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[開催報告]AWS Summit Japan 2025 生成AIエージェントハッカソン

はじめに

6月25日~26日に開催されたAWS Summit Japan 2025において、「生成AIエージェントハッカソン」を実施いたしました。本ハッカソンは、AI時代における人と技術の新しい関係性を探求する画期的なイベントとなりました。多くの参加者の皆様、審査員の皆様、そして関係者の皆様のご協力により、素晴らしいイベントを開催することができました。本ブログでは、その詳細な開催報告をお届けします。

ハッカソンの主旨とテーマ

テーマ:「使いたおして『○○』を実現するAIエージェント爆誕祭」

今回のハッカソンは、従来の「AIをどう活用するか」という問いから一歩進んで、「AIエージェントを限界まで使い倒すことで、人は何を実現したいのか」という本質的な問いに向き合うことをテーマとしました。

背景と狙い

生成AIが私たちの仕事や生活に欠かせないものとなる中、AIエージェントの進化により「人は何をすべきか」という問いがより切実になってきています。本ハッカソンは、参加者がAIエージェントを徹底的に活用することで、それでも残る人間固有の価値や目的を明確にすることを狙いとしました。

参加者の皆様には「○○」の部分に、AIエージェントを使い倒すことで実現したい目的を設定していただき、その実現に向けたソリューションの開発に挑戦していただきました。

より詳しいテーマと背景についてはこちらから

ハッカソン開催ステップ

1. 募集〜参加確定〜予選まで

  • 5月1日:QuizKnock伊沢拓司氏 / 鶴崎修功氏をゲストにお招きした「ユースケース開発ワークショップ」をオンライン開催 (ワークショップの動画はこちらから)
  • 5月16日:採択14チーム確定  (採択チーム一覧はこちらから
  • 5月20日〜6月20日:採択チーム向けメンタリング実施

2. 予選(6月25日@ホテルニューオータニ幕張)

  • 8分間のプレゼンテーション
  • AWS審査員による審査により6チームが決勝進出

予選

3. 決勝(6月26日 @AWS Summit Japan Expoステージ会場)

  • 7分間のプレゼンテーション
  • 審査員による最終審査
  • 表彰式
  • 審査について

本ハッカソンでは、以下の観点で審査を実施しました:

  • 有用性
  • ユースケースの明確さ(対応する機会)
  • アプリケーションの品質
  • 創造性
  • AI エージェントにより ○○ が実現できるか / AI エージェントが使いたおされることで○○が持続的に実現されるか
  • プレゼンテーション(決勝のみ)

なお、本ハッカソンの決勝では、多様な専門性を持つ2名の外部審査員を含む以下4名の審査員によって審査が行われました。

[審査員]

  • 鶴崎修功氏(QuizKnock)
  • 安野貴博氏(AIエンジニア/参議院議員)
  • 山口能迪(AWS Developer Advocate)
  • 松本鋼治(AWS シニア事業開発マネジャー)

予選について

予選では、全国から多数のエントリーをいただきました。各チームには事前にユースケースを提出していただき、それを判断材料として厳正な審査を行い、14チームを決勝進出チームとして採択いたしました。

予選は決勝の前日にあたるAWS Summit Japan初日の6月25日に、ホテルニューオータニ幕張で開催されました。採択された14チーム全てが8分間のプレゼンテーションを行い、6名のAWSの審査員による厳正な審査が実施されました。

予選会場では、各チームが開発期間中に磨き上げた作品を熱心に発表し、質疑応答では審査員から技術的な詳細や実装の工夫、今後の展開可能性について鋭い質問が投げかけられました。ここでの評価を経て、最終的に6チームが翌日の決勝戦への切符を手にしました。

参加チームが設定した「○○」は実に多様で、日常生活の課題解決から専門的な業務支援、新しいコミュニケーションの形まで、参加者の豊富な発想力と問題意識が反映されていました。フリマ販売の自動化、創作活動の支援、農業ビジネスのアシスト、家電と人、家電同士の対話、プロジェクトの円滑な引継ぎ、k8s技術学習の促進、引っ越し後の生活シミュレーション、思考の構造化、金融リテラシー向上、育児支援、組織エンゲージメント向上、ペット飼育サポート、レシピ動画を活用した映える献立作成など、AIエージェントを活用して実現したい目的の幅広さが印象的でした。

