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AWS Transform の AI エージェントを使って メインフレームモダナイゼーションジャーニーを加速する

はじめに

メインフレームのモダナイゼーションは、重要なアプリケーションの複雑なレガシーコードベース、メインフレームの専門知識を持つ人材プールの減少、最新のクラウド機能を採用する必要性の高まりにより、組織にとって長い間困難な課題でした。

AWS Transform for Mainframe は、re: Invent 2024 で「Amazon Q Developer transform capability for mainframe」としてプレビューされました。このソリューションはレガシーシステムをモダナイズするための画期的なソリューションで、現在一般公開されています。AWS Transform のメインフレーム専用 AI エージェントは、従来複数年にわたっていたメインフレームモダナイゼーションのジャーニーを大幅に加速させ、組織がより速いペースでトランスフォーメーションを完了できるよう支援します。

このブログでは、メインフレームに専門的に特化した AI エージェントを使用した AWS Transform for Mainframe が、トランスフォーメーションプロセス全体を合理化することで、メインフレームのモダナイゼーションを数年から数ヶ月へと加速する方法を探ります。

メインフレームモダナイゼーションの課題

今日、メインフレームのモダナイゼーションを進めている組織は、次の 3 つの重要な側面で課題に直面しています。

1. スピードと俊敏性: レガシーメインフレームシステムには、数十年にわたって開発された数百万行の COBOL、PL/I、およびアセンブラのコードが含まれています。これらのシステムには、日常業務に不可欠な複雑なビジネスロジックと関連データが組み込まれています。メインフレームアプリケーションのモノリシックなアーキテクチャによって、迅速な変化やイノベーションが制限されます。従来のモダナイゼーションアプローチでは、手作業による丁寧な分析とリファクタリングが必要であり、その結果、導入期間は複数年に及びました。メインフレームシステムでは長い開発サイクルと厳格な変更管理が必要ですが、モダナイズされたアプリケーションでは迅速な変更、アップグレード、導入が可能になります。両者を比べると、その違いは明らかです。組織が今日のビジネス環境で求められるスピードで市場の需要を満たすのに苦労しているため、このギャップは競争上の不利な点となります。組織は、重要なメインフレーム機能を維持しつつ、バランスを取りながら、システムの進化と適応能力の加速を進める必要があります。

2. 実行が複雑: メインフレームアプリケーションには通常、密結合したモノリシックアーキテクチャがつきもので、クラウド対応アーキテクチャに簡単にトランスフォーメーションすることができません。複雑なビジネスロジックはレガシーコードの奥深くに埋もれていることが多く、明確に文書化されていないことがよくあります。さらに、これらのシステムでは、数十年前に開発され、モダンなアーキテクチャにうまくトランスフォーメーションできない、入れ子状の複雑なコーディングパターンが採用されていることがよくあります。このアーキテクチャのため、モジュール単位のトランスフォーメーションアプローチがなかなか進まず、モダナイゼーションプロセスが複雑化し、効率的な実施が難しくなっています。この複雑さは、モダナイゼーションプロジェクトにとって大きなリスクになります。現行アプリケーションを適切に分析し理解しないと、重要なビジネスロジックがトランスフォーメーション中に誤って解釈されたり失われたりします。結果的に、事業の中断に繋がり、そのための高額なコストを伴う危険性があります。

3.スキル不足: メインフレーム人材の確保は、組織にとって重要な戦略的検討事項です。現在のメインフレーム要員は、アプリケーションとシステムの両方について数十年にわたる専門知識を持つ専門家で構成されています。これらの専門家が退職すると、重要なビジネスシステムに関する貴重な組織的知識が同時に失われることになります。組織は、レガシーテクノロジーとモダンテクノロジーの両方を理解している限られた有能な人材を巡って競争しなければなりません。このようなスキルの変化により、人材の進化は長期的なテクノロジー戦略の決定において重要な要素となっています。

