Amazon Web Services ブログ
週刊AWS – 2025/5/26週
みなさん、こんにちは。ソリューションアーキテクトの戸塚です。今週も 週刊AWS をお届けします。
早いもので、6 月 25 日(水)、26 日(木)の二日間、日本最大のAWSを学ぶイベント、AWS Summit Japan が開催されます。我々AWSメンバーは一年に一度のこの一大イベントに向けて、準備を進めています。AWS セッションだけでなく、お客様セッションもリアルな実体験が聞けますので、おすすめです。また会場にはDemo展示や、ワークショップ、ハッカソンなどが開催されており、一日中 AWS について楽しく学べるようになっています。会場で皆様にお会いできるのを楽しみにしています。事前登録はこちらから可能です。
それでは、先週の主なアップデートについて振り返っていきましょう。
2025年5月26日週の主要なアップデート
- 5/27(火)
- Amazon RDS for MySQL が Extended Support マイナーバージョン 5.7.44-RDS.20250508 を発表
Amazon RDS for MySQL の新しいExtendedサポートマイナーバージョン 5.7.44-RDS.20250508 がリリースされました。今回のアップデートの重要なポイントは、Extended サポートという MySQL の長期サポートオプションが追加されたことです。通常、MySQL のメジャーバージョンのサポート期間が終了すると、セキュリティパッチや不具合修正が提供されなくなりますが、Extended サポートを利用することで、標準サポート終了後も最大 3 年間、重要なセキュリティパッチやバグ修正の提供を受けることができます。これは、ビジネス要件に応じて、新しいメジャーバージョンへのアップグレードを計画的に進められることを意味します。延長サポートの詳細については、Amazon RDSユーザーガイドおよび価格に関するFAQをご覧ください。 - Amazon Aurora DSQLが一般利用可能に
Amazon Aurora DSQLが一般提供開始となりました。これは、アクティブ-アクティブの高可用性とマルチリージョンの強力な一貫性を備えた、最速のサーバーレス分散型SQLデータベースです。Aurora DSQL を使用することで、事実上無制限のスケーラビリティと最高レベルの可用性を持ち、インフラ管理が不要なアプリケーションを構築できます。単一リージョンで 99.99%、マルチリージョンで 99.999% の可用性を実現するように設計されており、単一障害点がなく、障害からの自動復旧が可能です。マルチリージョンの強力な一貫性により、どのリージョンのエンドポイントに対する読み取りと書き込みも、強力な一貫性と耐久性が保証されます。詳細については、Aurora DSQL の概要ページ、ブログ記事、価格ページ、ドキュメントをお読みください。現時点で東京、大阪リージョンはシングルクラスター構成となります。 - AWS Backup が Amazon Aurora DSQL のサポートを開始
AWS Backup が、常時利用可能なアプリケーション向けのサーバーレス分散型 SQL データベースである Amazon Aurora DSQL のサポートを開始しました。これにより、Aurora DSQLを使用している組織は、AWS Backup の完全マネージド型データ保護機能を活用できるようになります。AWS Backup と AWS Organizations の統合により、組織全体のアカウントにわたって一元的に不変なバックアップを作成・管理し、データ保護を標準化することが可能になりました。Aurora DSQL ユーザーは、AWS Backup の包括的なデータ保護機能を利用できます。具体的には、自動スケジューリング、保持期間の管理、改ざん不可能で論理的にエアギャップされたバックアップボールト、リージョン間およびアカウント間のコピー、そしてコスト効率の高いコールドストレージなどの機能が含まれます。この統合により、バックアップ管理が効率化され、組織は Aurora DSQL と他の AWS リソースにわたってデータ保護戦略を統一することができます。 - AWS Neuron が NxD 推論の 一般提供開始、新機能、および改良されたツールを発表
AWS Neuron の最新バージョン 2.23 がリリースされ、推論、トレーニング機能、開発者ツールにわたる多くの改善が発表されました。この更新の最も重要なポイントは、NxD Inference ライブラリ (NxDI) が一般提供されたことです。このライブラリは、複数チップを使用する推論処理において推奨されるソリューションとなります。Persistent Cache のサポートによりコンパイル時間が短縮され、モデルの読み込み時間も最適化されています。トレーニングワークロードに関しては、NxD Training ライブラリが Llama モデル向けに Context Parallelism のサポート (ベータ版) を導入し、シーケンス長を 32K まで拡張できるようになりました。また、DPOスタイルのデータセットを使用したORPOによるモデルアライメントのサポートも追加されました。サードパーティライブラリのサポートも強化され、PyTorch Lightning 2.5、Transformers 4.48、NeMo 2.1 に対応しています。Neuron Kernel Interface (NKI) では、32ビット整数演算の新機能、Trainium2 向けの改善されたISA機能、新しいパフォーマンスチューニング API が導入されました。
