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AWS、AWS Summit New York 2025 にて AI エージェント構築に向けた新たなイノベーションを発表

本記事は米国時間 7 月 16 日に公開された「AWS announces new innovations for building AI agents at AWS Summit New York 2025」の日本語抄訳版です。

Amazon Bedrock AgentCore に加え、AWS Marketplace の新たなカテゴリーとAgentic AI開発の後押しに向けた1億米ドルの投資を発表

主なポイント:

  • Amazon Bedrock AgentCore により、企業・組織は AgentCore の7つのコアサービスを活用し、安全な AI エージェントをエンタープライズ規模で導入・運用することが可能に
  • AWS Marketplace の新カテゴリー追加により、企業・組織は有力プロバイダーによる AI エージェントやツールを簡単に見つけ、調達し、導入することが可能に
  • 生成AIイノベーションセンター に 1 億米ドルを追加投資し、Agentic AI の開発・展開のさらなる加速を支援
  • Amazon Nova の新たなカスタマゼーション機能により、企業・組織のニーズにあった精度と柔軟性を実現

アマゾン ウェブ サービス(AWS)はこれまで、クラウドコンピューティングにおけるセキュリティ、信頼性、データプライバシーの基準を築いてきました。AWS は今回、AI エージェントの構築を支援する新たな機能とツールの発表により、同じ原則を Agentic AI にも適用します。お客様はこれにより、AWS の堅牢なテクノロジー基盤の上に AI エージェントを構築できるようになります。なかでも、Amazon Bedrock AgentCore は、お客様による高機能な AI エージェントのセキュアかつスケーラブルな導入・運用を支援するものです。

AWSで Agentic AI を統括するバイスプレジデントであるスワミ・シバスブラニアン(Swami Sivasubramanian) は AWS Summit New York の基調講演に登壇し、AWS における Agentic AI 戦略の要点を説明しました。AI エージェントは AI を活用して推論・計画・適応し、タスクを完了する自律的なソフトウェアシステムであり、あらゆる業界でイノベーションを加速させ、生産性を大きく向上させると述べました。

シバスブラニアンは次のように述べています。「これは複数の点で地殻変動のような大きな変化です。ソフトウェアの構築方法が根本から変わり、その展開・運用においても多くの新しい課題が浮上してきています。そして最も大きな影響として、ソフトウェアと世界との関わり方、そして私たちとソフトウェアの関係そのものが変わります」

Amazon Bedrock AgentCore で AI エージェントを大規模に展開・運用

Amazon Bedrock AgentCore

AgentCore は高性能な AI エージェントを導入・運用するための、包括的なサービス群です。あらゆるAIフレームワークやモデルをご利用いただけます。

AI エージェントの導入を進めるなか、企業・組織は重要な課題に直面しています。それは、セキュリティ、信頼性、ガバナンスといったエンタープライズレベルの基準を満たしながら、デジタルの境界を越えて自律的に動作するシステムを構築することです。

AgentCore は、AI エージェントにおける概念実証(PoC)から本番運用に至るまでの重要なギャップを開発者が乗り越えるのを支援します。プロトタイプから、数百万ものエンドユーザーに対応できる拡張性の高いアプリケーションへと移行するための、多様な組み合わせが可能なソリューション群を提供します。Itaú Unibanco、Innovaccer、Boomi、Epsilon、Box といった AWS のお客様がすでに AgentCore を使った開発を始めています。

Amazon Bedrock AgentCore の主なサービス:

AgentCore Runtime — エージェントには安全性を確保しつつ、変動するワークロードにも対応できる柔軟な実行環境が必要です。AgentCore Runtime は、低遅延でインタラクティブなエクスペリエンスと、業界最長となる最大8時間の複雑な非同期ワークロードの処理をサポートします。また、すべてのセッションを完全に分離可能な、唯一のフレームワーク非依存のサービスです。

AgentCore Memory — 人間が短期記憶と長期記憶の両方を活用するように、エージェントも効率的に動作するためには複雑なメモリ基盤が必要です。AgentCore Memory は、業界トップクラスの精度で短期記憶と長期記憶を提供し、開発者がコンテキストを理解するエージェントをより簡単に構築できるようにします。

AgentCore Identity — エージェントがユーザーのリクエストを実行するには、適切な認証を通じてツールやリソースへ安全にアクセスできる必要があります。AgentCore Identity は、Amazon Cognito、Microsoft Entra ID、Okta などユーザー認証とアクセスコントロールを一元管理を支援する、既存の アイデンティティ(ID) プロバイダーと連携し、シームレスかつ安全なエージェント認証を実現します。