AWS Transform の紹介

AWS Transform は、革新的なマルチエージェント AI アーキテクチャにより、モダナイゼーション技術における画期的なブレークスルーを実現しました。この専門的エージェント型 AI システムは、メインフレームのコードベースを分析し、それをドメインに分解し、協調的に連携し合う AI エージェントを使用して IBM z/OS アプリケーションを Java にモダナイズします。メインフレームエージェントは、モダナイゼーションプロセスを革新する個々のトランスフォーメーションタスクに特化しています。このシステムのアーキテクチャは、企業向け移行プロジェクトの 19 年間にわたる経験を通じて蓄積された AWS の広範なメインフレームモダナイゼーションの専門知識に加えて、ディープラーニングモデルを活用しています。ユーザーは AWS Transform のエージェントとやり取りしながら、インタラクティブな対話を通じて、分析からコード変換まで、自社のトランスフォーメーションジャーニーに合わせて機能を選び、目標を設定することで、カスタマイズされたモダナイゼーション計画を作成できます。これにより、機能的な同等性を維持しながら、モダナイゼーションの期間を数年から数ヶ月に短縮することができます。この包括的なソリューションにより、組織はより迅速なモダナイゼーション、リスクの低減とコストの削減、AWS クラウドへのデプロイメントに向けたアプリケーションの最適化を実現できます。AWS の約 20 年にわたるモダナイゼーションの専門知識をインテリジェントエージェントに組み込むことで、AWS Transform for Mainframe は、クラウドモダナイゼーションへの効率的で信頼性の高い道筋を提供します。

以下の図は、end-to-end のメインフレームモダナイゼーションの過程の各段階を示しています。

モダナイゼーションジャーニー
図 1: end-to-end のメインフレームモダナイゼーションジャーニー

AWS Transform の機能を深く掘り下げ、それがモダナイゼーションの各段階にどのように影響するかを学びましょう。

主要機能の概要

AWS Transform for Mainframe は、メインフレームのモダナイゼーションを加速および簡素化するために設計されており、包括的な一連の機能を AI 活用で実現しています。AWS Transform は、分析から始めてトランザクション、デプロイに至るまで、機能の同等性を維持しリスクを軽減しながら、メインフレームのモダナイゼーションという中核的な課題に対処します。お客様とパートナーがメインフレームアプリケーションのトランスフォーメーションに使う主な機能は次のとおりです。

アプリケーションに関する包括的な知見を得るためのコード分析

多くの組織にとって、重要なビジネスプロセスは、既存のメインフレームアプリケーションに支えられています。一方で、その範囲と複雑さを理解するのが困難であるという課題に直面しています。AWS Transform エージェントは分析中にメインフレームのコードベース全体を包括的に調査し、コンポーネント間の関係をマッピングする詳細な依存関係グラフを作成します。エージェントはプログラムのやりとりを分析し、関連する欠落ファイルを特定し、コードの複雑さ、コードの行数、ファイルタイプの分布などの主要なメトリクスを生成します。

JCL、COBOL ソース、COBOL コピーブックなどのさまざまな種類のコードコンポーネントを自動的に分類し、依存関係分析を行ってコンポーネント間の関係を識別し、モダナイゼーションに影響を与える可能性のある欠落しているリソースにフラグを立てます。分析エージェントは、こうした詳細なインサイトを提供することで、組織がモダナイゼーションプロセスにおいて自社のアプリケーション環境をよりよく理解し、情報に基づいた意思決定を行えるようにすることで、最終的にリスクを軽減し、クラウド移行への道のりを最適化できるようにします。

AWS Transform コード分析の結果として、コードベース全体で次の 3 つのファイル属性が特定され、有用な情報を得ることができます。

  1. 循環的複雑度 — プログラムフロー内に存在するさまざまな経路および分岐の数を測定します
  2. 同じ名前のファイル — 同じ名前のファイルタイプを識別します
  3. 重複 ID (同じプログラム ID) — 同じ識別子を使用する複数のプログラムを検出します