- Amazon RDS for MySQL が Extended Support マイナーバージョン 5.7.44-RDS.20250508 を発表
- 5/28(水)
- Amazon Neptune が MCP (Model Context Protocol) サーバーを発表
Amazon Neptune の新機能として、MCP (Model Context Protocol) サーバーの提供が開始されました。この新しいサーバーにより、開発者やAIアシスタントが Amazon Neptune とより簡単にやり取りできるようになり、生成系AIのワークフローにグラフデータベースのクエリを簡単に組み込むことが可能になりました。MCP サーバーは AWS が提供する Model Context Protocol ツール群の一部として、openCypher や Gremlin といったクエリ言語をサポートし、スキーマの検出や自然言語でのクエリ実行を可能にします。これにより、Amazon Q CLI や Cursor、Claude Code などの MCP 対応ツールと Neptune を連携させることができ、複雑なコードを書くことなく、普通の英語で質問してグラフデータベースからの応答を得ることができます。ナレッジグラフの構築や関係性の分析、AI アシスタントの機能強化など、さまざまなユースケースにおいて、これまで以上に直感的かつ効率的にグラフデータを探索・クエリすることが可能になりました。Amazon Neptune MCP Server は、Amazon Neptune が提供されているすべての AWS リージョンで利用可能になりました。詳しくは、ブログでNeptune MCP Serverの詳細をご覧ください。 - Cost Optimization Hub で Savings Plans と予約の設定をサポート
AWS の請求とコスト管理コンソール内の機能である Cost Optimization Hub に、新しい機能が追加されました。この更新により、Savings Plans や予約インスタンスに関する設定をカスタマイズできるようになり、お客様の希望する契約条件に基づいたコスト最適化の推奨事項と潜在的な節約額を確認できるようになりました。Cost Optimization Hub は、EC2 インスタンスのサイズ最適化、graviton への移行、アイドル状態のリソース、予約インスタンス、Savings Plans などに関する AWS のコスト最適化の推奨事項を簡単に特定、フィルタリング、集計できる機能です。今回の更新で、契約期間を 1 年または 3 年から選択できるようになり、支払いオプションについても全額前払い、一部前払い、前払いなしの中から選択できるようになりました。これにより、お客様の組織が望む契約条件に合わせた、より正確な潜在的な節約額を把握することが可能になります。例えば、組織の方針として 1 年契約のみを検討している場合、その条件に基づいた推奨事項と節約額を確認できるため、より実用的な情報を得ることができます。この機能強化により、組織のポリシーや予算計画に沿ったコスト最適化の検討が、さらに効率的に行えるようになりました。 - AWS Network Firewall が複数の VPC エンドポイントをサポート
AWS Network Firewall に、複数の VPC エンドポイントをサポートする新機能が追加されました。この更新により、1 つのファイアウォールで複数の Amazon VPC に対してセキュリティ保護を提供できるようになりました。AWS Network Firewall は、AWSが提供するマネージド型のクラウドネイティブなファイアウォールサービスで、すべてのAmazon VPC に必要なネットワーク保護を簡単に導入することができます。これまでは1つのファイアウォールに対して1つの VPC エンドポイントしか設定できませんでしたが、今回のアップデートにより、1つのアベイラビリティゾーンあたり最大 50 個の VPC エンドポイントを関連付けることが可能になりました。これにより、複数の VPC のトラフィックを 1 つのファイアウォールで一元的に検査できるようになり、運用の複雑さを軽減し、コストを削減することができます。 - Amazon FSx for NetApp ONTAP が ONTAP FlexCache ボリュームのライトバックモードをサポート
Amazon FSx for NetApp ONTAP において、ONTAP FlexCache ボリュームの write-back モードがサポートされるようになりました。Amazon FSx for NetApp ONTAPは、NetAppの人気ファイルシステム ONTAP をベースにした、フルマネージド型の共有ストレージサービスです。今回のアップデートにより、複数の AWS リージョンやオンプレミス環境に分散された書き込み負荷の高いワークロードで、より高速なパフォーマンスを実現できるようになりました。FlexCacheは、データへの分散アクセスを可能にする ONTAP のキャッシュ技術です。これまでは、write-around モードのみがサポートされており、FlexCache ボリュームへの書き込み操作は、必ず元のボリュームに戻って確認される必要があったため、書き込みの遅延が大きくなっていました。今回のアップデートで導入されたwrite-backモードでは、FlexCache ボリュームにローカルで書き込みをキャッシュし、非同期で元のボリュームを更新することで、書き込み遅延を削減します。これにより、複数のAWSリージョン間やクラウドとオンプレミス環境間で運用が必要な、コンテンツ共同作成、分散データベース、エンジニアリングワークフローなどの書き込み負荷の高い分散アプリケーションのパフォーマンスを向上させることができます。このアップデートは、地理的に分散したチームでの作業や、グローバルなデータ処理を必要とするビジネスにとって、特に有益な機能強化となります。詳細については、FSx for ONTAP ユーザーガイドを参照してください。