AgentCore Gateway — AI エージェントが実世界のタスクを実行するには、多様なツールへのアクセスが欠かせません。AgentCore Gateway は、API、Lambda 関数、既存のサービスをエージェント対応のツールへ簡単に変換できる仕組みに加え、エージェントがツールを安全に発見・利用できる手段を提供します。

AgentCore Code Interpreter — AI エージェントが複雑な計算を実行、推論を検証し、データを処理し、ビジュアルを生成するためには、サンドボックス環境でコードを安全に記述・実行できる必要があります。AgentCore Code Interpreter を使えば、開発者は特定のインスタンスタイプやセッション設定を指定して、安全なコード実行環境を用意し、セキュリティ要件に対応することが可能です。

AgentCore Browser Tool — AgentCore Browser Tool は、モデルに依存しない高速かつ安全なクラウドベースのブラウザで、AI エージェントがフォーム入力やウェブサイトの操作といったタスクを大規模に実行できるようにします。

AgentCore Observability — 本番環境でのパフォーマンスを確保するには、エージェントのあらゆる動作を追跡・記録できることが重要です。AgentCore Observability は Amazon CloudWatch を基盤とし、主要なメトリクスに関するテレメトリーや組み込みダッシュボードを通じて、開発者にリアルタイムの可視性を提供します。また、既存のオブザーバビリティツールとも統合可能です。

企業のAIエージェント活用をよりシンプルにするAWS Marketplace 新カテゴリー

New AWS Marketplace Category

シバスブラニアンは AWS Summit New Yorkで、AWS Marketplace の新カテゴリー「AIエージェントとツール」の追加を発表しました。これにより、お客様は有力プロバイダーが提供する AI エージェントやツールを簡単に見つけ、調達し、導入・管理できるようになります。

AWS Marketplace の「AIエージェントとツール」カテゴリーを使えば、お客様は AI エージェントソリューションやツールをワンストップで検索・購入でき、AI 活用の取り組みを迅速に進めることができます。このカテゴリーを活用することで、すぐに統合できるツールを使って開発を加速できるだけでなく、エージェントの構築・運用・スケーリングを専門とする AWS プロフェッショナルサービスと連携しながら、AI 戦略を前進させることも可能です。

AWS 生成AIイノベーションセンターへの追加投資を発表

AWS Invests Additional S100 in GenAI Innovation Center

お客様による自律的な Agentic AI システムの開発を加速するため、AWS は 生成 AI イノベーションセンター に 2 回目となる 1 億米ドルの追加投資を行うことを発表しました。これは、過去 2 年間にわたって世界中の数千社に及ぶお客様を支援し、生産性の向上や顧客体験の変革を後押ししてきた実績を踏まえたものです。

例えば、Warner Bros. Discovery Sports Europe は、Amazon Bedrock、Anthropic の Claude 3.5、その他の AWS サービスを活用し、自転車レースの実況担当者が素早く過去の記録などを調べることができる AI ソリューションを開発しました。また BMW は、2,300 万台以上に達するコネクテッドカーに対するネットワーク障害の診断方法を一新する AI ソリューションを AWS 上に構築しました。Syngenta や AstraZeneca といった企業も、Agentic AI によって業務に大きな変化をもたらしています。

AWS 生成AIイノベーションセンターには、AI サイエンティスト、ストラテジスト、エンジニアからなるグローバルチームが在籍しており、企業をはじめとするお客様やパートナーと直接連携しながら、AI 実装における最も複雑な課題の解決に取り組んでいます。

AWS Summit New York のその他の発表

Amazon Nova の新しいカスタマイズ機能:より高精度で柔軟なモデルの構築が可能に

Customization for Amazon Nova

Amazon SageMaker AI 上で動作する Amazon Nova に新たなカスタマイズ機能が追加され、SageMaker HyperPod のサポートも加わりました。これにより、お客様は Nova を自社のニーズにさらに合わせて最適化できるようになります。また、Nova Act SDK強化を通じて、精度向上に加え、セキュリティやアクセス制御が拡張されました。これにより、開発者はウェブブラウザ上で確実に動作するエージェントを構築できるようになります。