AWS Transform の強力なファイル分析機能により、コードベース内のソースファイルを詳細に分類できます。拡張子が .txt となっているファイルや、未知の拡張子のファイルがある場合、ユーザーが実際の分類を明示的に指定して更新できるため、ファイルタイプの管理をコントロールできます。AWS Transform の画面には、ファイルの内容の表示や、複数のファイルを対比的に比較表示する機能が組み込まれているため、ユーザーはソースファイルを直接調べて確認できます。これらの機能により、次のようなビジネス上のメリットがもたらされます。

ビジネス上のメリット

  1. 複雑な分析タスクを自動化することで、時間とリソースを節約できます
  2. アプリケーションに関する洞察に基づいて意思決定を改善します

アプリケーションに対する理解の維持とビジネスロジックの抽出のためのドキュメント生成

AWS Transform はメインフレームアプリケーションの詳細を技術的な観点と機能的な観点で記述した文書を生成し、知識不足という課題に対処します。このドキュメントには、主要な機能、プログラムのロジックと機能、データフローと依存関係、ミドルウェア等との連携、その他の詳細が記載されています。これにより、モダナイゼーションの過程で、大まかな概要と詳細な機能仕様の両方を確実に入手できます。

ビジネスロジックの抽出
AWS Transform のビジネスロジック抽出機能は、モダナイゼーションの過程でビジネス関係者と技術関係者の両方に包括的な洞察を提供します。ビジネスユーザー向けには、複雑なロジックをわかりやすい言葉で抽出して提示し、レガシーアプリケーションに埋め込まれたビジネスプロセス、計算、決定ルールを明確に可視化します。これにより、ビジネス関係者はモダナイゼーション中に現在のルールを検証し、時間が経って陳腐化したプロセスを特定し、情報に基づいたプロセス最適化に関する意思決定を行うことができます。テクニカルユーザーには、ビジネスロジックを特定のコードセグメントに詳細にマッピングできるだけでなく、コアとなるアルゴリズムパターン、計算ロジック、ビジネスロジックとデータ構造間の依存関係を明確に特定できるというメリットがあります。

ドキュメンテーション・ナレッジベースとのチャット
AWS Transform が一般提供を開始した時点で、モダナイゼーションの過程に合わせて学習するインテリジェントアシスタントが搭載されるようになりました。直観的なチャットインターフェイスと自然言語クエリにより、ユーザーはエージェントが生成した包括的なドキュメントを参照できるため、ダイナミックに知識を発見し、情報に基づいた意思決定が可能になります。この AI 搭載のチャットアシスタントは、アプリケーション固有のドキュメントに基づいて状況に応じたインサイトや回答を提供することで、プロジェクト全体を通じて役立つことが実証されています。これにより、モダナイゼーションプロセスの共同作業がしやすくなり、利用しやすくなります。

これらの機能により、次のようなビジネス上のメリットがもたらされます。

ビジネス上のメリット:

  1. 従業員の離職があっても重要なアプリケーションインサイトを維持することで、モダナイゼーション中の知識損失のリスクを軽減します
  2. 新しいチームメンバーがモダナイゼーションプロジェクトに短期間でオンボーディングできるようにします
  3. アプリケーションの理解を深めて、モダナイゼーションイニシアティブを推進します
  4. アプリケーションを包括的に理解することで、モダナイゼーションの意思決定をより迅速かつ正確に行えるようになります
  5. コンテキストに沿ったチャットとドキュメンテーションのやり取りを通じて、リアルタイムに情報を発見して理解を深めることができます
  6. ビジネスロジックの抽出により、技術的な実装とビジネス要件の間のギャップを埋めることができます
  7. 技術者以外の利害関係者がモダナイゼーションの意思決定に参加できるようにします