各チームのプレゼンテーション動画はこちらから

決勝について

決勝戦は、AWS Summit Japan 2025の会場である幕張メッセのAWS Summit Japan Expoステージで公開形式で実施されました。予選は非公開で行われましたが、決勝では多くのAWS Summit来場者の皆様に決勝進出6チームの発表をご覧いただくことができました。

決勝のナビゲーターには、QuizKnockの伊沢拓司氏とフリーキャスターの吉﨑智宏氏が登場し、巧みな進行で会場の熱気を最高潮に導いてくれました。両氏の絶妙な掛け合いと各チームへの的確なコメントにより、見どころもわかりやすく伝えられ、会場全体が一体となって各チームの発表を応援する雰囲気が醸成されました。

QuizKnock 伊沢氏、鶴崎氏、AIエンジニア安野氏が登場する決勝の動画はこちらから

各チームとも「使いたおして『○○』を実現するAIエージェント」というテーマを体現した、素晴らしい作品を発表しました。全てのチームに共通して言えることは、ユースケースやアーキテクチャーの素晴らしさもさることながら、洗練されたUIを兼ね備えていたということです。

AIエージェント時代の可能性について考える貴重な機会となりました。各チームの発表後には審査員との質疑応答も行われ、技術的な詳細や今後の展開について活発な議論が交わされました。

vvvv

審査員を務めるQuizKnock 鶴崎氏(左)、安野氏(右)

決勝の会場のようす

ナビゲーターのQuizKnock 伊沢氏(右)、フリーキャスターの吉﨑氏(左)

審査員からの総評

各審査員から入賞チームに対して以下のようなコメントをいただきました。

最優秀賞:WhiteBoxお酒同好会「KanpAI」への評価

AWS松本氏:「『交流』ということにユースケースをフォーカスし、そこに紐づく打ち手を徹底してAI Agentを駆使して作りこんだ点が優勝へとつながった。コネクトを利用した電話かけにトライし、今後の改善についても触れていた点も加点要素。更に開発までAIで取り組んだということも加点要素となった」

  • AWS山口:「本物の製品のようで驚いた。飲み会以外に旅行などユースケースの広がりもある。継続性もユーザーに対するフィードバック設計が良い」
  • 安野氏:「完成度が高い!!1ヶ月で作ったと思えないUIの完成度。」
  • 鶴崎氏:「『これもやってくれるんだ!』ということの連続で個人的には1位です。使い倒している感じがありますね。」

    優勝チーム WhiteBox お酒同好会

準優勝:チームぶち上げ「プロジェクト引継ぎAI」への評価

  • 安野氏:「課題の選定と解決策がうまくマッチしていた。引継ぎでいつも苦労するので将来性高い。」
  • 鶴崎氏:「プロジェクトを俯瞰できている人がいなくなるということが引継ぎの難しさだと思うので、AIが俯瞰役を担ってくれるのは非常にいいですね。」
  • 準優勝チーム チームぶち上げ

第3位:かっぱときゅうりと味噌「おそとびより」への評価

  • AWS山口:「子供がいる家庭向けにはかなりうれしい。似た手法で様々なユースケースに対応できそう。今後の展望も継続性が見られる」
  • 安野氏:「子育て世代の悩みの解像度が高そう。プロトタイプを触ってもらいながら改善を重ねられていたのもGood.」
  • 鶴崎氏:「子育てという、AIが技術の入りづらそうな分野へアプローチが良いですね。より直感的、誰でもすぐに使えるようになれば相当いいと思います。」
  • 三位チーム かっぱときゅうりと味噌

その他注目チームへの評価

  • 電通デジタル アドバンストクリエイティブ&AIチーム「Clip Ninja」  鶴崎氏:「『練習できる』のが魅力的に思えました。プレゼン資料がやや見づらいなと思ったので、プレゼン資料も助けてくれるといいと思いました。」
  • デストロイヤーズ 「KOPR」 鶴崎氏:「Kubernetes素人、ゲーム好きの私としてはぜひ遊んでみたいです。公開をお待ちしております!」
  • BAE-RECIPE  鶴崎氏:「アプリ画面が非常に使いやすそうで、ユーザーフレンドリーでいいと思います。確かにYouTubeとかのレシピ、作ったことがないですね。」