Amazon S3 Vectors を発表

Amazon S3 Vectors は、AI ワークロードをサポートする初のクラウドオブジェクトストレージです。Amazon S3 Vectors により、お客様は従来の方法と比較し、ベクトルの保存とクエリのコストを最大 90% 削減できます。大規模なベクトルデータセットを保存・活用して AI を強化したり、S3 データのセマンティック検索において、コストパフォーマンスの高いソリューションを提供します。Amazon Bedrock Knowledge Bases や OpenSearch Service と連携し、検索拡張生成(RAG)やベクトル検索の運用を効率化・低コスト化します。

Kiro:プロトタイプからプロダクションまでを橋渡し

Kiro は、AI エージェントを活用したソフトウェア開発に取り組む開発者向けの新しい IDE(統合開発環境)です。開発体験をシンプルにし、AI エージェントとのコラボレーションをより身近なものにします。Kiro を使えば、vibe coding だけでなく、Kiroスペックや Kiroフック といった機能を活用して、エージェントと一緒に詳細な設計を進めたり、テストの実行やドキュメント生成などのタスクを自動で実行するワークフローを起動したりできます。

Agentic な世界での構築を後押しする新たな MCP リソース

Model Context Protocol(MCP) は、エージェントがデータソースやツール、メモリバンクなどに接続するための新たな標準仕様です。今回発表した ローカル AWS API MCP サーバー は、AWS の API 全体に関する知識を完全に備えており、開発者が AWS と連携しながら vibe coding を行えるようにします。これにより、あらゆるソフトウェアアシスタントが AWS に精通することがより簡単になります。さらに、2つ目のリソースとして提供される AWS Knowledge MCP サーバー は、AWS のドキュメントに関する包括的な知識を常に最新の状態で保持した MCP で、完全にマネージドかつ継続的に更新され、任意の MCP クライアントからリモートで利用可能です。

TwelveLabs の AI モデルが Amazon Bedrock で利用可能に

TwelveLabsの AIモデル は、映像・音声・テキストを同時に処理することで、動画ライブラリを検索可能で活用しやすい資産へと変換します。お客様は自然言語のプロンプトを使って、目的のコンテンツを瞬時に見つけ、アクションをとることができるようになります。これらすべてが、AWS のセキュリティ、プライバシー、パフォーマンスのもとで提供されます。AWS は TwelveLabs のモデルを提供する初のクラウドプロバイダーです。

AWS と Meta がスタートアップ支援で連携

AWS と Meta は、Metaの基盤モデルであるLlama を活用したAI アプリケーション構築を支援するため、米国のスタートアップ 30 社を対象に、1 社あたり最大 20 万ドル分の AWS クレジットと、Meta および AWS の専門家による技術サポートを提供します。この 6 か月間のプログラムへの参加応募は、2025年8月8日までです。Llama モデルを使った最先端の AI アプリケーション開発を後押しすることで、AI イノベーションを加速させます。

Strands 1.0 により、AI エージェント同士の連携がより簡単に

AWS は、オープンソース SDK Strands Agents のアップデートも発表しました。これは、複数の AI エージェントが連携して複雑な課題を解決するシステムを、これまでにないほど簡単に構築できる開発者向けツールです。従来は数か月かかっていた複雑な技術作業を、わずか数時間のプロセスに短縮できるため、企業はカスタマーサービス、データ分析、その他の高度なタスクを担う協調型 AI アシスタントのグループを構築しやすくなります。

ゲーミフィケーションで AI スキルを習得できる「AWS AI League」

AWS は、開発者が 生成AI を使って実世界の課題に挑戦しながら、組織内でのイノベーションに不可欠なスキルを習得できる「AWS AI League」を開始しました。このプログラムでは、開発者がファインチューニング、モデルのカスタマイズ、プロンプトエンジニアリングなどを実践的に学ぶため、最大 200 万ドル分の AWS クレジットを提供します。上位入賞者には、AWS re:Invent への全額負担の招待旅行や賞金が贈られます。

AWS、AI 時代のキャリアに備える若手人材育成に 300 万米ドルを投資

AWS は、6,600 以上の AWS Academy 加盟校の学生に対し、AWS Skill Builder の有料トレーニングコンテンツと AWS 認定試験の受験バウチャーを無償で提供し、AI 時代に求められるスキルの習得を支援します。また、Academy に属さない学生や新卒者も、将来有望なキャリア分野に関する調査レポートや、それにもとづくAWS Skill Builder 上の無料学習プランを活用してキャリア形成に活かすことができます。AWSは、初年度にグローバルで270万人の学生及び新卒者の参画を目標としています。