アジリティ向上のためのコード分解

モノリシックなメインフレームアプリケーションのサイズが大きく、相互に関連していることは、モダナイゼーションに関する重大な課題です。AWS Transform には大規模なアプリケーションを分解する機能があるため、お客様のガイダンスに基づいて、モノリスをより小さく、保守しやすいドメインに分割できます。AWS Transform は、こうした複雑なアプリケーションをモダナイゼーションの過程で管理しやすいドメインに分解することで、この問題を解決し、組織がクラウドアーキテクチャの俊敏性と保守性のメリットを享受できるようにします。

一般提供時点では、AWS Transform では次のような依存関係マッピングの操作性が大幅に強化されています。

  1. ユーザーがエクスポート/インポート機能を使用して依存関係を更新できます
  2. ドメイン作成時にユーザーがコンポーネント間の関係 (親、子、近隣) を操作するためのツールがあります
  3. AWS Transform へのドメイン詳細のインポートがサポートされているため、お客様は論理ドメインを簡単に作成できます

これらの機能により、次のようなビジネス上のメリットがもたらされます。

ビジネス上のメリット:

  1. アプリケーションコンポーネントとビジネスドメインを連携させることで、ビジネスの俊敏性を高めます
  2. ドメイン記述ファイルのインポート/エクスポート機能により、チーム内で分担しながら共同作業でドメイン定義を進めることができます
  3. コンポーネント間の関係をインタラクティブに探索することで、アプリケーションの理解を深めることができます
  4. 柔軟なドメイン作成により、カスタマイズされたモダナイゼーションアプローチをサポートします

効率的なモダナイゼーション実行のための移行ウェーブの計画

AWS Transform の計画機能では、コードとデータの依存関係、コードの量、ビジネスの優先事項などの複数の要因に基づいて、優先順位を付けたモダナイゼーションの移行ウェーブの順序を作成します。ユーザーは具体的な制約や優先順位を明示的に入力して、AWS Transform が提示する移行ウェーブの計画をカスタマイズできます。これらの機能により、次のようなビジネス上のメリットがもたらされます。

ビジネス上のメリット:

  1. モダナイゼーションの取り組みをビジネスの優先事項や制約に合わせることができます
  2. トランスフォーメーションの順序をデータによる裏付けのもとに決定できるようになります
  3. モダナイゼーションフェーズの順序を適切に調整することでリスクを軽減します

メインフレームアプリケーショントランスフォーメーションのためのコードリファクタリング

AWS Transform のリファクタリング機能は、コード変換プロセスを自動化し、COBOL を Java に、JCL を Groovy スクリプトに変換して、アプリケーションスタック全体をモダナイズします。専用の AI エージェントは、読みやすく保守しやすいコードを生成しながら、機能の同等性を維持しつつ、ビジネスドメインをリファクタリングします。各ステップは、技術者を含むループ (human in the loop) 内に定義済の順序で実行されます。AWS Transform の一般提供開始に当たり、アプリケーションの機能を維持しながらトランスフォーメーションプロセスを加速するリファクタリング機能を提供します。

Reforge — リファクタリングされた Java コードを拡張して保守性を向上させます(パブリックプレビュー)
リファクタリングされたコードを最適化するために設計された新機能 Reforge をパブリックプレビューとして提供します。AWS Transform の Reforge では、大規模言語モデル (LLM) を活用して、より保守性が高いコードに変換します。この高度な機能により、ネイティブ Java に近いコードに再構成され、可読性と保守性が向上しています。Reforge では、人間が読めるコメントを追加してコードの理解を深め、最新のコーディングパターンとベストプラクティスを導入しています。この進化は、モダナイズされたアプリケーションを最新の開発標準と密接に連携させ、クラウド環境のメンテナンスと将来の拡張を容易にすることを目指しています。これらの機能により、次のようなビジネス上のメリットがもたらされます。

ビジネス上のメリット:

  1. 数百万行のコードから成るメインフレームアプリケーションのモダナイズと AWS への移行を加速します
  2. エラーを最小限に抑え、機能の同等性を維持することで、ビジネスリスクを軽減します
  3. モダンでメンテナンスが容易なコードを作成します
  4. より迅速なイテレーションとイノベーションを実現するアプリケーションアーキテクチャになります

迅速なクラウド移行のためのコードデプロイ

組織は、リファクタリングされたアプリケーション用のクラウド環境を構築する際に、時間がかかる手動の設定プロセスと複雑な企業要件に直面します。AWS Transform は、標準化された環境を構築し、再実行可能なモダナイゼーションプロセスを確立するのに役立つデプロイテンプレートを提供することでこの課題に対処し、アプリケーショントランスフォーメーションへのより構造化されたアプローチを可能にします。AWS Transform の一般提供開始と同時に、モダナイズされたアプリケーション環境の基盤をデプロイするための IaC (Infrastructure as Code) テンプレートを提供しています。これらのテンプレートを使うと、専門知識が従来ほど必要で無くなり、ターゲット環境の設定に必要な時間も削減されます。これらの機能により、次のようなビジネス上のメリットがもたらされます。

ビジネス上のメリット:

  1. リファクタリングされたアプリケーションの導入を加速することで、価値創出までの時間を短縮します
  2. 標準化されたテンプレートにより設定ミスを最小限に抑えます
  3. モダナイゼーションライフサイクルの完了を阻む技術的障壁を下げます
  4. 本機能によって実現されるデプロイメントプロセスを使うと、繰り返し再デプロイしてもアプリケーションポートフォリオ全体の一貫性が維持されます

これらの統合された機能が連携して、リスクの軽減、デリバリの迅速化、変革の過程における機能の同等性の維持を実現する、包括的なモダナイゼーションソリューションをお客様とパートナーに提供します。

AWS Transform for Mainframe の料金

AWS Transform は、エージェンシー AI 機能によりメインフレームワークロードの移行およびモダナイゼーションプロジェクトを加速します。現在、評価や変換などのコア機能を AWS のお客様に無料*で提供しています。これにより、先行投資なしで、移行とモダナイゼーションをスピードアップできます。

*AWS Transform の機能を拡張し続けているため、将来のアドオン機能は有料機能として導入される可能性があります。

メインフレームアプリケーションのトランスフォーメーションを加速する AWS Transform

それでは、AWS Transform がコラボレーション型の Web 体験を通じて、メインフレームモダナイゼーションのジャーニーをどのように合理化し、加速させるかを見てみましょう。AWS コンソールにログインしたら、AWS Transform に移動し、ワークスペースを作成してトランスフォーメーションプロセスを開始します。

ステップ 1: 包括的な分析

AWS Transform はまず、Amazon S3 バケットに保存されているメインフレームコードベースを分析することから始めます。分析エージェントは、コンポーネント間の関係をマッピングし、プログラムの相互作用を分析し、関連する欠落ファイルを特定する詳細な依存関係グラフを作成します。以下のスクリーンショットに示すように、分析では、コードの複雑さ、コードの行数、コードベース全体でのファイルタイプの分布などの主要な指標が得られます。

図 2: メトリクスを強化した AWS Transform のコード分析機能
図 2: メトリクスを強化した AWS Transform のコード分析機能

画面上でソースファイルを直接表示して比較できるため、チームはコードの特性をすばやく理解できます。また、エクスポート/インポート機能ではファイル分類を修正できるため、分析フェーズの正確性を確保できます。

ステップ 2: モダナイゼーションのためのアプリケーション知識

分析後、次のスクリーンショットに示すように、AWS Transform は選択したプログラムの包括的な技術ドキュメントを生成します。これはオンラインで閲覧することも、Amazon S3 バケットからダウンロードすることもできます。

図 3: チャットインターフェイスを使用した AWS Transform のドキュメント生成機能
図 3: チャットインターフェイスを使用した AWS Transform のドキュメント生成機能