- Amazon Neptune が MCP (Model Context Protocol) サーバーを発表
- 5/29(木)
- Amazon OpenSearch Service が スクリプトプラグイン をサポート
Amazon OpenSearch Service に新機能が追加されました。この新機能により、Script プラグインのサポートが開始されました。これは、検索やインデックス作成時のスコアリング、ソート、フィールド値の変換などの操作のために、新しいスクリプト言語やカスタムスクリプト機能を OpenSearch に追加できるようになるものです。これまでは、カスタムプラグインを使用して OpenSearch の検索と分析機能を拡張することはできましたが、今回のアップデートにより、カスタムプラグインの一部として ScriptPlugin インターフェースを実装し、OpenSearch のスクリプト機能を拡張できるようになりました。OpenSearch Service のコンソールや API を使用して、カスタムプラグインをアップロードし、ドメインに関連付けることができます。その際、OpenSearch Service は、プラグインパッケージのバージョン互換性、セキュリティ、許可されたプラグイン操作について検証を行います。 - AWS DataSync がクラウド間のデータ転送を簡素化し高速化
今回のアップデートにより、他のクラウドプロバイダーのストレージと Amazon S3 の間で、直接データを転送できるようになりました。これまでは DataSync エージェントの導入が必要でしたが、その必要がなくなり、より簡単にデータ転送が可能になりました。対応している他社クラウドのストレージサービスには、Google Cloud Storage、Microsoft Azure Blob Storage、Oracle Cloud Object Storage が含まれます。新機能では、DataSync Enhanced mode を使用することで、データの準備、転送、検証を並列処理し、より高速な転送速度を実現します。また、事実上無制限のオブジェクト数に対応し、詳細なメトリクスとレポート機能を使用して転送状況を監視することができます。この機能強化により、他のクラウドから AWS へのデータ移行やデータパイプラインの構築がより効率的になり、お客様は複雑なエージェント設定なしで、シンプルにクラウド間のデータ転送を実現できるようになりました。特に、複数のクラウドサービスを利用している企業や、クラウド移行を検討している組織にとって、大きなメリットとなる機能です。詳細は、DataSyncのドキュメントを参照ください。 - AWS サーバーレスおよびコンテナ向けの新しい Model Context Protocol (MCP) サーバーを発表
AWS Lambda、Amazon ECS (Elastic Container Service)、Amazon EKS (Elastic Kubernetes Service)、そして Finch 向けの Model Context Protocol (MCP) サーバーのリリースを発表しました。MCP サーバーは、AI コードアシスタントが AWS のサーバーレスやコンテナサービスをより深く理解し、より効果的に開発支援を行うための標準インターフェースです。このアップデートにより、開発者はAIアシスタントを活用して、より迅速にアイデアを本番環境へと展開できるようになります。MCP サーバーの特徴は、AWSの運用ベストプラクティス、Well-Architected フレームワークの原則、そしてサービス固有の最適化を組み込んでいる点です。これにより、開発者は自然言語で要件を説明するだけで、AI コードアシスタントがサービスの設定やインフラのセットアップ、サービス間の連携を適切に処理できます。また、MCP サーバーは、ログ記録、モニタリング、セキュリティ制御、トラブルシューティングなどの運用面でも AI による支援を提供し、運用管理を大幅に簡素化します。このアップデートは、特にAWSの技術に詳しくない開発者にとって、複雑な AWS サービスの利用をより身近なものにし、効率的な開発を可能にする重要な進化といえます。AI アシスタントがAWSのベストプラクティスに基づいて適切なガイダンスを提供することで、より信頼性の高いアプリケーション開発が実現できるようになります。AWS ServerlessとContainers 用の MCP サーバーの詳細と、それらがAI支援アプリケーション開発をどのように変革できるかについては、AWS News Blogをご覧ください。
- Amazon OpenSearch Service が スクリプトプラグイン をサポート
- 5/30(金)
- Mountpoint for Amazon S3 で fstab を使用した S3 バケットの自動マウントが可能に