審査員の皆様からは、技術的な完成度だけでなく、ユースケースの明確さ、継続利用の設計、プレゼンテーションの質など、多角的な観点から詳細なフィードバックをいただきました。

まとめ

今回の「AWS Summit Japan 2025 生成AIエージェントハッカソン」は、1ヶ月弱の短い期間にも関わらず、高い完成度をもつ作品が多数登場しました。この完成度の高さのもたらした大きな要因は生成AIにあると言ってもよいでしょう。

技術的な評価と成果

参加者の皆様が創り出したソリューションは、AIエージェントの技術的な可能性を大きく押し広げるものでした。特に今回のハッカソンで特筆すべきは、採択チームにアンケートを実施したところ、ほぼ全てのチームが開発にCoding Agentを使用していたという事実です。

この結果、これまでのハッカソンでは考えられないほどの完成度の高さを全作品で実現することができました。特にUIについては、ハッカソンのような短期間では実装し切れないことが多いにも関わらず、非常に洗練されたUIが各チームで実現されていました。これは、AIを活用した開発がもたらす生産性向上の具体的な証左と言えるでしょう。

技術的な評価ポイントとしては以下が挙げられます:

  • マルチモーダルAIの活用:テキスト、音声、画像を組み合わせた自然な対話インターフェースの実現
  • 外部システム連携:API連携やWeb scraping、データベース活用による実用的なソリューション構築
  • 継続学習とフィードバック機能:ユーザーの使用パターンから学習し、継続的に改善されるシステム設計
  • AWS各種サービスの効果的な活用:Claude、Lambda、Connect、RDS等のAWSサービスを適材適所で組み合わせた実装
  • 商用レベルのUI/UX:Coding Agentの支援により、短期間で実用レベルの直感的で使いやすいインターフェースを実現

特に最優秀賞のWhiteBoxお酒同好会チームが1ヶ月という短期間で商用レベルのUIと機能を実現したことは、Coding Agentをはじめとする現在のAI開発支援ツールの威力を示す象徴的な事例となりました。このような**「AIがAIを作る」時代の到来**を明確に示したハッカソンとなったことも、大きな意義の一つです。

今後への期待

今回のハッカソンで示されたのは、AIエージェントが単なる効率化ツールではなく、人間の可能性を拡張し、より豊かな生活を実現するパートナーとしての役割です。参加者の皆様が描いた未来像は、技術と人間が協働して創り出す、より創造的で充実した社会の姿を表しています。

さらに、本ハッカソン後の7月には、新たなAI コーディング環境「Kiro」が発表されました。これにより、AIを活用したアプリ開発がより身近に、より便利になっています。今回のハッカソンでCoding エージェントが示した可能性は、Kiroのような新しいツールによってさらに拡張され、より多くの方々がAIアプリケーション開発に参加できる環境が整いつつあります。

私たちは、今回のハッカソン参加者の皆様をはじめ、すべてのデベロッパーの皆様に、ぜひこれからもAWSを活用して、これまでできなかった何かを実現するアプリを作って欲しいと心から願っています。AIの力を借りることで、アイデアから実装までの距離は確実に短くなっており、誰もが自分の想像力を形にできる時代が到来しています。

AWSは今後も、お客様が最も大切にしていることの実現を支援するため、技術革新と価値創造の両面から取り組みを続けてまいります。今回のハッカソンで生まれたアイデアや議論が、より充実したAI時代の仕事・生活の実現につながることを期待しています。

最後に、本ハッカソンにご参加いただいた全ての皆様、審査員としてご協力いただいたQuizKnock鶴崎修功氏、安野貴博氏、ナビゲーターとしてご登壇いただいたQuizKnock 伊沢拓司氏、吉﨑智宏氏、そして開催にご協力いただいた関係者の皆様に心より感謝申し上げます。