新しいチャットエクスペリエンスでは、生成されたドキュメントに対して、チームメンバーがプログラムの機能に関する具体的な質問をしたり、状況に応じた回答を受け取ったりできます。ビジネス関係者にとって、ビジネスロジック抽出機能は技術的な実装をビジネス言語に変換し、IT チームとビジネスチームの間のギャップを埋めます。

ステップ 3: アプリケーションの分解

次に AWS Transform は、ユーザー提供のシードファイル (ドメインに属するプログラムの例) を使用して、モノリシックアプリケーションを論理的なビジネスドメインに分解します。以下のスクリーンショットのように、強化された依存関係マッピング機能により、チームはドメインの作成時に、ファイル間の関連 (親、子、近隣) を操作できるようになります。更に、ドメインの詳細をインポートする機能により、チーム内の共同作業でドメイン定義を進めることができるようになります。

図 4: ファイル間の関連の視覚化による AWS Transform のアプリケーション分解機能
図 4: ファイル間の関連の視覚化による AWS Transform のアプリケーション分解機能

この視覚化により、チームはアプリケーション内の複雑な相互依存関係を理解し、システムのモジュール化方法について情報に基づいた意思決定を行うことができます。ユーザーは依存関係グラフを拡大表示して、各コンポーネントの複数の階層の依存関係を分析できます。

ステップ 4: モダナイゼーション計画

ドメインが確立されると、AWS Transform は依存関係、コード量、ビジネス上の優先事項に基づいて優先順位付けされたモダナイゼーションウェーブを作成します。包括的な計画ツールにより、特定の制約に従って移行ウェーブの順序をカスタマイズできます。

図 5: AWS Transform のモダナイゼーションウェーブプランニング機能
図 5: AWS Transform のモダナイゼーションウェーブプランニング機能

これらの視覚的な計画ツールは、利害関係者との明確なコミュニケーションを促進し、トランスフォーメーションプロセスへの体系的なアプローチを確実なものにします。

ステップ 5: 自動リファクタリング

ステップ 4 のように human in the loop がモダナイゼーション計画を確認すると、AWS Transform はリファクタリングプロセスを開始し、COBOL を Java コードに、JCL を Groovy スクリプトに変換します。

変換する
図 6: コード品質が向上した AWS Transform の自動リファクタリング

標準リファクタリングでは COBOL アプリケーションの機能的な同等性は維持されますが、新しいパブリックプレビュー機能である Reforge は大規模な言語モデルを活用して、リファクタリングされたコードの可読性と保守性を高めています。この機能により、出力は単なる翻訳にとどまらず、Java のベストプラクティスやイディオムに従うように再構成されます。できあがったコードは保守しやすく、人間が書いたようなコメントやドキュメンテーションによって可読性が向上しているため、Java 開発者は COBOL の専門知識がなくてもアプリケーションを理解して拡張しやすくなります。

ステップ 6: 効率的なデプロイメント

新しいコード・デプロイメント機能には、モダナイズされたアプリケーション環境を設定するためのデフォルトテンプレートが用意されています。これらのテンプレートにより、ターゲット環境を適切に構成するのに必要な時間と専門知識が大幅に削減されます。いったん変換されたアプリケーションは、AWS Mainframe Modernization のフルマネージドのランタイム環境またはセルフマネージドの環境のいずれかにデプロイできます。どちらのオプションも、お客様自身の Amazon VPC 内の Amazon EC2 または Amazon EKS コンテナへのデプロイを、それぞれの AWS アカウントで安全にサポートします。これにより、組織はアプリケーションのパフォーマンス、セキュリティ、信頼性を維持しながら、柔軟にモダナイゼーションアプローチを進めることができます。この end-to-end のアプローチにより、組織は重要なビジネスロジックを維持し、リスクを軽減し、最新のクラウドアーキテクチャへの移行を加速させながら、メインフレームアプリケーションを効率的にトランスフォーメーションできます。

