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【開催報告】スマートニュース/AWS 共催ビジネスワークショップ:データコラボレーションによる新たな広告ソリューションの実現
はじめに
AWS では、データコラボレーションサービスの提供を超えて、様々な業界の企業間でのデータコラボレーションを加速できるような機会創出にも力をいれています。2025 年 9 月、スマートニュース/AWS共催で広告・マーケティング領域におけるデータコラボレーションワークショップを開催しましたので、ワークショップの開催背景と当日の内容をご紹介いたします。
スマートニュース株式会社が提供する「SmartNews」では、日本最大級のユーザー数を誇るニュースアプリとして多様なユーザーの興味関心データを保有している他、「SmartNews Ads」の広告パフォーマンスデータも保有しています。一方で、データコラボレーションの実現には、セキュリティやプライバシー保護、異業種間でのデータ活用ノウハウの共有という課題がありました。
これらの課題に対応するため、AWSとスマートニュース は共同でワークショップを企画しました。「小売・EC」「メディア」「データ・リサーチ」「航空」等の業界 6 社からお集まりいただき、データコラボレーションのユースケースやAWS Clean Rooms を活用したセキュアなデータ連携の方法について議論しました。さらに、各社が保有するデータ資産を活かした具体的なアクションプランを策定できる場を提供することを目指しました。
開催概要
アジェンダ:
- 開会のご挨拶 / 参加企業ご紹介
 - SmartNews のソリューションのご紹介
 - AWS コラボレーションテクノロジーのご紹介
 - テーブル別ディスカッション
 - Next Step のご案内 / 閉会のご挨拶
 - 懇親会
 
前半をセミナー、後半をディスカッションと分けて開催いたしました。後半のディスカッションでは、各企業ごとにデータコラボレーションする際の協業内容について議論を行いました。
データコラボレーションの基本
データコラボレーションとは
本ワークショップのメインテーマであるデータコラボレーションについてご説明します。データコラボレーションとは複数の組織が保有するデータを安全かつ効果的に共有・統合・分析し、単独では得られない洞察や価値を生み出す取り組みです。例えば、メディア企業と小売業が匿名化された顧客データをコラボレーションすることで、より精緻なマーケティング戦略の立案や広告効果測定の高度化が可能になります。重要なのは、各組織のデータプライバシーとセキュリティを維持しながら、必要な情報のみを共有することです。これにより、安全性を確保しつつデータの価値を最大化することができます。
なぜ今データコラボレーションが注目されているのか
データコラボレーションの注目が高まっている背景には、デジタル化の加速、消費者行動の複雑化、個人情報を含むデータの保護に関する規制環境の整備があります。さらに 1st party data (自社で直接収集したデータ) の重要性が増していることも大きな要因です。サードパーティ Cookie の廃止や個人情報保護の厳格化に伴い、企業は自社の顧客データをより効果的に活用し、同時に他社のデータと安全に連携する必要性が高まっています。このデータ活用と連携が、企業の競争優位性を生み出す鍵となっています。実際、多くのグローバル企業がデータコラボレーション強化を推進しており、日本においても今後のビジネス戦略において重要な役割を果たすことが予想されます。
各セッションのハイライト
SmartNews のソリューションのご紹介
スマートニュース株式会社 執行役員 日本広告事業責任者 兼 社長室長 西出 拓氏
スマートニュース 西出氏より、SmartNews の広告ソリューションと今後のデータ活用の展望についてご紹介いただきました。SmartNews は日本最大級のユーザー数を誇るニュースアプリとして、老若男女・地域問わず日常利用されており、「SmartNews Ads」についてもリーチから、想起、理解、利用意向、初回/継続購買までフルファネルでご提供する広告ソリューションを展開しています。
データソリューションの領域では、AWS Clean Roomsを活用して、広告パフォーマンスデータに加えて、ユーザー属性や閲読行動を活用したソリューションを開発中である旨を説明されました。今回のワークショップを通じて、参加企業の皆様との協業により、ブランドリフト調査や効果測定などの領域で新たな価値創造を目指していきたいとのことでした。
AWS のコラボレーションテクノロジー
アマゾン ウェブ サービス ジャパン 合同会社 シニアソリューションアーキテクト 石見和也
AWS  Japan 石見より、データコラボレーションを AWS 上で実現する方法についてご説明を行いました。まずはデータコラボレーションを支える AWS Clean Rooms というマネージドサービスについてご紹介しました。主な特徴として、セキュアなデータ共有、SQL を用いた柔軟な分析環境、実行する SQL の制御機能、緻密なアクセス制御、大規模データセットに対するスケーラビリティがあります。このサービスにより、企業は自社データを保護しつつ、連携先企業とのデータコラボレーションを実現し、新たなビジネス機会を創出できます。これに加えて新機能で企業間で類似セグメントの作成を支援する AWS Clean Rooms ML、名寄せのサービスである AWS Entity Resolution のご説明をいたしました。
テーブル別ディスカッション
ワークショップのメインとなったテーブル別ディスカッションでは、具体的なデータコラボレーションのユースケースについて活発な議論が交わされました。参加企業の皆様には事前に各社のデータ資産や活用課題を伺った上で、実践的なユースケースを準備したことで、より深い議論が可能となりました。
あるテーブルでは、意識データとニュース閲覧データを組み合わせた広告セグメントの説明性向上について話し合われ、ブランドリフト層の深いインサイト可視化やインターゲット率の証明に注目が集まりました。別のテーブルでは、会員データや購買データとの連携による効果測定の高度化が議論され、データクリーンルームを活用した安全なデータ突合の可能性が探られました。さらに別のテーブルでは、位置情報データを活用した来店計測やブランドリフト調査について、具体的な協業の進め方が検討されました。
お客様の声
本ワークショップは、広告・マーケティング領域におけるデータコラボレーションの可能性を探る貴重な機会となりました。参加企業の皆様からは、「昨今の潮流を踏まえて何ができるか色々議論できて良い機会だった」「ビジネスの協業の可能性を、テクノロジーの観点でも裏付けしながら議論を進めることができた」「具体的な提案打ち合わせではなく、複数社でオープンディスカッションができる機会というのが新鮮で予想していなかった協業の可能性が見えた」といった前向きな声を多数いただきました。ワークショップ後も、各社との具体的な協業に向けた議論が継続しており、データコラボレーションに対する高い期待が伺えます。
おわりに
本ワークショップを通じて、データコラボレーションによる新たな広告・マーケティングソリューション創出の大きな可能性と、参加企業の皆様の熱意を肌で感じることができました。ここに改めて、ご参加いただいた企業の皆様、そして共催である スマートニュース社の皆様に心より感謝申し上げます。AWS は、今後もこの様なデータコラボレーションを推進する取り組みのご支援や、皆様に役立つ情報をセミナーやブログで発信していきます。どうぞよろしくお願い致します。
本ブログは、ソリューションアーキテクト石見が担当しました。

