketplace で AI エージェントや AI ツールの提供を開始しました。これまで個別に探す必要があった AI エージェント製品を、一箇所で検索・購入できるようになりました。例えば、Brave Search API Pro や Tavily Enterprise、you.com などの Web 検索機能を AWS の料金として含めながら、AgentCore と連携したエージェントの構築が可能です。AWS 単体だと Web 検索機能の実現が難しかったのが、やりやすくなりました。なお、Web 検索以外も提供をしており、詳細はこちらをご参照ください。
  • 7/17(木)
    • AWS Glue が大規模でメモリ集約的なワークロードに対応する新しいワーカーをサポート
      AWS Glue で新しいワーカータイプが利用可能になりました。従来より大容量な G.12X、G.16X と、メモリ最適化された R.1X、R.2X、R.4X、R.8X の計 6 種類が追加されています。これにより、大規模なデータ変換や複雑な集約処理がより高速に実行できるようになります。特に R シリーズは従来の G ワーカーの 2 倍のメモリを持つため、大量データのキャッシュや集計処理に最適です。詳細はこちらのドキュメントをご参照ください。
    • Amazon AppStream 2.0 が GPU ベースインスタンスのサポートを拡張
      Amazon AppStream 2.0 で Graphics G6 インスタンスのサポートが開始されました。NVIDIA L4 Tensor Core GPU と AMD EPYC プロセッサを搭載し、従来よりも高性能なグラフィック処理が可能になります。CAD や 3D デザインソフト、動画編集などのグラフィックを扱うアプリケーションを、クラウド上でスムーズに動作させることができます。メモリ 16 GB から 384 GB まで、9 つのインスタンスサイズから用途に応じて選択でき、東京リージョンを含む 13 のリージョンで利用可能です。詳細はこちらのドキュメントをご参照ください。
    • Amazon ECS でビルトイン Blue/Green デプロイメントが利用可能に
      Amazon ECS でビルトイン Blue/Green デプロイメント機能が提供開始されました。従来はカスタムデプロイメントツールの構築が必要でしたが、今回のアップデートにより ECS 標準機能として利用可能になります。新バージョンのアプリケーションを既存環境と並行してプロビジョニングし、本番トラフィック切り替え前の検証やデプロイメント失敗時の迅速なロールバックが実現できます。デプロイメントライフサイクルフックによるカスタム検証ステップの実行や CloudWatch Alarms との連携による障害の自動検出も可能で、より安全で迅速なソフトウェアリリースを実現します。詳細はこちらの Blog 記事をご参照ください。
  • 7/18(金)
    • Amazon CloudWatch SDK が最適化された JSON、CBOR プロトコルをサポート (プレビュー)
      Amazon CloudWatch SDK で JSON と Concise Binary Object Representation (CBOR) プロトコルのサポートがプレビュー版として開始されました。レイテンシーの低減とパフォーマンスの向上といったメリットがあります。具体的には、CloudWatch SDK を利用して独自のダッシュボードを SaaS 上で提供している場合に、あらたな JSON と CBOR プロトコルを利用することで、パフォーマンスの向上を得られやすくなりました。すべての AWS リージョンで利用可能です。現在はプレビュー提供なので、まずは検証環境からお試しください。詳細はこちらのドキュメントをご参照ください。

それでは、また来週お会いしましょう!

著者について

Suguru Sugiyama

杉山 卓(Suguru Sugiyama) / @sugimount

AWS Japan のソリューションアーキテクトとして、幅広い業種のお客様を担当しています。最近は生成 AI をお客様のビジネスに活かすためにアイデア出しやデモンストレーションなどを多く行っています。好きなサービスは仮想サーバーを意識しないもの全般です。趣味はゲームや楽器演奏です