Amazon S3 のバケットをマウントするためのツール「Mountpoint for Amazon S3」に、新しい機能が追加されました。EC2 インスタンスの起動時に S3 バケットを自動的にマウントできるようになりました。この機能により、インスタンスの起動時やリブート時に毎回手動でマウントする必要がなくなり、より簡単に S3 バケットを利用できるようになります。これまでは、EC2 インスタンスを起動するたびに手動でマウント作業を行い、マウントオプションが正しく設定されているかを確認する必要がありました。今回のアップデートでは、Linux システムの標準的な設定ファイルである fstab に Mountpoint の設定を追加することで、自動マウントが可能になります。fstab は Linux システム管理者がよく使用するファイルで、コンピュートインスタンス上の全てのマウントポイントの情報を一元管理するために使われています。 - AWS Pricing Calculatorが一般提供を開始し、割引と購入コミットメントに対応
AWS Pricing Calculator が、AWSコンソールで一般提供開始となりました。この新しいツールでは、ワークロードのコスト見積もりと AWS の請求全体の見積もりという 2 種類の見積もり機能を提供します。お客様は過去の使用状況をインポートしたり、新規の使用量を設定したりしてコストを見積もることができます。さらに、AWS Pricing Calculator では3つの料金設定オプションが用意され、割引や既存の契約を含めた見積もりが可能になりました。これにより、AWS の価格設定や数量割引、既存の契約がワークロード全体の見積もりコストにどのように影響するかを確認できます。新しい料金設定機能では、価格割引と購入契約の両方を含めることで、コストシナリオにおける潜在的な節約額とコスト最適化をより明確に把握できます。この機能は、Savings Plans や Reserved Instance などの既存の契約が AWS 全体のコストにどのような影響を与えるかを理解したい組織にとって特に有用です。 - Amazon Redshift の RA3 プロビジョニングクラスターでクラスター再配置がデフォルトで有効に
Amazon Redshift の RA3 プロビジョンドクラスターにおいて、クラスターの再配置機能がデフォルトで有効になりました。この機能は、新しいクラスターを作成する場合やスナップショットから復元する場合に適用されます。クラスターの再配置機能とは、リソースの制約によってクラスターの運用に支障が出た場合に、クラスターを別のアベイラビリティゾーン (AZ) に移動できる機能です。移動後も同じエンドポイントを維持するため、アプリケーション側での変更は不要です。Amazon Redshift はすでにドライブやノードの障害を自動的に検知して復旧する機能を備えていますが、クラスターの再配置機能により、AZレベルの問題に対する可用性保護がさらに強化されました。紹介はドキュメントを参照ください。 - AWS 向け Red Hat Enterprise Linux の提供開始を発表
Red Hat社とAWSが共同で提供する新しいサービス「 Red Hat Enterprise Linux (RHEL) for AWS 」が、 RHEL 10 から一般提供開始されることが発表されました。このサービスは、Red Hatの企業向けLinuxソフトウェアとAWSのネイティブ統合を組み合わせた画期的なソリューションです。AWS上でRHELを最適な状態で実行できるように特別に設計されており、AWSに特化した性能プロファイルで事前にチューニングされたイメージを提供します。主な特徴として、 Amazon CloudWatch との連携による監視機能、AWS Command Line Interface (CLI) の統合、コンテナネイティブツールを使用したイメージモード、起動時からランタイムまでの強化されたセキュリティ、そしてElastic Network Adapter (ENA) のサポートによる最適化されたネットワーク機能が含まれています。詳細は、Red Hat Enterprise Linux on Amazon EC2 FAQs ページを参照してください。 - Amazon MWAA でタスク実行を中断せずに環境を更新できるように
Amazon Managed Workflows for Apache Airflow (MWAA) において、実行中のタスクを中断せずに環境をアップデートできる機能が追加されました。この機能は Apache Airflow バージョン 2.4.3 以降でサポートされています。Amazon MWAA は、ワークフローのオーケストレーションに使用される Apache Airflow を管理型サービスとして提供するものです。これまでは環境のアップデート時に実行中のタスクが中断されてしまう課題がありましたが、今回のアップデートでより柔軟な運用が可能になりました。具体的には、新しいアップデートオプションを選択することで、Airflowのスケジューラーとウェブサーバーコンポーネントの置き換え、新しいワーカーの準備、そして実行中のワーカータスクの完了を待ってから古いワーカーを削除するという、段階的なアップデートプロセスが実現できます。これにより、ビジネスの継続性を保ちながら、システムの更新が可能になります。特に大規模な環境や重要なワークフローを実行している場合に、このアップデート機能は非常に有用です。
- Mountpoint for Amazon S3 で fstab を使用した S3 バケットの自動マウントが可能に
それでは、また来週お会いしましょう!