本リリースの新機能

  1. コード分析の強化:循環的複雑度、同じ名前のファイル、重複するプログラム ID の識別
  2. 拡張子が未知または .txt のファイルの分類をユーザーが明示的に指定するエクスポート/インポート機能
  3. AWS Transform 画面上でのファイル表示および比較機能
  4. ドメイン作成時のファイル間のインタラクティブな関係調査 (親、子、近隣)
  5. ドキュメント生成パフォーマンスの向上による大規模なコードベース (ソフトリミット: AWS アカウントあたり 300 万 LOC) のサポート
  6. 生成されたドキュメントコンテンツに対応した新しいチャットエクスペリエンス
  7. ビジネスロジック抽出により、ビジネスユーザーはソースコード内の機能とロジックを理解可能
  8. AWS Transform 画面内での柔軟なドキュメント表示と操作
  9. モダナイズされたアプリケーション環境のための基本的な IaC (Infrastructure as Code) テンプレート
  10. us-east-1 (バージニア北部) と eu-central-1 (フランクフルト) の AWS リージョンで利用可能
  11. パブリックプレビュー: LLM を活用したコード再構成により、リファクタリングされた Java コードに人間が読めるコメントを追加して最適化

まとめ

AWS Transform for Mainframe は、モダナイゼーション技術における大きな飛躍であり、クラウドへの移行を加速するための包括的な AI 搭載ソリューションを組織に提供します。専門の AI エージェントと AWS の実績あるメインフレーム移行の専門知識を組み合わせることで、組織はリスク、コスト、複雑さを軽減しながら重要なアプリケーションをモダナイズできるようになりました。AWS Transform がどのようにモダナイゼーションの取り組みを加速させるかについて、詳しくは AWS Transform のドキュメントをご覧になるか、AWS の担当者にお問い合わせください。

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Vaidyanathan Ganesa Sankaran

Vaidyanathan Ganesa Sankaran

Vaidy は、AWS における生成 AI ベースのメインフレームモダナイゼーションソリューションの市場開拓戦略とソリューションアーキテクチャをリードしています。モダナイゼーション、人工知能、クラウドコンピューティングの分野で 15 年の経験を持つ Vaidy は、フォーチュン 500 企業をはじめとする世界中の企業のお客様のデジタルトランスフォーメーションジャーニーをガイドしてきました。モダナイゼーションに関するさまざまなトピックに関する出版物や論文、記事を 40 以上発行し、この分野に貢献してきました。現在の役職では、Vaidy は生成 AI の力をメインフレームのモダナイゼーションに活用し、企業顧客が真のビジネス価値を引き出すのを支援することに重点を置いています。市場開拓戦略の計画と実行、革新的な生成 AI ソリューションの開発、生成 AI をメインフレームのモダナイゼーションに効果的に活用する方法について、経営幹部や技術リーダーに助言しています。Vaidy はソフトウェアエンジニアリングの修士号を取得しており、学術的な専門知識と業界での実践的な経験を組み合わせ、急速に進化するエンタープライズテクノロジーのモダナイゼーションの中で最先端のソリューションを推進しています。

Rao Panchomarthi

Rao Panchomarthi

グローバルのメインフレームモダナイゼーション組織のリーダー。Rao は、IBMメインフレーム、分散システム、クラウド・テクノロジーにまたがる 20 年以上の経験を持つ経験豊富な IT プロフェッショナルです。Rao は大規模なビジネストランスフォーメーションをリードし、メインフレームアプリケーションのクラウドテクノロジーへの移行や、モダナイズするための戦略を策定しています。AWS に入社する前は、JPMorgan Chase のクレジットカード事業でアーキテクチャ責任者を務め、複数のトランスフォーメーションプロジェクトをリードしていました。

この投稿の翻訳は Mainframe Modernization Specialist Solutions Architect の皆川が担当致しました。原文記事はこちらです。