Amazon Web Services ブログ

Billing and Cost Management MCP サーバーの発表

はじめに

AWS Billing and Cost Management Model Context Protocol(MCP)サーバーの導入により、モダンなクラウドチームで FinOps 機能を活用するのがさらに簡単になりました。これにより、お好みの AI アシスタントやチャットボットが高度なコスト分析と最適化機能を直接利用できるようになります。MCP サーバーは、自然言語クエリ、安全なローカル認証情報や AWS アカウントのコストと使用状況データへのリアルタイムアクセスを統合することで、複雑なコンソールを操作したり、カスタムスクリプトを作成したりすることなく、インタラクティブにコストを分析し、節約の機会を特定し、詳細な FinOps 監査を実行できるようにします。先月の最も支出の多いサービスについて尋ねる場合でも、リソースを最適化するための実行可能な推奨事項を探す場合でも、これらの機能はコストの透明性と運用効率性を合理化し、クラウドの財務管理をより迅速かつ簡単にします。

Billing and Cost Management MCP サーバーの仕組み

Billing and Cost Management MCP サーバー(billing-cost-management-mcp-server)は、AI エージェントがリアルタイムにデータソースに接続するための標準化された方法を提供します。これは、AI アシスタントとAWS Cost Explorer、AWS Cost Optimization Hub、AWS Compute Optimizer、Savings Plans、AWS Budgets、Amazon S3 Storage Lens や AWS Cost Anomaly Detection との架け橋となることで機能します。MCP サーバーは、自然言語による質問を変換し、要件を解析し、関連サービスへ問い合わせ、複数のサービスからの出力を処理して、わかりやすい回答をまとめて提供します。

なぜ使うのか?

クラウドコストを管理していて、より少ない労力でよりスマートな財務上の意思決定を行うことを目指しているなら、Billing and Cost Management MCP サーバーは生産性を向上させるために必要なツールです。このツールを使うことで、お好みの AI アシスタントやチャットボットを通じて、AWS のコスト分析および最適化機能に直接アクセスできます。つまり、コンソールを操作したり、カスタムスクリプトを書いたりすることなく、自然言語で尋ねるだけで複雑なコストクエリを実行できるということです。あなたがクラウド財務アナリスト、クラウドアーキテクト、DevOps エンジニア、または FinOps チームの一員であるかどうかにかかわらず、支出を監視し、節約の機会を特定し、そしてクラウドリソースを効率的に運用し続けることが容易になります。AWS の財務データへのリアルタイムアクセス、予算の使用状況に対する透明性の向上、またはすぐに実践できる実用的な洞察などのメリットがあります。Billing and Cost Management MCP サーバーは、ワークフローを合理化し、詳細なコスト分析をより迅速かつ利用しやすくすることで、クラウドの財務管理をコントロールできるようにします。

開始方法

Amazon Q Developer CLI、Claude Desktop、Kiro やその他の MCP 互換ツールなどさまざまな MCP ホストが billing-cost-management-mcp-server を利用できます。この投稿では、Amazon Q Developer CLI の例に焦点を当てます。

前提条件

  • AWS アカウントで Cost Explorer が有効になっていること
  • AWS Command Line Interface (AWS CLI) をインストールし、AWS CLI で AWS アカウントへアクセスできること
  • AWS Identity and Access Management (IAM) ユーザー がこのブログに記載されているサービスの権限をもっていること
  • IAM 権限に最小権限の原則を適用していること
  • (オプション) Amazon Q for command line がインストールされていること。インストール前に、サポートされているコマンドライン環境を参照してください
  • AstralGitHub README から uv をインストールしていること
  • uv python install 3.12 を使用して Python をインストールしていること
  • 必要なサービスにアクセスできるように AWS クレデンシャルを設定していること
  • MCP クライアントの設定に MCP サーバーを追加していること

Storage Lens

Storage Lens のデータを使用する MCP ツールの呼び出しでは、以下も必要です。

エクスポートが有効化された Storage Lens ダッシュボード:

  • Storage Lens ダッシュボードの設定がメトリクスのエクスポートを有効にしていること
  • エクスポートは、CSV または Parquet フォーマットで S3 バケットに書き込めるように設定されていること

AWS 権限:

  • マニフェストとデータファイルを読み取るための S3 権限
  • データベースおよびテーブルの作成とクエリ実行できる Athena 権限
  • Athena カタログのための Glue 権限

MCP クライアントの設定で MCP サーバーの設定をしてください。Amazon Q Developer CLI では ~/.aws/amazonq/mcp.json ファイルに追加します。

For Linux/MacOS Users:

{
  "mcpServers": {
    "awslabs.billing-cost-management-mcp-server": {
      "command": "uvx",
      "args": [
         "awslabs.billing-cost-management-mcp-server@latest"
      ],
      "env": {
        "FASTMCP_LOG_LEVEL": "ERROR",
        "AWS_PROFILE": "your-aws-profile",
        "AWS_REGION": "us-east-1"
      },
      "disabled": false,
      "autoApprove": []
    }
  }
}
JSON

For Windows Users:

{
  "mcpServers": {
    "awslabs.billing-cost-management-mcp-server": {
      "command": "uvx",
      "args": [
         "--from",
         "awslabs.billing-cost-management-mcp-server@latest",
         "awslabs.billing-cost-management-mcp-server.exe"
      ],
      "env": {
        "FASTMCP_LOG_LEVEL": "ERROR",
        "AWS_PROFILE": "your-aws-profile",
        "AWS_REGION": "us-east-1"
      },
      "disabled": false,
      "autoApprove": []
    }
  }
}
JSON

その他 Docker デプロイメントやチーム用の IDE については、AWS MCP Servers GitHub リポジトリのインストールガイドを参照してください。

コストに関する考慮事項

AWS サービスの API では、リクエストごとに料金が発生します。この MCP サーバーによって行われる各 API 呼び出しは、AWS アカウントに請求されます。最新の価格情報については、それぞれのサービス API 料金を確認してください。

現在の AWS サービスのコスト使用状況はどうなっていますか?

図 1:現在の AWS サービスのコスト使用状況を示す MCP の応答

コスト最適化の推奨事項を取得して、最も節約できる推奨事項の詳細を表示してください

図 2:最も節約できる最適化の推奨事項を示す MCP の応答

すべての AWS リージョンの支出を比較してください

図 3: AWSリージョン全体での支出を示す MCP の応答

AWS 支出に大きな変化や変動がないかを特定、定量化するために、2025 年 6 月から 7 月のコストを比較分析してください

図 4:2025 年 6 月から 7 月までのコストを比較した MCP の応答

既存の AWS ワークロードを Graviton ベースのインスタンスへ移行した場合のコスト節約の可能性を評価してください

図 5:Graviton コストに関する MCP の応答

2025 年 7 月にコストが増加した理由を見極めるために分析を実施し、根本原因を特定してください

図 6:コスト増加原因を示す MCP の応答

過去 6 か月間の S3 ストレージの GB/月あたりのコストを教えてください

図 7:GB/月あたりの S3 のコストを示す MCP の応答

最も容量の大きい S3 バケットについて、関連するコストの詳細な内訳を含む包括的なコスト分析を生成してください

図 8:S3 の包括的な分析結果を示す MCP の応答

図 9:S3 の包括的な分析結果を示す MCP の応答

以下の例では、MCP クライアント内での詳細なツールの使用方法を示しており、さまざまな連携した機能がどのように包括的な対応を生み出すかを示しています。さらに、Claude Desktop を通じて MCP サーバーを活用すると、結果をより視覚的にわかりやすく表現できるようになり、AWS サービスを利用する開発者へよりリッチなインタラクティブ体験を提供できます。

過去数か月間のコストデータを分析してナラティブにまとめてください、IT および財務のリーダーシップ向けの 2 つのパラグラフのレポートを準備します。レポートには、コスト傾向、大きな変化の原因、コストの異常、予算に対する追跡方法およびコストを最適化して削減できる機会について含める必要があります

図 10:ナラティブレポート作成のための詳細なツール呼び出しを示す MCP プロンプトと応答

図 11:MCP の追加のツール呼び出し応答

Claude Desktop(Sonnet 4 利用)

先月の vCPU 時間あたりの EC2 コストはいくらでしたか?

図 12:vCPU 時間を示す Claude Desktop からの MCP の応答

Pricing ツールを使って、これらの vCPU 数をダブルチェックできますか?

図 13:vCPU の料金を含む Claude Desktop からの MCP の応答

いいですね、この分析を過去 6 か月間分繰り返しできますか?

図 14:6 か月の期間を分析した Claude Desktop からの MCP の応答

素晴らしいです、これを折れ線グラフにできますか?

図 15:vCPU 時間あたりのコストグラフを示す Claude Desktop からの MCP の応答

結論

AWS Billing and Cost Management MCP サーバーは、クラウド財務管理を大きく進歩させるものです。AWS の強力なコスト分析および最適化ツールと自然言語 AI アシスタントを結びつけます。これにより、複雑なコストクエリが簡単になり、FinOps ワークフローがスピードアップします。また、コストの透明性も向上し、リアルタイムのインサイトや実用的な推奨事項に簡単にアクセスできるようになります。

翻訳はテクニカルアカウントマネージャーの加須屋 悠己が担当しました。原文はこちらです。

Adam Richter

Adam Richter

Adam Richter は、AWS OPTICS のシニア最適化ソリューションアーキテクトです。この役職では、Adam は AI コスト最適化と FinOps プラクティスを専門としています。Amazon Q Business や Amazon Q Developer などの顧客向け機能の作成に貢献したほか、AWS re:Invent やその他の業界イベントで講演者として専門知識を頻繁に共有しています。Adam はまた、FinOps Foundation の AI ワーキンググループで AWS を代表して、AI における財務業務に関する幅広い議論に貢献しています。

Aneesh Varghese

Aneesh Varghese

Aneesh Vargheseは、情報技術業界で 19 年以上の経験を持つ AWS のシニアテクニカルアカウントマネージャーです。Aneeshは、コスト最適化戦略、クラウド運用、MLOps について企業顧客をサポートし、AWS のベストプラクティスを利用したソリューションの計画と構築に役立つ提言や戦略的技術ガイダンスを提供します。仕事以外では、Aneesh は家族と時間を過ごしたり、バスケットボールやバドミントンをしたりするのが好きです。